みんなの「学び実践力」大調査

2020年は、みなさんにとってもさまざまな学びのかたちを経験する1年となりました。最初はとまどった人もいるかもしれませんが、今後はここで生まれた新しい学びの姿が、スタンダードとなっていく可能性もあります。

これまでの学びのかたちと新しい学びの方法と、この1年みなさんがどのように向き合ってきたのか、調査しました。

アンケートは、「Z会MyPage」上で、2021年1月~2月に行いました。(回答数:484名)

学習とICTとの関係 みんなどのくらい使っている?

多くの会員の方が「タブレット」を学習で利用することを経験済みです。Z会でも、タブレットを使うコースで学習している…という人は多いので、このような結果となったのかもしれませんね。

その一方で、PCやスマートフォンを学習に利用している人はまだ少ないようです。スキマ時間にちょこちょこ気軽に使うというよりも、時間のあるときにじっくり学習に使いたい、という人が多いということでしょうか。

アンケートに答えていただいた方の38%が「学校でも一人一台の端末を使い学習している」という結果もあるように、学習にICTを使うことは、だいぶ日常的な姿となっているのを感じます。

また、山内先生のお話にもあったように、PCやタブレットは、これからみなさんがあたりまえに使っていく「道具」です。そこで、大学生や社会人が現在よく使う機能を、中高生のみなさんが、現在学習にどの程度使っているのかを聞いたのが、以下の表です。

「プレゼンテーションソフト」は、65%以上の方が使っています。「調べ学習のときに使った」という人も多いのではないでしょうか。また、同じくらいの方がYouTubeを学習に使用したことがあるのもわかります。こちらは、「一人で使用している」という率が高いので、家での学習中に利用している人が多そうです。

オンライン学習、やってみてどうだった?

一方、学校でのICTを使った学びはどうでしょう。緊急事態宣言時に休校になり、学校の授業をオンラインで体験したという人はどの程度いるのか聞いてみたのが、以下の表です。結果は、学校のオンライン授業を体験したZ会員は、3割弱ということで、そこまで高いわけではなさそうです。

では、実際にオンライン授業を体験した人たちがどのように感じたかというと、その賛否はちょうど半々に分かれるようです。

【オンライン授業はよかった!】
  • 「動画配信だったので、気になったところを見返すことができた」(静岡県・高3・こっこ)
  • 「生徒が無駄な話をしないし、誰がどんな質問をしているかわかりやすい」(岩手県・高1・suu)
  • 「何度も繰り返し授業が見られたり、自分のペースで学習が進められたことがよかったと思う」(東京都・中2・CHOCOLATE)

普段学校の授業を受けるなかでは行うことのできない、「繰り返し見る」「自分のペースで進める」「質問がしやすい」といったことが、好意的に捉えられています。

一方、「あまりよくなかった」という方は、オンラインの環境の悪さや、先生のICTスキルの不足を理由に上げた人が多いように感じました。

【オンライン授業はあまりよくなかった…】
  • 「画像や音声が悪く、ほかの生徒との意見交流がしにくかったから」(神奈川県・中2・あやか)
  • 「美術や、体育など、実技だと、あまりよくわからなかったり、できるものが少なくなってしまったため」(千葉県・中2・ちぃちゃん)
  • 「オンラインに適応できない先生の授業は、とてもクオリティが低い」(岐阜県・大1・ワカメご飯の孫)

ICTで学習はこれからどうなる?

では、これまでのさまざまな経験を経て、みなさんは、ICTを使った学習についてどのように思っているのでしょうか。以下の結果のように、IT機器を使った学習は、「やりやすい」と多くの人が思っています。

【ICTを使った学習はやりやすい!】
  • 「曖昧な知識を、いちいち教科書やノートをさかのぼることなく確認できる」(石川県・高1・シャケ)
  • 「パソコンやタブレットを1台用意するだけで、すぐに勉強を始めることができ、効率よく学習できると感じます」(東京都・中2・とかる)

