精神論を展開していてもきりがないので、そろそろ実践的なお話もしましょう。まずノートを使うということ。テキスト類に気づいたことを書きこむのは悪いことではありません。マーカーなどで線を引くのも悪いことではない。
ただ問題を解くときは、必ずノートにやってください。問題集には書きこまない。英語や数学は問題もきちんと写してノートに大きく書いていく。大切なのは、自分ができないことをできるようにしていく過程ですから、それを阻害する要素は排除していかなければならないのです。

問題集にじかに書きこんでしまうということは、当然間違えたところも――そのままにしておいていいわけがないので――赤字で訂正を書きこむことになると思います。復習するときに正解が見えてしまう。
ああ、そうだった、こうやるのだった。それだけで、きっともうできるに違いないと思いこんでしまう。人間、そんなものです。きちんとゼロからやりなおす気力を欠いてしまう。それを避けるために、問題は必ずノートに大きく写してから解いてください。

その作業を通じてスピードもまた養われる。雑に書いてはもちろんいけない。しかしばか丁寧に書いていたら終わらない。適正なスピードですらすら書けるように自分を鍛えていく必要が出てきます。必要が成長を生む。工夫する気持ちがあなたをたくましくしていくものです。
ノートに写すときは省略しないようにしましょう。計算問題をやたらと暗算をまじえて解こうとする人がいますが、その「面倒がる心」こそがあなたの敵です。ホンモノの敵はそうやって常に自分の内側にいるのですよ。

使用したノートは数学1、数学2、英語1、英語2・・・と必ず保管しておきましょう。入試が近づいて不安になったら床に積み上げてみるといい。教室に来てくれていたある生徒は、全教科のノートが3年分で自分の背丈ぐらいになったとおっしゃっていました。それぐらい心をこめて書き続けてきたからこそ一流校に合格できた。逆に言うと、何も残らない勉強では少し心配になりますね。
きちんと形に残すことで「自分はこれだけやってきたのだ!」という自信につなげるのことができるのです。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。