Z3書店では毎号、テーマに沿った本をご紹介していきます。読みやすさに応じて3つのレベルでご紹介するので、読書に苦手意識がある人も、“本の虫”だと言う人にもおすすめします。今回、紹介するのは6冊のミステリー作品。あなたは、これらの「謎」が解けますか?
Z3書店
ミステリーの「謎」に挑む

選: 杉島靖乃
ミステリーの基本がつまった入門書
『虹果て村の秘密』

夏休みに遊びにきた虹果て村で、言い伝え通りの殺人事件が発生。土砂崩れのため犯人とともに村に閉じ込められてしまった少年少女のにわか探偵コンビが事件の謎に挑みます。犯罪社会学者・火村英生が登場する人気シリーズなどで知られる著者が若い読者に向けて書いたもので、密室やアリバイ、ダイイング・メッセージといったお約束的な要素が一通り盛り込まれた作品になっています。「本格ミステリー」というジャンルの手引き、入門書としておすすめの一冊。
選:Z会指導部
本好きな人はもちろん、読書が苦手な人にも
『ビブリア古書堂の事件手帖』<第1シリーズ全7巻><第2シリーズ第2巻(以下続刊)>

極度に本好きな古書店店主の篠川栞子と、本がほとんど読めない店員の五浦大輔が、古書にまつわる謎を解き明かすビブリオミステリーです。この二人のやりとりの中で、文学などにまつわる深い知識もわかりやすく解説されるため、読書の楽しみがまだよくわからない読者でも十分に楽しめます。現在も続刊中ですが、これまでの累計ですでに700万部以上を売り上げていることからも、愛読者は「本好き」の人に限らないことがわかります。

選:杉島靖乃
ここは「自分の生まれなかった世界」?
『ボトルネック』

いわゆる「イヤミス(読後イヤな気持ちになるミステリー)」に属する佳作。恋人ノゾミの死を悼んで東尋坊を訪れたリョウは、崖から転落したと思ったら、なぜか見慣れた金沢の街に。そこは、生まれることなく亡くなったはずの姉が、自分の代わりに生きている並行世界でした。リョウは姉とともにノゾミの死の真相に迫っていくのですが…。姉弟の対比を通じてリョウ自身の抱える問題も浮かび上がり、ラストの苦さが胸に突き刺さります。人の生き様について深く考えさせられる作品です。
選:Z会指導部
ミステリーを超えた人間ドラマ
『楽園のカンヴァス』

実在のフランスの画家アンリ・ルソーをめぐる、虚実皮膜の物語です。殺人事件は起きませんし、名探偵も登場しませんが、この作品は一流のミステリー小説です。絵画の見方・楽しみ方はもちろん、一般人には縁のない美術展やオークションの舞台裏についても知ることができ、美術に関心のない人でも次の展開が気になってページを繰る手が止まらないでしょう。読了後のあなたは、きっとルソーや現代芸術のことをもっと知りたくなっているはずです。

選:杉島靖乃
重厚感あふれる歴史長編
『薔薇の名前』<上・下>

14世紀初頭、対立する教皇派と皇帝派の調停のため北イタリアの僧院に送り込まれた修道士ウィリアムと見習いアドソの師弟二人は、「ヨハネの黙示録」に従って起こる奇怪な連続殺人事件に巻き込まれてしまいます。殺人の目的は何なのか? そして鍵を握る1冊の本とは? 深く理解するためには西洋史やキリスト教に関する知識が必要とされる難解で重厚な作品なのですが、ミステリーとしても第一級のおもしろさ。1980年に発表されると世界的ベストセラーとなり、映画にもなりました。
選:Z会指導部
ミステリーファンなら読んでおきたい記念碑的一冊
『緋色の研究』

シャーロック・ホームズを主人公とする最初の作品『緋色の研究』が発表されたのは、トーマス・エジソンが白熱灯の特許を取得した1887明治20)年、世界中がまだ電灯の明るさも知らずに生活していた時代です。当然、電話も自動車も登場しませんが、この作品は今の読者が読んでも十分におもしろく、古典として後世に残る作品の条件とは何かについて考えさせられます。多くの翻訳がありますが、みなさんには読みやすく新訳された光文社文庫版をおすすめします。