読んで考える、読みながら考えることは非常に大切です。手もとにあるテキストにこういう記述がありました。「睡眠は単なる活動停止の時間ではなく、高度の生理機能に支えられた積極的な適応行動であり、生体防御技術です」これをご自身でそうなのかとうなずきながら読む。「うなずきながら」というところが最大のポイントです。
読み進めていく過程で「寝てばかりいて」と叱られたことがあるけど、むだじゃなかったのだなという感想が脳裏をよぎる。

また「高度の生理機能」「積極的な適応行動」「生体防御技術」のあたりはわざわざ辞書をひくほどの混乱はないかもしれませんが、言葉を知らない中学生であれば「うん?」とひっかかってくるものがあるはずです。そうやってひっかかりひっかかり進んでいくこと自体が大切ですね。
同じような表現に何度も何度も立ち止まるうちに自然に意味がつかめてきます。繰り返しひっかかる必要はどうしてもある。力をつけるためある種の抵抗感は必要なのです。
これをたとえば知識としてだけ得るとしますね。

先生かどなたかに「寝ることも身体にとって大切で必要なことだそうだぞ」と概略だけを教わる。効率よく知識だけは身につきますが、何かが違う。読み進めながら「寝るのはむだじゃないのか?」と自分自身で意外に感じたり納得したりする瞬間だけに得られるものがあります。あるいは高度の生理機能って・・・身体の働きという解釈であっているのかなと不安に思う心の揺れ。そうした経験が何よりもご本人を進歩させてくれるのです。その過程が面倒臭いから結論だけまとめて教えてくださいでは絶対に力はつきません。

ですから効率よく時間の節約ということで、せっかく問題文があるのに読み飛ばして問題だけ解いておこうなどと考えるのはもっとも効果がない勉強になります。問いを解くだけではなく、長文を吟味し熟読しそのことについて生活の中でふと考えるぐらいにならないといけないということです。

連載バックナンバー

著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。