リーダーのための
コミュニケーションスタディ
相手によりそうコミュニケーション
シーン③ 公園からの帰り道

えーとね、ほかの人がイライラしているのに巻き込まれないために、自分が気持ちよくやれることを自分からやっていこう! って決めたんだ。それまでは私も父さんたちとぶつかっていたよ。


ふーん・・・。
実はね、前に、夜中、父さんと母さんがこの状況がいつまで続くかなって心配しながら話していたの。それを聞いて、これは自分ができることで協力しなくちゃって考えたんだ。協力しようとやってみたら、反抗するよりもずっと自分も楽になったんだよ。


そうなんだ。
今回のポイント
ガクは、マリの思いや考えをしっかりと理解したようでした。この後、ガクは、少しずつ風呂掃除をしたり、宿題をやったりして、両親を怒らせることが減っていきました。夏休みが終わるころには、ガクの言動で両親がイライラすることがほとんどなくなり、不思議と家族全体も落ち着いて穏やかになっていきました。
マリとの会話から、なぜガクは行動を変えることができたのでしょうか。マリは、次のことに気をつけてガクと話をしています。
- 夜中に両親の話を聞いたことなども含めて、自分の思いや行動の変化の経緯を正直に話す
- ガクに対し、「ガクもこうすべきだ」「これからはガクも行動を変えなさい」という言い方は一切しない
- 「自分の努力していることと、その理由」を簡潔にシンプルに話す
このようにマリの話には押しつけがなく、強制もありません。そして何よりマリの話に説得力があるのは、自分の考えや価値観を、黙々と実践していることです。世間の状況に巻き込まれず、巻き込まれがちな身近な大人たちにも影響されず、マリ自身が大切にしたい生活の仕方を実践し続けているのを見ているから、ガクも素直に話を聞けました。
伝えたかった内容は相手に影響を与えないかもしれません。相手が自分が話した考え方を取るのか取らないのかも、相手に任せていくことが大事なポイントです。
世界の情勢が不透明で、先が見えづらい状況ですが、こんな時こそ、家族が互いに思いやりをもって理解しあい、助け合っていきたいものですね。こんな今だからこそ、人間関係を悪化させず、よりよくするために、言葉の使い方を吟味していくことがとても必要だと思います。

文:今井 真理子
(暮らしとコミュニケーション研究所代表・親業訓練協会シニアインストラクター)
http://www.happy-communications.com
参考図書『自分らしく生きるための人間関係講座』(大和書房)
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