リーダーのための
コミュニケーションスタディ
みんなの行動を引き出す コミュニケーション
教材係の仕事を前向きにとらえて活動を始めた4人ですが、班決めが終わった直後の自己紹介の場では、かなりぎくしゃくしていました。サエは、そのようなときに同じクラスになったリオに疎外感を抱かせないような工夫をしていました。その様子を見てみましょう。
シーン 班ごとの自己紹介

私ね、緑町に住んでるんだ。部活はバスケで、今年は県のベスト8に残りたいんだ。去年はもう少しっていうところで。

マホ!話、長いから。名前を最初に言いなよ。ホント、天然なんだから。私はナナ。

あっ!アタシ、マホ。よろしく。
私は田川サエです。あなたは?

秋山リオです。

秋山リオさんね。よろしくね。1年の時は何組だったの?

5組だよ。

5組ね。私たち3人は1組だったの。同じクラスで仲が良かったから、こうやって、ほら、にぎやかな状態で。秋山さん、話に入りにくいよね。


あ、ごめんね。秋山さん、部活、何?
入っていないの。


自由時間がいっぱいあっていいなあ。私のバスケ部は練習が厳しいから、自由時間が全然なくて。

でも、部活はやりがいもあるよね。

だよねー。ナナのチアダンス部は去年、地区大会で3位だったもんね。
部活は楽しいことも大変なことも両方あるってことね。ところで、この班の活動って1年間、いろいろなことを一緒にやることになるから、4人で楽しくやっていきたいな!秋山さんも言いたいことや、私たちに聞きたいことがあったら、どんどん話してね。私、4人で話し合えるのが大事だと思うんだ。

うん。ありがとう。じゃ、あの、田川さんは何部なの?

私、最初はテニス部だったんだけど、途中からコンピューターグラフィックがいろいろ作れるって聞いて、文芸部に転部したんだ。

ふーん。私もコンピューターグラフィックは結構好きなんだ。文芸部、おもしろい?

うん!先輩や卒業生もたまに来て、いろいろ教えてくれるから楽しいよ!見学に来ない?

うんっ!

ポイント
サエがさまざまな工夫をしながら話を進めたことで、どうやらリオも打ちとけることができたようです。

会話の中で相手の発言を確認することは、相手に興味をもっていることが伝わりお互いの距離感を縮めます。たとえば、自己紹介で名前を聞いたとき、サエのように「秋山リオさんね。」と確認すると、正確に相手の名前を知ることができるし、確認された側は受け取ってもらった安心感と、確認してくれた人への好感がもてるようになります。
また、もともと仲良しの2人がにぎやかに話すなか、サエが、リオに対して「話に入りにくいよね。」と声をかけたところに、リオへの配慮が感じられます。マホやナナに対しても、リオに疎外感を与えないよう注意を喚起することにもなったようです。
さらに、「4人で楽しく班活動をしたい」「話し合えることが大事」など、サエの思いもきちんと伝えていることも注目したい点です。
最初の出会いのときに、ちょっとした配慮があるのとないのとでは、4人の関係やグループの雰囲気・班活動そのものが大いに影響を受けることになります。誰もが安心していられるグループを作っていくには、こうした小さな一言を発する配慮が大切なようです。
グループに、こんな聞き上手で話し上手な人がいるとグループ全体のやる気があがり、人間関係も良好になっていきます。
コミュニケーション力をもっていることは大きな財産になります。相手の思いを考えた発言と、自分の気持ちをきちんと伝える自己表現の力を身につけたいですね。