2018年6月、文部科学省・経済産業省より相次いで未来の学びについての報告書・提言書が公開されました。(以下、それぞれのPDFへリンクしています。)
経済産業省・文部科学省と別の省庁が出した2つの文書ですが、未来の学びに関して共通する点が多く見られました。国内での研究・実践において成果を出している方からのアドバイスや、海外での実例なども踏まえてまとめられているものとなっています。特に経済産業省・文部科学省で共通する部分はこれからの学び方に大きな影響を与えると考えられますので、一覧にしてまとめてみました。簡潔にまとめたため、参考となる資料のページも掲載しています。詳細は一次資料をご覧ください。

    経産省 文科省
これからの社会は 不連続であり、現在の延長線ではない。 p.1 p.2
学習者は 学年依存ではなく多種多様に混ざり合っている。 p.11[7] p.12
教える人は 教員に限らない。 p.6(1) p.11
教師の役割は 変わり、新たな役割が加わる。 p.11[8] p.11
場所は 教室に限らない。 p.7(2) p.11
学習内容は STEAM教育に重点を置き、 p.9[4] p.14
基礎学力も重要。 p.10[6] p.10
文理分けはナンセンスで両方やる必要あり。 p.9[4] p.15
学び方は 一斉一律から脱却し、個別化し、 p.10[6] p.8
EdTechを活用することでエビデンスを取り、改善につなげる。 p.12[9] p.11
[  ]内の数字は資料内では丸付き数字。

1.これからの社会と必要な力

AIやIoTが発達する社会(Society5.0と呼んでいます)では、未来は予測がきわめて困難であり、急激な変化を避けることができない状況です。このような社会では「与えられた仕事をこなす」(経産省 p.1)のではなく、「異分野をつなげる力と新たな物事にチャレンジするアントレプレナーシップ」(文科省 p.6)が必要です。
このアントレプレナーシップという語と同様の意味で、経産省は「50センチ革命×越境×試行錯誤」(経産省 p.3 1-1(1))というワードを使っています。一部のエリートだけに必要な力なのではなく、あらゆる人に必要な力だと説明されており、こういった力が「自由を相互承認できる市民社会」(経産省 p.3 1-1(2))を作る必要条件だと言っています。

2.何を学ぶ?

AIの発達などを元に議論を進めていると「知識はいらない」という議論になりがちですが、知識の習得や基本的な計算などの基礎学力を身につけなくてもよいとは、文科省・経産省どちらの資料にも記載されていません。基礎学力はもちろん重要ですが、「STEAM教育」も必要だと書かれています。STEAM教育とはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)を総合的に学習するという考え方です。さらに、経産省の資料には「STEAMの”A”が「デザイン・芸術」だけではなく、広く「人文・社会」として捉えられ」(経産省 p.9)と書いており、「STEAM教育」と言っても、理系分野だけを学べばよいというわけではなく、文理関係なく学ぶことが大切だと書かれています。文科省も今後の方向性の統括の1つとして「文理分断からの脱却」(文科省 p.20)と記載しており、文系の人にも理科系のことを学んでもらい、理系の人にも文系のことを学んでもらうという意図を読み取ることができます。文系・理系両方の知識を総動員し、世の中の課題を解決するプログラムに参加することができます。こういった世の中の課題を見つける際に「地元の地域を学ぶこともますます重要」(文科省 p.12)と文科省の資料には書かれています。地元の地域には課題がたくさんあり、その課題を主体的に解決するというプログラムも増えていくかもしれません。

3.どう学ぶ?

