今回は心理的な問題について触れてみます。勉強法はわかってきたのだが、勉強する気持ちになれないという方がいらっしゃる。
そもそも、あなたはなぜ勉強するのですか。テストがあるから? 受験があるから? 勉強しないとおうちの方や学校や塾の先生に叱られるから? あるいは勉強すると褒められたりお小遣いを多めにもらえたりするから? どれも悪い答えではありません。本音はそんなものかもしれないですね。

それでは、志望校に合格したらどなたが喜びますか? もちろんあなた自身は喜びますね。ご家族が喜ぶ。お友だちも喜んでくださると思います。一緒に合格できた仲間はとくにそうでしょう。学校や塾や添削者の先生も喜ぶ。私(長野)だって喜びますよ。コラムを読んでくださっていた方が合格されればうれしくないわけがない。
変なことを書きますが、それでは志望校に万が一落ちたらどなたが悲しみますか? あなた、ご家族、学校や塾や添削者の先生、そして私。

するとAくんが合格してもBくんが合格しても世界はたいして変わらないことになります。合格という幸せがAくん側に行こうがBくん側に行こうが、大勢に影響がない。
ところがもしAくんが世の中全体のために勉強していたらどうでしょう。合格の先の先まで見すえていて、将来少しでも世界をよくしていくために運命を切り開こうと努力していたらどうでしょう。一般の人はこぞってAくんを応援すると思います。Aくんの成功が自分たちの利益にもなるからです。

そういう視点もぜひ持ってくださったらいい。勉強することが許される環境に暮らしている人間は全世界でごくごく少数です。その人たちが頑張らないかぎり、いまの世の中はあらゆる意味で救われません。貧富の差、人種や文化間のトラブル、環境問題や多発する複雑な紛争、それらを解決できそうなのはきちんと学問するチャンスに恵まれたあなたたちだけです。勉強をはじめることがいずれ世界を救済することにもつながるのだと考えてみてください。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。