「よい睡眠」で学ぶ力を高める

みなさんは、毎日平均何時間の睡眠をとっていますか?
「学校の課題が多くて終わらない」
「定期試験前は夜遅くまで勉強をする」
「寝る前にスマホを見てしまう」といった理由で睡眠時間を削っている人もいるのではないでしょうか。

一方で、難関大学に合格した先輩たちは思いのほか、十分な睡眠をとっているという話をよく耳にします。

実際に睡眠時間やリズムと学業成績には因果関係があるようです。

今号の特集では、「よい睡眠」と学力の関係について、考えていきます。

Z会OB・OG に聞く!
中高生時代に大事にしたい

「よい睡眠」 4つのポイント

睡眠の大切さは誰もが理解していることですが、毎日忙しく過ごしている中高生のみなさんにとって、1日24時間という限られた時間のなかで、勉強や趣味の時間と睡眠時間を両立させるのはなかなか難しいものです。そこで、難関大に合格をしたZ会OB・OGの77人に、中高生時代の睡眠事情を聞いてみました。先輩たちのアンケートからは、よりよく学ぶために必要な「睡眠の4つのポイント」が明らかになりました。

Q睡眠時間や睡眠の質と成績には関係があると思う?

  • Point1

    質のよい睡眠を7時間以上確保している!

    Q中高生時代の睡眠時間は?

    先輩たちに中高生時代の睡眠時間について聞いたところ、平日の平均睡眠時間は7時間12分、休日は8時間24分と、十分な睡眠時間を確保していることがわかりました。学校や部活で忙しい平日でも、86.8%の人が24時前に就寝しており、うち19.7%の人は23時前に就寝しているなど、過度な夜更かしをしないよう、心がけていたようです。

    「睡眠時間の確保を最優先にしていた。1日は24時間ではなく、睡眠時間をのぞいた17 時間だと考えて生活していた」

    (東京大学文科一類・ひまわり先輩)

    「睡眠不足だと体調が悪くなり、何事にも集中できなくなる。充実した中高生活を送るためには、睡眠をたっぷりとることが必要不可欠」

    (一橋大学社会学部 卒・はらぺこあおむし先輩)

    というように、良質な睡眠をたっぷりととることが、心身の健康を維持することにつながると自覚していたことがわかります。

    一方で、志望校合格のためには勉強時間の確保も欠かせません。先輩たちは睡眠時間と勉強時間を両立させるために、どのような工夫をしていたのでしょうか。寄せられたコメントから、大きく分けて、次の2つのコツが浮かび上がってきました。

    1.あらかじめ時間の使い方を決めておく

    「布団でまとまった時間、しっかりと寝ることは大事。寝る時間が一定になるように、寝る時間から逆算して、何事にも時間のリミットを決めて動くようにしていた」

    (東京医科歯科大学医学部 卒・あやこ先輩)

    「整った生活をルーティン化し、だらだらする時間を極力なくすことで勉強時間を確保していた」

    (津田塾大学学芸学部卒・ぴぽん先輩)

    「さまざまな睡眠時間を試した結果、7時間睡眠が自分にとっての境目だとわかった。7時間寝た日はひらめきが多くなり、ケアレスミスが格段に減ることを知っていたので、毎日のリズムをできるだけ崩さないよう、何時から何時まで勉強するのか、何時にご飯を食べるのか、などきっちり計画を立てて過ごしていた。長時間勉強することよりもコンスタントに学び続けることを大切にしていた」

    (東京大学理科二類・たろたま先輩)

    2.スキマ時間の使い方を知っている

    「学校の休憩時間に予習・復習をしたり、授業中も空いている時間を見つけてワークに取り組んだりして、効率的な勉強を心がけていた」

    (東京理科大学先進工学部 卒・なのはな先輩)

    「電車で寝てしまうと勉強時間が確保できなかったので、電車では絶対に座らないというルールを自分に課していた。電車の中で、英単語や文法の勉強をしておいたことで、部活を引退した後も英語に自信をもって勉強できた」

    (大阪大学理学部 卒・さつまいも先輩)

    「休み時間を活用したり、放課後に学校に残って勉強することで、家で夜遅くまで勉強しなくてよいように工夫していた」

    (九州大学農学部・花花先輩)

    「片道1時間ほどの通学の電車の中では、無理に勉強しようとしてもなんとなくぼーっとしてしまったり、ほかのことに気を取られやすいので、潔く寝ることで授業中や帰宅後の学習中に睡魔に負けないようにしていた」

    (奈良教育大学教育学部・ゆうぞら先輩)

  • Point2

    休日と平日で生活リズムを変えないように意識している!