STEAMも大事、基礎学力も大事と言われても、学ぶ時間を捻出できなければ机上の空論になってしまいます。それを解決するものがEdTechだと両資料にかかれています。アダプティブ・ラーニングを使うと自分の理解度にあった問題が出題され、効率的に学ぶことができます。一斉授業だと「簡単すぎて聞く意味がない」「難しすぎて眠くなる」ということが少なからずあると思いますが、個別に学習を進めることができればこういった問題が解消できます。また、EdTechを活用すると学習履歴を残すことができます。個人の履歴からより効果的な学びを実現することも可能ですし、統計的に分析することにより、今後より効果的な学びを設計することも可能になります。今まで優秀な教師の「職人技」として行われていたものをより多くの人に提供することができます。

4.学習環境は?

STEAM学習や課題解決型のプログラムが増え、教科学習にもアダプティブ・ラーニングのようなEdTechが広まることで、学習環境も大きく変わるはずです。たとえば、教師が全てのことを知っている必要がなくなり、一方的に知識を伝える役割は減り、「生徒の探究活動に『思考の補助線』を入れる役割」(経産省 p.18)が必要になると考えられ、教師の役割が変わります。また、教科学習を個別に行うのであれば、同じ学年の生徒が同じ時間に同じ教室に集まる必要もありません。課題解決のプログラムを行うのも教室ではなく、専門の施設等になるかもしれませんし、教える人も学校の教師ではなくその道の専門家になるかもしれません。

5.これからの学びをZ会Asteriaで

実は上記のような学びを既にZ会Asteriaでは2017年から実現しています。

アダプティブ・ラーニングやオンライン英会話を使えば、効率的に学習を進めることができ、余った時間で探究的な学びを行うことができます。逆に探究的な学びを行うことで、そこで必要な知識を身につけたいという「学ぶ欲求」を持つようになります。自分がやりたいことを見つけたい、これからの社会で活躍したいという方は是非、こういった新しい学びに取り組んでみてください。

6.おまけ〜2つの文書に出てくる語彙の登場回数比較〜

経産 文科 合計
EdTech 97 25 122
AI 23 61 84
社会 39 41 80
課題 38 14 52
データ 12 33 45
STEAM 34 8 42
STEM 40 0 40
企業 24 14 38
地域 8 28 36
教室 33 2 35
人材 6 29 35
学習者 33 1 34
民間教育 32 0 32
探究 31 0 31
個別最適化 16 13 29
イノベーション 27 0 27
日本 23 3 26
世界 18 8 26
教科 19 6 25
社会課題 22 1 23
時間 19 3 22
知識 12 10 22
協働 10 12 22
多様 9 13 22
試行錯誤 21 0 21
産業界 17 4 21
ICT 7 13 20
ビッグデータ 2 18 20

経済産業省・文部科学省の2つの文章に出てくる単語の中で合計20回以上登場しているものを抽出してみました。上記の表の中で色つきの箇所が両方とも10回以上出てきている単語です。「学校」「生徒」など一般的なものは省略していますが、「時間」「教室」など今回の文書において特徴的なものはあえて残してあります。また、「社会」・「課題」と「社会課題」などのように重複カウントされているものもあることをご了承ください。

最頻出の「EdTech」をはじめ、「AI」「ビッグデータ」などテクノロジーを活用するという視点が目立ちます。紙と鉛筆だけで勉強するのではなく、タブレットなどを活用することで現状の課題を解決しようという姿勢が見られます。

また前述のように「社会」という語も目立ちました。「社会の変化」に対応するための改革、「社会課題」を解決する力といった使われ方が多く見受けられました。経済産業省も文部科学省も、閉ざされた「学校」「教育」という中だけの話ではなく、社会とシームレスにつながる学びを意識していることが見受けられます。
そのことは「地域」「企業」という語が上位に入っていることからもわかります。地域や企業と連携をしながら学びを推進するイメージですね。

タブレットなどを活用することにより、AIなどでデータを分析し、個別最適化を図った学習ができるようになります。教科学習を個別最適化することができれば、社会課題を地域や企業など、学校外の多様な人と連携しながら解決し、学んでいくという未来の教室の姿が想像できるのではないでしょうか。

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公開日:2018/06/25