学校で行われるオンライン授業以外にも、Z会をはじめ、さまざまな場所でICTを使った学びがスタートしています。あなたは、このICTを使った学びに興味津々ですか? それとも、どう始めたらいいものか、とまどっているでしょうか?
これまでにZ会で行われたオンライン講座などで、多くの会員の方と一緒に学習を進めた経験をもつZ会のスタッフが、学習におけるICTとのつきあい方について、アドバイスします。
学習する力を高めるICTの使い方
学校で行われるオンライン授業以外にも、Z会をはじめ、さまざまな場所でICTを使った学びがスタートしています。あなたは、このICTを使った学びに興味津々ですか? それとも、どう始めたらいいものか、とまどっているでしょうか?
これまでにZ会で行われたオンライン講座などで、多くの会員の方と一緒に学習を進めた経験をもつZ会のスタッフが、学習におけるICTとのつきあい方について、アドバイスします。
ICTの学習をうまく始められる人とは?
私は、ここ数年Z会の小学生向けコースの「プログラミング講座」や、中学生向けコースの「Asteria総合探究講座」など、デジタルデバイスを用いて学習を進める講座に携わってきました。
こうした講座で学習を始める際に、「初めてパソコンやiPadといったデジタルデバイスを手にした」という人も多いと思います。そういう人の中には、「タブレットを壊したらどうしよう」「どこを触ればよいのか解らない」など「デジタルデバイスをうまく扱うことができるかどうか」ということに意識が向いてしまい、場合によっては学習を始める前に苦戦してしまう人もいます。ICTを用いた学習をうまく始めることができるか、やはり人によって差があるようだなと感じています。これは受講生本人だけではなく、保護者の方も同じです。
そもそも、私たちの身の回りにはデジタル機器があふれています。小中学生のスマートフォン所有率も年々高くなっていますし、保護者の方が自宅でパソコンやタブレットを日常的に使用しているご家庭も珍しくないでしょう。家の中を見渡せば、テレビ、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機とコンピュータで制御されている機器は多く、それこそ体温計や計算機、ちょっとしたおもちゃにだってコンピュータが搭載されています。いまの小中学生は物心ついた頃からデジタル機器に囲まれ、コンピュータとともに暮らしているのです。
そのような生活の中で「デジタル機器の使い方」をわざわざ学ぶような小中学生はあまりいないと思います。「コンピュータを使うこと」「デジタルデバイスを扱うこと」は要するにどれだけ普段からコンピュータやデジタルデバイスと向き合っているかという経験の差に過ぎない面もあります。そしてこの経験は何も難しいものではなく、それこそ「つべこべ言わずにやってみろ」の世界だと言えます。タブレットで動画を見たり、ゲームをやったりと、好きなことから始めればあっという間に慣れるでしょう。
それでもタブレット一つ扱うときに、たとえば「この操作をしたから次の画面に行くんだな」とか「このアプリも閉じるときはさっきのアプリと同じ操作をするんだな」とか、裏で動く仕組みに興味をもつようなタイプの人は、ICT機器の扱いを抵抗なくすんなりと行っていけるような気がします。ほかにもゲームで言えば「この条件を満たせばこのステージをクリアできる」「ここでこう操作したらバグが発生して先に進めなくなる」といったことをすぐに理解できるタイプの人は、デジタルデバイスを用いた学習を始める際にも苦労しないのではないでしょうか。いずれにせよこれから学習を始める人はあまり気にする必要はありません。とにかく始めてみればよいのです。
「AIを使った学習」だから大丈夫?
Z会でも、タブレットを使った学習や、ICT機器を使って映像授業を見るというような講座が増えてきました。スマートフォンのアプリストアをのぞいてみれば、Z会のもの以外にもさまざまな学習系のアプリがあふれています。これまでは学習する方法といえば、読み書きは紙の問題集やノートとシャープペンシルに消しゴムといったアナログツール、英語のリスニングはCDなどを用いるだけでした。今ではデジタル機器も増え、教材も紙のテキストだけでなく動画やアプリ、自宅で組み立てたり実験したりできるなどさまざまなツールがあります。
それだけに、どのツールを選んで学習するのか、を考えることが難しくなっているかもしれません。たとえば、「AIを搭載した学習アプリ」はどうでしょう。Z会の中学生向けコースには、タブレットで学習に取り組むと、それまでに取り組んだ問題での正解・不正解から学習の理解度を判断し、次に取り組む課題をAIが選択し、出題する機能が搭載されています。次に出題される問題が人によって変わるというのは、紙の問題集ではまずできないことですね。
またスマートフォンやタブレットで学習するアプリの中には、一度間違えた問題を日を置いて何度も何度も繰り返し出題するタイプの問題もあります。これも、人間の記憶力の仕組みからAIが記憶力を維持するために適切な日にちを割り出して、ちょうどいいタイミングで出題してくれるようになっています。
問題集や参考書に「自分に合う・合わない」があるように、AIが判断してくれるから、すべてがすばらしく勉強ができるしくみになっているとは限りません。得意な英語はZ会のアプリのような、自分の理解度に合わせた出題をしてくれる勉強法の方が力を伸ばせるけれど、苦手な数学は、何度も同じ問題を繰り返したほうがよさそうだ…。そういうこともあるでしょう。たくさんある学習ツールから、自分の学習のスタイルに合った学びを選択できるか、が大切なのです。もちろん、自分に合うツールを選択したら、そのツールを使った学習を続けていくことも大切です。
「ICTを使った学習」で伸ばす力とは?
ICTやオンラインを用いた学習は便利なことも多いですが、ツールはツールでしかないことも理解しておきましょう。参考書やZ会の教材を何も考えずに取り組むだけで学びが身につくわけではありません。むしろ自分に合ったツールを見つけ、自分に合った使い方を続ける、目的・目標や計画性をきちんともち、その内容や成果をしっかり振り返る、言ってしまえばいつの時代でも「当然に必要なこと」を意識して初めて学力は身につきます。PCやタブレットを使うことで、今までとは違うかたちで学ぶことはできるようになりましたし、これらから得ることのできるメリットはとても大きなものです。けれども、その使い方や振り返りなど「自分で判断すること」「自分で考えること」を怠ってしまえば、こうしたツールもその真価を発揮できないのです。ある意味、「自分自身をよく理解する力」も伸ばしていく必要があるかもしれません。
ICT機器を手にしたのなら、まずは使ってみましょう。使ってみなければ、どのように使っていこうかというアイデアも生まれませんし、自分に合った使い方もわかりません(ただし、アプリをダウンロードしたり、講座を受講したりするにはお金のかかることもありますから、その学習ツールを試してもよいか、お家の人と必ず相談してください)。
ICTを使って学んでみると、自分の学びが、家や学校といった近い世界から、より広い世界へ広がっていくことも実感できるはずです。自分の学びの世界を広げる意味でも、ICTを使った学びを経験していただきたいと思います。
亀池威一朗
Z会指導部にて、小学生向け~高校生向けのさまざまなICT教材の制作に関わったのち、一般社団法人ICT CONNECT 21に出向。情報通信技術を活用して教育をよりよくしていくための、さまざまな活動に従事している。