    Q週末に寝だめをする習慣は?

    次に注目したいのが、休日の生活リズムです。半数以上の先輩たちが週末に「寝だめ」をすると回答しましたが、Point1で見たとおり、平日と休日の睡眠時間の差の平均は1時間12分。休日でも、82.9%の人が24時前に就寝し、64.5%の人が8時までには起床するなど、生活リズムを大きく崩すことがないよう心がけていた先輩が多いようです。翌日がお休みだと、つい夜更かしをしてしまう中高生も多いと思いますが、

    「寝だめをすると、平日の分も寝られた!と満足しがちだが、自由な時間が多いはずの休日の時間が減ってしまうのであまりよくない」

    (北海道大学農学部・ぴろしき先輩)

    「寝だめは、本当に睡眠が不足しているときの、一時的な解消策にはなっていた。しかし、週末に寝だめをしたところで、平日に寝不足が続くと慢性的な睡眠不足になり、体を壊すので注意」

    (京都大学教育学部 卒・テオブロマ先輩)

    という先輩たちのコメントのように、過度な夜更かしや寝だめをせず、一週間を通して規則正しい生活を送ることが、勉強時間の確保と健康維持の秘訣のようです。

    しかし、規則正しく生活しようと思っても、休日も早起きをするのはなかなか難しいですよね。先輩たちは、よい生活リズムのために、自分でルールを決めていたようです。

    ◎休日も規則正しく生活するためのコツ

    「長期休暇のときも、予備校の授業を朝イチに入れたり、自習室に午前中から行くなどして、生活リズムを崩さないように心がけていた」

    (東京女子大学文理学部 卒・かかお先輩)

    「日中だらだらと過ごすことのないよう、テレビを見る時間を決めていた。深夜に見たいものは録画して、翌日の休憩タイムに見るようにすることで夜更かしを防いでいた」

    (東北大学工学部 卒・みど先輩)

    「寝る直前にスマートフォンを見た日は寝つきが悪くなることに気がついたので、23 時以降はスマートフォンを使用しないようにすることで、規則正しい生活を維持していた」

    (大阪府立大学工学域・テラ先輩)

  • Point3

    「時間×質」の関係を理解し、パフォーマンスを向上!

    Q「テスト前」や「模試前」の睡眠時間に変化はあった?

    続いて、テストや模試といった試験前の様子を見てみましょう。「一夜漬け」という言葉があるように、大切な試験の前は、根を詰めて勉強をしてしまいがちですね。しかし、先輩たちの約半数は、試験前でも睡眠時間が「長くなった・変わらなかった」と回答しています。

    「テストや模試のスケジュールは事前にわかるので、早めに対策を始めていた。前日に慌てて頭に詰め込んでも、すぐに忘れるので今後のためにならない」

    (お茶の水女子大学文教育学部 卒・きりんご先輩)

    「睡眠時間が長い分、活動時間が短いので、効率よく勉強するよう、質にこだわった勉強をした」

    (慶應義塾大学薬学部・れい先輩)

    というように、試験を長期的なスケジュールのなかで捉えて計画的に勉強を進め、効率よく学ぶ工夫をすることで、ふだんと変わらない睡眠時間を確保していたようです。

    一方で、試験前は睡眠時間が短くなってしまったという先たちも多くいました。ただ、寄せられたコメントは “本番で最高のパフォーマンスを発揮できなかった” と反省する内容のものが多いようです。自分のパフォーマンスを最大化するためにはどのくらいの睡眠時間が必要か、試験本番までにいろいろ試してみることで、自分にとって最適な睡眠時間を知っておくことが大切です。

