中学生棋士の大活躍で、将棋界が久しぶりに明るい注目を集めています。やはり何かしら大きなドラマが展開してくるとどの世界も活気が出てきますね。
将棋の駒はそれぞれ20枚ずつあるわけですが、じつは並べ方に作法があります。一般の方はご存知ないかもしれません。大橋流と伊藤流という並べ方があり、ちょっとだけ手順が違います。たとえば伊藤流は、早めに「歩」でふたをして、敵陣に香車や飛車や角行の利きが直射しないように配慮します。

将棋教室に通っていたころ、奨励会員の先生に駒の並べ方について「毎回毎回必ずそうやって並べるものなのですか?」と質問した方がいました。すると先生はそのほうが間違いなく強くなれるとおっしゃいました。一枚一枚の駒に魂を吹きこんでいくのだそうです。「アマチュアの方もそういうところこそ真似してくださると強くなれると思いますよ」ともアドヴァイスされていました。
ところが生徒はなかなかそうしません。私を含めて教室の皆さんそう。適当に手にした駒をただ置いていました。知識としては知ってはいる。だけどやらない。

何を言いたいのかと言うと――皆さんも部活に例えて考えてくださるとよくわかると思いますが――指示したことをやってはいるけれども言われた通りにやらない後輩がいませんか? 毎日これこれこういうトレーニングをしろと指示を出した。するとやらないわけではないものの、量を加減している。あるいは毎日はやらない。あるいは変な工夫を加えている。そういう後輩を見てどう感じますか。指示通りにやれないようでは・・・という苦い気持ちになるのではないでしょうか。

勉強も同じです。はじめのうちはとにかく言われた通りにやってください。たとえばラジオ講座は録音しないで放送時刻に聴きなさいと言われたら、ちゃんとその時間帯に起きて聴いてください。内容はいつだって同じじゃないか・・・ではない何かがあるのです。いまは理由がわからなくても、素直に指示に従う気持ちは大切です。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。