Z3書店では毎号、テーマに沿った本をご紹介していきます。読みやすさに応じて3つのレベルでご紹介するので、読書に苦手意識がある人も、“本の虫”だと言う人も、ぜひ読んでみてください!
今回は、社会問題について扱った6つの作品をご紹介します。
Z3書店
“社会問題”を読む

選: 杉島靖乃
水は“あたりまえ”にあるもの?
『100年後の水を守る ~ 水ジャーナリストの20年~』

危険とわかっていても、あえて有毒な水を飲んで暮らすしかない人たち。取材で訪れたバングラデシュでそんな厳しい現実を目の当たりにした著者は、水問題について広く調べるようになります。水不足や水質の汚染から気候変動との関連まで、水問題は多岐にわたり、国や地域によっても事情はさまざま。身近に川や海があり、蛇口をひねればいつでも安全な水が手に入る日本ではいま一つ実感しにくいかもしれませんが、「水」は世界の未来を左右する重大な問題の一つなのです。
選:Z会指導部
ほんの少し前に日本であったこと
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

この本が単行本として出てベストセラーになったのは10年以上前だから、この本を知っている中高生は少ないかもしれない。にもかかわらず、著者名を見て「あれ?」と思った人は、社会的関心が高い。日本学術会議問題で名前を耳にしたことはないだろうか。本書は、2007年に神奈川県の中高一貫校で行われた5日間の講義を元に構成されている。講義を受けている気分で読むことができるから、著者の質問に自分で答えながら読んでみよう。参考文献の紹介もあり、この本が日本の近現代史をより深く学んでいくための起点となるだろう。

選:杉島靖乃
自分だったら…を考えてみたい
『「カルト」はすぐ隣に オウムに引き寄せられた若者たち』

1995年、東京で起きた凶悪な無差別テロ、地下鉄サリン事件。その実行犯の多くは、オウム真理教に入信していた高学歴で真面目な若者たちでした。以前から教団を追っていた著者が、彼らが一連の事件の実行犯になってしまうまでの過程を通じて、カルト集団の特徴を明らかにしたのが本書です。社会や自分の将来に不安を抱いているとき、私たちはたやすくカルトの「教義」に取り込まれてしまいます。いつでも広い視野を保ち続けることができるように、過去の悲劇から学ぶべきでしょう。
選:Z会指導部
大学入試を控える今こそ考えよう
『大学改革の迷走』

「大学改革」の影響を最も強く被るのが、君たちだ。とはいえ、「大学改革」がなぜ今、どういった目的で行われているのかを理解している人がどれくらいいるだろう。この本を読むと、ひょっとしたら、その「迷走」ぶりに「何をやっているんだ」とあきれるかもしれない。そして、今後の進路について、思うこともあるかもしれない。だが、大学で真剣に学問・研究をする君たちには、“自分たちの学び”に対しても、大人たちのさまざまな考え方があることを知っておいてもらいたい。

選:杉島靖乃
「多様性とは何か」を深める
『LGBTを読みとく ―クィア・スタディーズ入門』

LGBTという言葉は最近、よく見聞きするようになりましたよね。でも、正確に何を指しているのかわかりますか?本書では同性愛やトランスジェンダーなど性の多様なあり方が整理されていて、一読するとLGBTに関する自分の理解は不十分だったことに気づかされるでしょう。「私は偏見をもたない」となんとなく思っているだけでは足りません。性的少数者について正しい知識をもつことは、あなたが無自覚に周囲の人たちを傷つけたりしないためにも重要なことなのです。
選:Z会指導部
人はこうやって考えを深めてきた
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

《人は「生まれながらに」できるだけ多くの貨幣を得ようと願うものではなくて、むしろ簡素に生活する、つまり、習慣としてきた生活をつづけ、それに必要なものを手に入れることだけを願うにすぎない。》(p65)―こうした資本主義以前の伝統的な考え方を転換させ、人々を資本主義に合致するようなメンタリティに変えたのが、プロテスタンティズムであった、というのがヴェーバーの見立てである。一見、相反するようにも思われるものが、実は密接に関連していたという論証は、ミステリを読んでいるようなおもしろさがある。
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