キャンパスレポーターに聞く、学び・大学生活の極意
中高生におすすめしたい一冊
10月は読書の秋。夜が長くなって家にいる時間も増えるこの時期は勉強に励む(はげむ)ことも大切ですが、たまには息抜きも必要ですよね。今月は、キャンパスレポータの先輩たちが感動したり、今の自分に影響をしていたり、イチオシの参考書などを含めて、ぜひ中高生に読んでほしい!と感じた一冊をご紹介します。勉強の合間に読んでみてください。
オリンピックの裏側・家族の物語

▲『十の輪をくぐる』/辻堂 ゆめ 著/小学館
今回紹介した本の写真です。
私が最近読んでよかったと思う本をご紹介します。辻堂ゆめさんの『十の輪をくぐる』という本です。この本は十の輪というタイトルどおり、1964年と2020年のオリンピックをテーマにしていて、主人公と彼の母親、そして彼の娘という三世代に渡って物語が展開されていきます。あるきっかけから主人公は、時代の荒波にもまれながらも強く生きた母親の生き様や、自分の過去を知っていくことになるのですが、主人公が物語の中で、生きていくうえで大切な何かを思い出すのと同時に、私自身今までの人生を振り返るきっかけになったように思います。感性豊かな中高生のみなさんに、ぜひ読んでほしい一冊です。
大学の特徴をおもしろく学べる!

▲『擬人化マンガ 大学あるあるこれくしょん』/ネピア 著/ぴあ
ちなみに九州大学は芸術工学部という全国的にも珍しい学部が存在するので、このマンガでは絵がうまいというキャラになっています。
私が紹介する本は、『大学あるあるこれくしょん』という漫画です。旧帝国大や有名私立大・芸術大などさまざまな大学を擬人化しているのが特徴です。各大学の自慢や特徴が性格としておもしろおかしく表現されており、また大学間の交流なども描かれていています。私がこの本に出合ったのは大学入学後でした。もちろん受験が終わってから読むのもおもしろかったのですが、本当は高校生のときに読んでおきたかったです…。当時知らなかったことを知ることができたと思います。この本で志望大学が変わったという友人もいました!まだ行きたい学部や大学が決まっていない人やモチベーションが下がっている人にはとくにおすすめします!ぜひ進路のことを考えるツールの一つにしてもらいたいです。
息抜きをしながら将来について考える

▲『キケン』/有川 浩 著/新潮文庫刊
おすすめしたい一冊は、有川浩さんの『キケン』です。ある大学の機械制御研究部という部活の物語なのですが、登場人物たちがとても魅力的で、すごく楽しそうな大学生活を送っているようすが描かれているのを読み、大学生になるのが楽しみになったのを覚えています。私は高3の夏休みぐらいまでは、通学の電車の中で読書をしていました。今自分のいる世界のことを忘れて物語に夢中になれる、とても楽しい時間でした。この『キケン』のように大学生活の物語やお仕事に関する小説を読んで、自分の将来についてあれこれ考えてみることもでき、また勉強をがんばろうと思えることもありました。ぜひいろいろな本を読んでみてください。
レイチェル・カーソンの遺作

▲『センス・オブ・ワンダー』/レイチェル・カーソン 著/上遠 恵子 訳/新潮社刊
私がおすすめしたい本は、レイチェル・カーソンの遺作でもある『センス・オブ・ワンダー』です。この本は、私が大学1年生のときに読んだ本です。この本には、海洋学者であったレイチェル・カーソンが姪の息子のロジャーと一緒にメイン州の別荘で過ごした経験が書かれています。五感すべてを使って自然を「感じる」ことで得られる喜びがどれだけ大事なことであるかをこの本は教えてくれます。たった54ページしかないにもかかわらず、とてもメッセージ性の強い本です。日頃見ている自然の美しさに気づかされます。また、本の中にある自然の美しい写真に感動します。とても短い本なので、勉強の合間などにぜひ読んでみてください。英語の原文で読んでみるのもよいかもしれません。
おすすめの英単語帳

