竹内宏『エコノミストたちの栄光と挫折』(東洋経済新報社)を読む。
 
最初のほうから、ちょっとだけ引用。
 
宮澤喜一・元首相は、太平洋戦争が始まった年、大蔵省に入省した。
 
《宮澤元首相は召集されたが、翌日解除になった。死ぬと国家にとってマイナスになる人は徴兵されなかった。》(p18)
 
そうか、「なんで勉強しなきゃいけないワケ?」と子どもに聞かれたら、「勉強して官僚になって、国家にとって必要と見なされたら、万一戦争になっても、死ぬ確率がグッと低くなるからだよ」と答えればいいのか。
 
「えー、でも、それって、戦争になったとき、オトナになってなきゃなんないわけでしょ?」
 
「いやいや、それだけじゃないよ、官僚だけでもないし」
 
《一流学者も徴兵されなかった。(中略)優秀な学者は戦時中でも大学に残った。東京大学の理工系の学部では、戦時中も講義や研究が続いていた。》(p18〜20)
 
「講義が続いていたってことは、学生もいたってことでしょ。優秀な大学生であれば、死ぬ確率がグッと低くなるわけだよ」
 
「えー、でも、ぼくまだ中学生だしー。今戦争起こったらしょうがないのかな」
 
「いやいや、そうでもないよ」
 
《旧制中学でもエリートが温存される仕組みがあった。三一年生まれの生徒からとびきり頭のよい者が六〇名選ばれて、金沢市の旧制第四高校に集められて、英才教育を受けた。》(p20)
 
「三一年生まれってことは、終戦時に14歳、つまり中学2年生ってことだ。この例にならうと、全国で勉強ができる中学生ベスト60に入っていれば、今戦争が起こったとしても、死ぬ確率がグッと低くなるわけだよ」
 
国家は、こういう選別をする、ということは知っておいたほうがよろしいかと。

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著者プロフィール

川渕 健二(かわふち けんじ)

おかしいものはおかしいと口に出して言えること、
他者と協同してそれを是正していける人が増えることを願う、
Z会の中高一貫コース「総合」担当者。釣りをこよなく愛する。