ときどき教わる先生によっておっしゃることが微妙に違うのですが、どうしたらいいでしょうというご相談を受けることがあります。
基本的には、世の中には多様性があるということであって、究極的な正解はないのかもしれないよと話すようにしています。またご自身の本当の「正解」はご自身で見つけ出していかないといけないとも思います。

比較的答えやすいのは、学校で「辞書はひかなくていいと言われた」とか「計算問題を解くときに電卓を使ってもいいと言われた」とかという極端な事例ですね。
たしかに海外に長いあいだいらっしゃった方などは、とりあえずできるレベルからスタートせざるを得ない場合もあるでしょう。ただそれは特異なケースであり、わざわざ真似することはありません。

ある先生は教科書の英文を全文ノートに写しておきなさいとおっしゃった。ある先生はそんなことまでするのは時間のむだだよとおっしゃった。また古文はいちいちノートに本文を写さなくていいだろうかという相談もありました。 
いままでは写していたのかねと訊いたらそうですと言う。なぜやめようと思ったのかねと質問すると、みんなあまり写していないみたいなのでと答えました。

そこで、質問の方向を変えてみました。写していて役にたった? はい、それなりに・・・
それなら当然続けなさいという話になりますね。みんながどういうやり方をしていても、ご本人の役にたつことをやめる必要はありません。自分に合ったやり方以上にみんなの真似をしたくなるのが人間の不思議なところです。

手間をかけたほうがいいに決まっているのです。勉強と一緒にいられる時間が長くなるからです。効率重視とは言いますが、それは「一緒にいる時間を減らしたい」というのと同じです。早く切り上げたいということです。
人間同士であっても「なるべく効率よくおつきあいしましょう」などと言われたら、愛情は湧いてきませんね。効率だけを考えた勉強は、あちら側(つまり勉強側)からも愛情を持たれないものです。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。