▲『速読英単語 必修編[改訂第6版』/風早 寛 著/Z会
速単の表紙です。
私がおすすめする本は、Z会の『速読英単語シリーズ』、通称『速単』です。『速単』の特徴は長文を読むことを通して単語を覚えられるということです。単語を覚えることが苦手だった私でも、英文を繰り返し音読することで単語を自然に覚えることができました。また、単語の意味を丸暗記するという勉強法よりも、その単語が実際に使われている文章に触れながら学習したことで、より実用的な知識を身につけることができたと思います。速単シリーズは英語の習熟度に応じてレベルが分けられており、段階を追って基礎から発展まで幅広い単語を身につけることができます。また、盲点になりがちな英熟語もカバーできるという魅力もあります。単語学習に苦手意識がある方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
お仕事の裏側と、自らの将来について考える

▲『展覧会をつくる 一枚の絵がここにくるまで』/足澤 るり子 著/柏書房
タイトルが箔押しで、インテリアとしてもすてきです。
私がおすすめしたい本は、足澤るり子さんの『展覧会をつくる 一枚の絵がここにくるまで』です。大学生になってから読んだ本ですが、中高生のうちに読んでおけばよかったと思ったので紹介します。海外から貸し出された絵が展示されるまでの軌跡と、筆者の大切な人との向き合い方、別れが描かれたノンフィクションです。この本は私が将来、どう生きたいのかを考えるきっかけになりました。大学生は中高生と異なり、専攻が分かれるため、専攻を変えることは勇気と時間が必要です。まだ進路が確定していないころに読んでおけば、このように後悔しなかったのかなと思うこともあるので、ぜひ中高生のみなさんに読んでほしいです。読みやすいので勉強の息抜きとしておすすめします。将来のことを考えると同時に、周囲の人への想いも変わると思います。
経済はこの本から学べ!

▲『経済は地理から学べ!』/宮路 秀作 著/ダイヤモンド社
この本を読んで初めて知ったことも多くありました。たとえば、「ノルウェーは欧州の先進国なのにEUに加盟していない」という事実とその理由、みなさんは知っていますか?
私のおすすめの本は、『経済は地理から学べ!』という本です。題名どおり、ニュースで見聞きするような経済問題を地理的な観点から解説している本で、「なぜ人々は東京に集まるのか?」や「ブラジルとヨーロッパを結ぶ意外な産業とは?」など、国内から海外までさまざまなトピックを取り上げています。予備校講師の方が執筆されており、文章は固すぎず、授業で語りかけるような表現で、非常に読みやすいです。「固い表現で難しい文章は嫌だ」、「文学作品などに興味がもてない…」といった方にとくにおすすめします。私の場合は単に経済を詳しく知るだけでなく、ニュースで話していることが理解しやすくなるというメリットもありました。みなさんも機会があればぜひ読んでみてください。
「東野圭吾」をすすめる理由

▲『ナミヤ雑貨店の奇蹟』/東野 圭吾 著/
KADOKAWA/角川文庫
私が紹介するのは東野圭吾さんの『ナミヤ雑貨店の奇蹟』という作品です。数年前に映画化されたので知っている方も多いと思いますが、ネタバレ回避のために作者の東野圭吾さんに焦点を絞ってご紹介します。東野圭吾さんは自身が理系の学部出身であることを生かしたミステリー小説をたくさん書いていらっしゃいます。また理系的な要素を含むミステリーであることに加えて、倫理観も交えた作品となっており、読者に「正義とは何か」ついて考えさせる場面が多いです。受験生にとって東野圭吾作品は小論文対策などにも効果的だと思います。多くのことを考えさせられる彼の著作を読んで、ぜひ教養を身につけてみませんか?東野圭吾入門として『ナミヤ雑貨店の奇蹟』がおすすめです!
感染症と向き合う

