板垣邦子『日米決戦下の格差と平等』(吉川弘文館)を読む。
 
ちょっとおもしろかった、というのは語弊があるか。もとい、興味深かったのは、「幽霊人口」についてのくだり。
 
当時、食糧が配給制だったことは、みなさんご存知でしょう。その配給量を決めるときの人口と、実際の人口の差を「幽霊人口」といったそうですが、その「幽霊人口」、全国で100万人にものぼったそうです。もちろん、幽霊人口>実人口。配給量を増やすための、水増し申告というか、虚偽申告ってやつですね。
 
当時の総人口を7,000万人程度だとすると約1.5%の水増し。軍に行っていて、配給の対象にならない人を除くと、パーセンテージはさらに上がる。これ、もう、誤差の領域じゃないですよね。
 
ちょっと方向は違うかもしれませんが、山本七平さんの著作にあった「員数主義」という言葉を思い出しました。根っこは、同じなのではないでしょうか。
 
全体としては、戦時のモノ不足を背景に、公平・平等を求める動きが強まった、というお話ですが、公平・平等を叫ぶのは、自らが不公平・不平等によって不利益を被っていると感じている側で、その逆では決してない、というのが、なかなか考えさせられました。
 
公平・平等を叫んでいる人たちが、もし不公平・不平等によって利益を得る側に立ったとしても、はたして公平・平等を叫び続けられるかどうか。

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著者プロフィール

川渕 健二(かわふち けんじ)

おかしいものはおかしいと口に出して言えること、
他者と協同してそれを是正していける人が増えることを願う、
Z会の中高一貫コース「総合」担当者。釣りをこよなく愛する。