    ◎睡眠不足が「短くなった」先輩たちの反省点

    「今思えば、テストがうまくいったときや受験に合格したときは十分な睡眠をとっていた。逆にテストで失敗したときや受験に失敗したときは、うまく寝られていなかった気がする。寝不足だと何をやっても集中できず、悪循環になってしまうので、睡眠はすごく大切」

    (東京大学大学院総合文化研究科・moon 先輩)

    「テスト前に睡眠時間を削って勉強したところ、その日のテストは集中して取り組めたものの、帰宅後に体調を崩してしまった。翌日以降にもテストがあるのに、十分に復習できず、精神的にもつらかった」

    (上智大学理工学部 卒・ひかるん先輩)

    「睡眠不足の日は、学校の授業に集中できなかった。体もだるく、授業を受けているだけでしんどかった。睡眠不足が続くと、家族や友人の言葉を大げさに捉えてしまい、ついキツイひと言を言ってしまうこともあった」

    (京都大学大学院人間・環境学研究科・たまごーん先輩)

  • Point4

    自分にあった「睡眠」と「勉強の仕方」を知っている

    Q自分の体内リズムや「本番」に合わせて、勉強内容を意識して変えていた?

    起きている時間のなかでも、脳の覚醒具合や身体のリズムによって、より頭がさえている時間帯がありますね。同じ1時間の勉強でも、集中して行うのと、ボーっとしながら行うのとでは、成果の差は歴然。半数以上の先輩たちは、そのような自分のリズムを把握し、意識的に勉強内容をデザインしていたようです。入試直前期は本番の試験時間に合わせて力を発揮できるよう、リズムを整える工夫をしていたという人も。“ できる” 先輩らしいコツと言えますね。

    ◎自分のリズムに合わせた勉強の仕方の例

    「数学など論理的に考えることが重要な教科は、自分の頭が一番さえている朝の時間帯に、社会など知識を覚えることが重要な教科は、夜寝る前に取り組んでいた。実際、私は数学の問題は朝のほうが集中して効率的に取り組めていたし、夜に覚えたことのほうが翌日以降も定着していたと思う」

    (東京大学理学部 卒・じょー先輩)

    「朝は、英語のラジオ講座を受講するため決まった時間に起床。午前中は眠いので、私立大の過去問やセンター試験など機械的に解けるものを中心に学習。最も頭がはたらくと感じていた昼食後に、国立大の過去問や対策問題集を解いていた。夕食後の時間は暗記の勉強にあてていた」

    (京都大学文学部・Y 先輩)

    「朝に勉強することがベストだと思い込んでいたので、がんばって早起きをしていたが、毎朝眠くてあまりはかどらなかった。一方で、夜は集中力が続くので、知らず知らずのうちに夜更かしをすることが多かった。“ 夜型” である自分のリズムに合わせて勉強するようにしていた」

    (京都大学総合人間学部 卒・n. 先輩)

最後に、冒頭のアンケートを今一度見てみましょう。実に、98.7% の先輩たちが「睡眠時間や睡眠の質と成績には関係がある」と答えています。

「高校生のとき、地学オリンピック予選前日に徹夜で勉強した結果、本番はあまり集中できず自分の実力を十分発揮することができなかった。それ以降、本番直前など重要なタイミングこそ睡眠を意識的にとるようになった」

(京都大学総合人間学部・オオサンショウウオ先輩)

「成績に最も関連しているのは、何をどれだけ身につけたかであるが、睡眠は、身につけたことをどれだけ発揮することができるかに関係していると思っている」

(京都大学農学部応用生命科学科・める先輩)

というコメントからわかるように、“できる” 先輩たちは、より健康的な生活をおくるためだけでなく、よりよく学び、よりよいパフォーマンスを発揮するために、睡眠を戦略的に捉え、実践していたことがわかります。そして、4つのポイントから、Z会の先輩たちは中高生時代に睡眠をとても大切にし、さまざまな工夫を凝らすことで、十分な、そして良質な睡眠をとるよう心がけていたことがわかりました。みなさんも先輩たちに倣い、より最適な睡眠を実践することで、学習環境を充実させていってください。