▲『ペスト』/カミュ 著/宮崎 嶺雄 訳/新潮文庫刊
私が中高生のみなさんにおすすめしたい一冊は、フランス文学の巨匠カミュの『ペスト』です。これは、ペストの流行によって封鎖されたアルジェリアのオラン市において、感染症と戦う医師や記者、さまざまな住民の日々を描いた作品です。この作品が書かれたのは今から70年以上前ですが、物語の状況が現在の新型コロナウイルスのパンデミック(=大流行)の状況によく似ています。この作品はフィクションですし、著者は現在のパンデミックは予想すらしていないでしょう。それでもこの作品から、現在の苦しい状況を乗り超えるための考え方や行動のヒントを得ることができると思います。少し難しい表現もありますが、予測不能な感染症と向き合う今だからこそ読んでほしい一冊です。
京都が身近に感じられる『げんじものがたり』

▲『げんじものがたり』/いしい しんじ 訳/講談社
表紙から背表紙、裏表紙へとつながる絵柄です。
みなさんがご存知の『源氏物語』。授業では扱ったことがなくても、おそらくほとんどの方がタイトルを耳にしたことくらいはあるでしょう。古文は得意な人と苦手な人がはっきり分かれていると思います。苦手な人にとっては、「そんな千年も昔の話、知らんわ!文化も言葉も違うのに!」となりますよね。そのような方には、いしいしんじさんが訳した『げんじものがたり』をおすすめします。この本は普通の現代語訳や源氏パロディ小説とは一味も二味も異なります。まず、訳は訳でも「京ことば」なんですね。平安京が昔すぎるなら、現代の京都に置き換えたらどうなるか、という物語です。そして原文に忠実。この本を読んでいるうちに、上品で華やかな平安王朝にいるような気分に…。すべての中高生へ送りたい一冊です。
自分の現状に満足していない方におすすめ

▲『夢をかなえるゾウ』/水野 敬也 著/文響社
『夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神』/水野 敬也 著/文響社
『夢をかなえるゾウ3 ブラックガネーシャの教え』/水野 敬也 著/文響社
自宅にある『夢をかなえるゾウ』シリーズ3冊です。何度読み直してもおもしろく、自分を見つめるきっかけを与えてくれる大好きな小説です。
私がみなさんにおすすめしたい本は『夢をかなえるゾウ』という小説です。突如現れたゾウの姿の神様"ガネーシャ"が主人公の夢をかなえるため、著名人の名言に基づいたさまざまな課題を出し、自身の現状に満足できていない主人公がそれらの課題に果敢に取り組んで成長していくお話です。なかなか自分の目標が定まらない、自分を変えてより大きなチャレンジをしてみたい…など、日々の生活や今の自分に課題を感じている方にぜひ読んでいただきたいです。自分と主人公を照らし合わせて共感しながら読めるとても軽快なストーリーになっています。とことん笑えてとてもためになるお題の数々に、きっとあなたもガネーシャの虜になるはずです!そして主人公の成長の行方はいかに…?ぜひ読んでみてください。
Sukoshi Fushigi な物語

▲『クララとお日さま』/カズオ・イシグロ 著/土屋 政雄 訳/早川書房
すてきな装丁は生活を彩ってくれること間違いなし!
受験勉強に行き詰まったときは、軽めのSF小説を読むようにしていました。難解な設定のものより、ファンタジーやミステリーの境目に存在するような作品をよく読んでいた気がします。読んだ後は頭がすっきりして、新鮮な気持ちで机に向かうことができました。よい気分転換になるのでおすすめです。今回私が紹介する本は『クララとお日さま』です。2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の受賞後第一作であり、AIと人間との関わりをきめ細やかに描いたすばらしい作品です。読みやすい翻訳とワクワクする状況設定、そして驚きの結末は、きっとみなさんの今後の人生にプラスの影響を与えてくれることでしょう。ぜひ読んでみてください!