◆センター試験と共通テストの違いとは?

共通テストではこれまでのセンター試験と異なり、
「記述式の問題が出る」
「英語は4技能について問われる」
といった変更点が注目されがちですが、ほかにも注目すべき点はあるのでしょうか。

共通テストを作成する大学入試センターは、2020年度からの共通テスト実施に先駆けて、2018年度は、約1,800校の協力校から約80,000人(いずれも延べ数)に対して施行調査(プレテスト)を行い、問題作成の方針等を決定していくために必要となるデータの分析、検証を行っています。
2020年度から行われる共通テストがどのようなものになるか、試行調査の問題からある程度推測することができそうです。
たとえば、「政治・経済」では次のような問題が試行調査で出題されました。
【第4問 問7】

冬美さんは、オープンキャンパスの模擬授業で 2015 年の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の 17 個の目標の中に、「貧困をなくそう」が掲げられていることを知った。次の会話文は、この「貧困をなくそう」という目標に関して冬美さんが父親と交わしたものである。
(中略)

冬美:民間による援助とともに、政府開発援助(ODA)も重要ね。それにしても、どうして先進国は発展途上国へ援助しなければならないの。

父 :それは、「情けは人の為ならず」だからじゃないかな。つまり、「人に親切にすれば、その人のためになるだけでなく、やがてはよい報いとなって自分にもどってくる」ということだよ。
無償資金協力や技術協力によって発展途上国を支援しておくことは、めぐりめぐって日本のためになるということだね。

冬美:えー、そういう意味だったの。私は、「人に情けをかけて助けてやると、その人は親切心に甘えて自立できなくなってしまうから、結局その人のためにならない」という意味だと思っていた。

父 :ちゃんと国語辞典で調べなさい。

冬美:でも、日本の ODA に関連する資料を見ると、私の理解もまちがっていないような気がするな。
今日のオープンキャンパスで、担当の先生は、日本の ODA の重要な基本方針の一つに、「X」があると言っていたの。先生は、「Y」の資料が、この基本方針と関連すると説明していたわ。

父 :確かに、関連があるのかもしれないな。

「X」に当てはまる基本方針
a 人間の安全保障の推進
b 非軍事的協力による世界の平和と繁栄への貢献
c 発展途上国自身の自発性と自助努力を重視

「Y」に当てはまる資料(図表が提示されています)
資料ア ODA総額に占める贈与比率の国際比較
資料イ 日本の二国間政府開発援助実績の地域別配分の推移
資料ウ 日本の政府開発援助実績の対国民総所得(GNI)比の推移
一方、2019年1月実施のセンター試験「政治・経済」では、たとえば次のような問題が出題されました(一部、表現を改めている箇所があります)。
【第1問】
 
問1 近現代の日本について特別裁判所に当たる裁判所として正しいものを、次の1〜4のうちから一つ選べ。

1 家庭裁判所
2 皇室裁判所
3 知的財産高等裁判所
4 地方裁判所

問6 国連海洋法条約が定める内容についての記述として正しいものを、次の1〜4のうちから一つ選べ。

1 公海では、すべての国に航行の自由が認められるわけではない。
2 大陸棚の幅は、沿岸国の基線から測定して200海里を超えることはない。
3 領海の幅は、沿岸国の基線から測定して最大3海里までである。
4 排他的経済水域では、沿岸国に天然資源を開発する権利が認められる。
試行調査の問題を概観すると、センター試験に比べて、より「考える」問題が目につきます。

今回紹介したセンター試験の問題では、基本的には「知識を問う」設問になっていますが、試行調査の問題では、複数の資料を比較検討して考える設問が見られます。

大学入試センターは2020年度から実施される共通テストにおいて、「思考力・判断力・表現力」を問いたいと明確に打ち出しています。
たとえば、「政治・経済」の作問のねらいとする「思考力・判断力・表現力」について、次のように述べています(下線は筆者)。
【政治・経済】作問のねらいとする主な「思考力・判断力・表現力」についてのイメージ(素案)
  • 諸資料を活⽤し、現代における政治、経済、国際関係に関わる課題をとらえることができる。
  • 現代における政治、経済、国際関係に関わる「考え⽅」や制度、政策などの本質をとらえることができる。
  • 現代における政治、経済、国際関係に関わる事象の関係やその意味や意義について考察することができる。
  • 現代における政治、経済、国際関係に関わる事象について吟味し、その因果関係を多⾯的・多⾓的に考察することができる。
  • 現実社会の諸課題を多⾯的・多⾓的に考察し、課題の解決に向けて、公正に判断することができる。
  • 現実社会の諸課題について、その解決に向けて、様々な⽴場からの主張を根拠に基づいて考察し、公正に判断することができる。
たとえば、今回ご紹介した「政治・経済」のODAに関する問題でも、「ODAについての異なる立場について考察し、その根拠となる資料を正しく判断する」ことが求められています。

こうした「思考力・判断力・表現力」が、2020年度からの共通テストでは今まで以上に求められるでしょう。

◆新しい大学入試に向けて、何をする?

これからの入試で求められる力とは、端的にいえば、
「物事の課題や本質を適切に捉え、多角的に考察し、課題解決する力」
といえるかもしれません。

試行調査における「政治・経済」以外の科目である国語の「作問のねらい」をみても、そこには共通して求められる「力」があることがわかります。

国語では、大学入学共通テストにおいて問いたい「思考力・判断力・表現力」として、次のような項目を具体例として挙げています(下線は筆者)。
  • ⽬的等に応じて情報をとらえ、テクスト全体の要旨を把握することができる
  • テクストを踏まえ、推論による情報の補⾜や、既有知識や経験による情報の整理を⾏って、テクストに対する考えを説明することができる
  • テクストを踏まえ、条件として⽰された⽬的等に応じて、必要な情報を⽐較したり関連付けたりして、テクストに対する考えを説明することができる
  • テクストに含まれている情報を統合したり構造化したりして、内容を総合的に解釈し、テクストに対する考えを説明することができる
「政治・経済」にせよ、「国語」にせよ、実は、求められる「思考力・判断力・表現力」は大きく乖離していません。
いずれの科目も、求められるのは
「物事の課題や本質を適切に捉え、多角的に考察し、課題解決する力」
といって差し支えないでしょう。

こうした力を自分自身で身に付けるのは一朝一夕では難しいかもしれません。しかし、Z会Asteria総合探究講座を受講していただくことで、身に付けていくことが可能です。

◆Z会Asteria総合探究講座

Z会Asteria総合探究講座は、オンラインディスカッションを行う「協働学習」、問題解決やコミュニケーションの力を養成する「個人学習」、第一線で活躍する研究者・専門家などを招いてお話しいただく「探究学習」の3つの学習で「物事の課題や本質を適切に捉え、多角的に考察し、課題解決する力」を養っていきます。

人工知能やSDGs、生物多様性、医療、宗教など月ごとに変わるテーマについて複数の資料をもとに議論し、課題解決の方法を探ります。

何が課題なのか。その課題を解決するにはどのような情報が活用できるのか。
課題解決策を多角的に考察して、よりよい解決策を探る過程で、これからの入試で求められる「物事の課題や本質を適切に捉え、多角的に考察し、課題解決する力」を高めていきます。

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公開日:2019/01/29
最終更新日:2019/04/01