Z3書店

ファンタジーの世界に 遊ぶ

Z3書店では毎号、テーマに沿った本をご紹介していきます。読みやすさに応じて3つのレベルでご紹介するので、読書に苦手意識がある人も、“本の虫”だと言う人も、ぜひ読んでみてください!
今回は、計6冊の「ファンタジー」作品をご紹介します。

選: 杉島靖乃

古代日本を舞台にしたスリル満点のストーリー

『鬼の橋』

伊藤遊 作 太田大八 画  福音館書店 刊

自らの不注意で妹を失い、悔恨の日々を送っていた貴族の少年は、ある日、妹の亡くなった古井戸から(めい)()の橋へと迷い込んでしまいます。死してなお鬼から人々を守る将軍、橋に執着する少女、人間として生きたいと願う鬼…。彼らとの交流をつうじて少しずつ成長していく主人公の姿が丁寧に描かれており、誰もが彼の心に寄り添いながら読めるのではないでしょうか。この少年は百人一首の歌でも知られる平安時代の文人・小野(おのの)(たかむら)。彼にまつわる伝説から生まれた小説です。

選: Z会指導部

ユーモアいっぱいの“ 涼宮ワールド” へようこそ

『涼宮ハルヒの直観』

谷川流 著 いとうのいぢ イラスト
KADOKAWA( 角川スニーカー文庫)

前作の『涼宮ハルヒの(きょう)(がく)』から9年半。ということは、かつて中高生を夢中にさせた涼宮ハルヒシリーズを知らない人も多いのでは?今回の作品は謎解きミステリーといってよい内容でファンタジー要素は薄いのですが、そんな長い時間が流れているにもかかわらず、ハルヒたちSOS団は高校生のまま相変わらず楽しそうに活動しています。それが最大のファンタジーかもしれません。シリーズの最初から読めば、きっとかつての中高生のように楽しめるはずです。

選: 杉島靖乃

ファンタジーな設定とリアルな中高生の心情が混じりあう

『かがみの孤城』

辻村深月 著 ポプラ社

鏡の世界の城へ迷い込み、狼面の少女・オオカミさまに迎えられた7人の中学生。主人公の安西こころをはじめ、彼らはなぜか不登校の子ばかり。この城で「願いの鍵」探しをすることになった7人の間に、次第にきずなが生まれていくのですが…。こころ達はなぜここに集められたのか? オオカミさまはいったい何者なのか? 散りばめられていた無数の謎が明かされ、一つにつながる物語の終盤、あなたの胸は感動でいっぱいになっているでしょう。

選: Z会指導部

ここではない〈ドコカ〉で生きる

『天国からはじまる物語』

ガブリエル・ゼヴィン 著 堀川志野舞 訳 理論社

ほとんどの人は死を怖れますが、それは死がどのようなものかわからないからだと考えられます。大昔から人類が、死後の世界についての物語を作り、語り継いできたのは、少しでもその恐怖をやわらげるためだったとも言えます。この作品も死後の世界を描いた物語の一つで、そこでは死んだときの年齢から若返っていき、生まれたときまでさかのぼると、またこの世に戻ってきます。この物語を読むことで、死に対する感じ方が変わる人がきっといるはずです。

選: 杉島靖乃

誰もが認めるファンタジーの王道

『新版 指輪物語 旅の仲間』上・下

J ・R ・R ・トールキン 著  瀬田貞二・田中明子 訳 評論社

邪悪な力を秘めた(めい)(おう)の指輪をめぐって、ホビット族のフロドとその仲間たちが闇の勢力と繰り広げる闘いを描いた長編ファンタジー。物語の冒頭では種族の紹介やフロドの養父の話が続き、なかなか冒険の旅が始まらないことにじれてしまう人もいるかもしれません。でも、読み進めていけば(せい)()に構成された壮大な世界に魅了され、ページを繰る手が止まらなくなります。ファンタジー史上に(さん)(ぜん)と輝く大作に、ぜひ挑戦してみてください!

選: Z会指導部

「異能者」たちが生きる世界とは

『光の帝国 常野物語』

恩田陸 著 集英社文庫

『光の帝国』は連作短編集で、「常野物語」シリーズの第一作。常人を超えた能力を備えているために迫害されてしまう常野の人々は、目立たないようにひっそりと、穏やかに生きていますが、それでもさまざまな事件が起きてしまいます。そうした状況を他人事とは思えないみなさんもいるでしょう。自分とは明らかに異なる他者との共存はなぜ難しいのか、他者を認められる寛容な社会は必要ではないのか、といったことについて考えさせられます。