といった、利便性を挙げる人が多かった一方、よくない点を上げた人たちは、

【ICTを使った学習はやりやすくない…】
  • 「ついつい遊んでしまう」(東京都・中2・GW_時の魔術師)
  • 「パソコンやタブレットで勉強すると、長時間勉強した時、目が疲れたり肩が凝ってしまったりするのはよくないと思います」(東京都・中2・いちごの王子様)

のように、勉強以外のこともできてしまう点や、身体面への影響を挙げた意見が多く見られました。

では、今後、私たちの学習にはICTを取り入れていくべきなのでしょうか。

以下の結果に見られるように、8割近い人たちが、学習にICTを取り入れるべきだと考えています。なかでも、Z会や塾などの学校以外の学びの場では、より積極的に取り入れるべきだと考える人が多いようですね。上記の結果からもICTを使った学習を好意的に捉えている人が多いわけですので、ICTを使った学びに多くの人が期待しているというのは、ある意味当然だと言えますね。

【今後の学習にはICTを取り入れるべき!】
  • 「便利だし、普通の勉強より、低いハードルで始められ、わからないことをわからないままにしない。また、同じ学校の人だけでなく、ほかの学校の人にも目が向けられて本当の意味で同じレベルの人と切磋琢磨できる」(千葉県・高1・ぷーさん)
  • 「現在の情勢では、オンライン授業や授業のオンデマンド配信など、多種多様な授業のやり方が認められるべきだと思う。また、地方などあまり教育施設が充実していない地域でも、都会の最先端のハイレベルな授業を受けることができるのは良いことだと思う」(千葉県・高2・あおりんご)
  • 「社会人でもテレワークが増えてきていて、これからもっとパソコンを使って会議などをすることになると思うので、その予習ということで、取り入れたほうがいいと思う」(兵庫県・中3・拓ちゃん)
【今後の学習にはICTを取り入れるべきではない…】
  • 「学校ではコミニュケーションとともに座学のしかたを学ぶ場だと思っているので、ICTによってコミニュケーションが疎かになる可能性の方が大きいのなら取り入れる必要はないと思う」(茨城県・中3・こころ)
  • 「受験は現時点では紙ベースでの試験なので、紙の教材を使用するのは大切だが、ICTのわからないところを診断してくれる機能などは非常に有効なので、併用というかたちがいいと思う」(京都府・中3・向上心)

ICTを使用することで、地域格差が埋まることや、今後主流となる道具であるのならば、早いうちになれるべき、という意見が「取り入れるべき」という人からは多く聞かれ、「取り入れるべきではない」という人からは、コミュニケーションの機会が失われることに対する不安が多く上げられました。

これらを踏まえると、今後の「学校での学習」は、ICTを駆使してオンラインで学ぶことをみなさんが望むのかというと、そうでもないようです。

【学校は対面がいい!】
  • 「学校に行って勉強するのは、学力の向上のためでもあるけど、人間関係の築き方や人として成長するために大切なことを学ぶためであると思う」(京都府・中3・みみ)
  • 「周りに友達がいる環境で教室で受けた方が、より集中して授業に参加できる」(愛知県・中3・クッキー)
【学校はオンラインがいい!】
  • 「自分のペースでできるし、台風や大雪などの交通機関が乱れて登下校できなくなるという心配をする必要がない。また、人間関係などを気にせずにいられるほか、感染症にかかるリスクを下げられ、場所を気にせずに授業を受けられる」(新潟県・高1・コーンスープ)
  • 「忘れ物がなくなるし、無駄話ができなくなる。黒板までの距離が短くなり、文字が見やすい」(埼玉県・中2・にー^_^)

「学校へ行って学ぶ」というのは、ただ単に「知識を得る」という学び以外にもさまざまな学びがあり、みなさん実際にその存在を感じている、ということがわかりますね。

緊急事態宣言時の休校は私達の学びをどう変えた?

