Z3書店

恋愛モノで春を満喫

Z3書店はZ会員の集まる架空書店。
テーマに沿った個性的な品ぞろえで、みなさんの読書欲を刺激します。

今回のテーマは【恋愛モノで春を満喫】。みなさんが継続的に読書を楽しめるよう、更新を数回に分けて、「恋愛」に関するおすすめ本をご紹介していきます。

甘く切ない恋愛ストーリーを読んで、わくわくした気持ちで春を過ごしませんか。

まずは、IT系、人文書、実用書などさまざまな本の編集に携わり、漫画への興味も深い、杉島靖乃先生のおすすめ本を三冊、ご紹介します。

選: 杉島靖乃

『自負と偏見』

ジェイン・オースティン 著/小山太一 訳 新潮文庫刊

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素直になりきれずにすれ違いを繰り返す男女を描き、恋愛ドラマのお手本とも言える古典的な名作です。舞台は19世紀初め頃の静かなイギリスの田舎町。エリザベスが舞踏会で出会った大金持ちのイケメン、ダーシーの第一印象は最悪で、その高慢な態度に彼女は反感を抱きます。誤解からはじまった二人のハラハラドキドキの恋物語を中心に、彼らをとりまく人々もユーモアたっぷりに描かれていて、最後まで読者を飽きさせません。200年以上前から愛読されてきたシンデレラストーリーを、ぜひ味わってみてください。多くは『高慢と偏見』の邦題でさまざまな出版社から刊行されていますが、若い読者にも読みやすい本書をお勧めします。

選:杉島靖乃

『僕らのごはんは明日で待ってる』

瀬尾まいこ 著 幻冬舎文庫

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大好きな兄の死後、自分の殻に閉じこもっていた亮太は、高校最後の体育祭をきっかけに、クラスメイトの小春と話をするようになります。小春は亮太とは対照的で、サバサバしていてちょっと風変わりな女の子。彼女と関わることで、止まっていた亮太の時間は少しずつ動き始めます。一気に燃え上がるような恋の物語とは違い、相手のことを知るようになる過程が実に淡々と描かれているのですが、それがかえって心にしみます。二人が囲む食卓がいつまでも続いていってほしいと願わずにはいられません。かけがえのない人と過ごす何気ない日常の尊さを浮かび上がらせた作品です。

選:杉島靖乃

『狐笛のかなた』

上橋菜穂子 著 新潮文庫刊

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「人ならざる者」と「異能をもつ少女」のカップルが過酷な運命に翻弄される、淡い恋の物語。人の心が聞こえる力を母から受け継いだ小夜は、子供のころ、犬に襲われている子狐を助けます。その正体はこの世とカミガミの世界の狭間〈あわい〉に生まれた野火という名の霊狐でした。隣国のよこしまな呪者に使役されている野火と、特別な能力を持つ小夜は、やがて対立する二国をめぐる陰謀に巻き込まれてしまうのです。自分を省みず、懸命に相手を守ろうとする二人の純粋でけなげな愛。大切なものを守るため、最後に小夜がくだした決断をあなたはどう感じるでしょうか。物語のラストのせつない余韻がいつまでも心に残ります。