勉強のできる人というのがいつもやる気満々であると考えたら大きな間違いです。人間ですから当然気が進まない日もある。体調がすぐれないとか頭が重いとか寝不足気味で眠くて仕方がないとかという日もありますよ。私はよくできる子たちをたくさん知っていますが、生まれてから今日までやる気に満ちた日以外一日もなかったなどという生徒は見たことがありません。
ですから、やる気が出ないからだめだという単純な考え方は捨ててください。

彼ら秀才にも「気が進まない日」や「なかなかはかどらない日」があるということです。しかし、彼らはだから今日は一切やめておこうとはならない。不平不満を言わず、落ち着いて丁寧に、できる範囲で努力する。そういう貴重な習慣を持っているのです。持っているからできるようになったということです。
これは勉強に限りません。気が進まない日にどう振舞うかということは技術的な問題よりよほど大切だと思います。

気が進まない日も作業をする。作業というのは声に出し心をこめて読んだり、丁寧に書いたり、練習したりということです。いつもと同じ作業量を確保する。場合によっては――なかなか覚えられない分だけ――いつもよりさらに努力する。努力するというのは具体的に言うと作業の回数を増やすということです。
その過程で少しは気持ちも落ち着いてくるでしょうし、こんな日だって自分は頑張ったのだという誇りや自信も蓄積していくでしょう。

逃げなかった自己に対する信頼感ですね。そういうものが増幅していく。
人間を二つのパターンに分けて「私にはあの人のようなやる気はないのだからできなくても仕方がない」などと決めつけないようにしてください。いまのあなたよりやる気がなかった日も、彼らは習慣的な努力をとにかくスタートさせました。忙しいときもできるかぎりのことをした。
そういう習慣を作ることです。終わらなければ終わらないでかまいません。どうせ終わらないから今日はもういいやなどというのより、よほどましだと思いませんか。


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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。