初めての緊急事態宣言により、突然の休校というのは、ちょうど1年前のことでした。急に始まった自宅学習でしたが、下の結果をみると、多くの人がうまく自宅学習に取り組めた、と言えるようです。

【勉強時間が増えた!】
  • 「家に居ると通学時間などがないので、家の方が勉強時間が長くなる」(広島県・中2・おはようでやんす)
  • 「習い事がなくなり、暇な時間が増えた」(神奈川県・中2・サナナ)
  • 「緊急事態宣言だとみんなで受ける授業も無くて、それだと自分の今の学力が心配になり思い切って勉強したから増えたと思う」(大阪府・中2・長距離ランナー♀)
【勉強時間は減った…】
  • 「友達に会わなかったので、がんばっているのかサボっているのか全然わからず、気が抜けた」(愛知県・高1・なっちゃん)
  • 「遅寝遅起きになってしまった」(鳥取県・中3・かまぼこしかかたん。)
  • 「決まった時間がないから、つい誘惑に負けてしまった」(佐賀県・高1・ひつじのメー)

それまであった通学時間や塾や習い事の時間を勉強時間に当てはめることのできた人は、勉強時間が増えたのに対し、逆に勉強時間が減ったという人は、それらの急にできた時間に何をしていいのかわからなくなってしまったようです。

そして、勉強時間が増えた人が多かったことからも、休校明けのテストでは、よい結果につながった人も多いという結果でした。

【テストで実力が発揮できた勝因!】
  • 「規則正しく学習を進めていたから」(大阪府・中2・エース)
  • 「毎日その日の目標を立ててから勉強をしていた」(鹿児島県・高1・いちこ)
【テストで実力が発揮できなかった敗因…】
  • 「ダラダラしてしまい、勉強に集中できなかった」(愛知県・中3・もちうさぎ)
  • 「最初だったので、どこを勉強すればいいのかわからなかった」(神奈川県・中2・かにそばらーめんのぐ)

突然、勉強に使える時間が増えるという経験を、どのように切り替えることができたかで、その後の勉強に向かう姿勢にも影響を与えたようです。

休校中の学習が、その後の学習にどのように影響を与えたのかを聞いてみたところ、

  • 「約1カ月、毎日10時間以上は勉強するようにしていたので、長時間勉強に体が慣れました。以前ほど疲れないようになったので、体力面だけでなく、精神面でも、いい意味で余裕をもつことができるようになりました」(愛知県・高1・みずは)
  • 「学校で学べなくて、自分とほかの人との差がつきやすいと感じ、勉強に対して一生懸命になれたかなと思う」(愛知県・中3・スズ)
  • 「自分で計画を立てて、しっかり勉強できるようになった」(広島県・中2・ねぎ。

「長時間、自宅で学習することが習慣になった」という人のほか、学校での学習にも影響を与えた、と答えた人も多いです。

  • 「学校の授業をまじめに聞くようになった。毎日の勉強をおろそかにせず、常に目標や仲間、テストのことを意識して生活するようになった」(北海道・中3・ポッポ)
  • 「自粛期間中、もちろん友達とは連絡を取っていましたが、メールで取り合うほどではないちょっとした話をできるのでありがたみを感じました。また、そのような友達とのちょっとした会話で授業を受ける気になることができ、自粛期間中よりはるかにはかどりました」(東京都・中2・しろ)

みなさんの、アンケート結果を山内先生にもご覧いただきました。
先生からは、以下のコメントをいただいています。

山内祐平先生より

アンケート調査の多くの項目で、実態や意見が割れているのが印象的でした。

ICTを使えば学習が「自動的に」よくなるのではなく、人によって違うことがわかります。

ICTを学びにどう取り入れていければよいかについて、一人一人が自分なりのやり方を考えていくことが大事なのだと思います。

緊急事態宣言から1年が経ちましたが、みなさんの学習に向かう姿勢は変わっていませんか? 「どのような環境になっても学ぶことができる」という経験を、より積極的に勉強に向かうきっかけとした人も、何をすればいいのかとまどってしまった人も、このときの経験があるからこそ、今の勉強に向かう姿勢へとつなげていきたいですね。

学校での学びが再開された今、「自分の学びが最適なものになっているか」今一度、確認をしてみましょう。