公開日 2016.1.29

前回、これからの社会を生きるためには、「思考・行動・コミュニケーションのための基礎ツール、問題解決力、組織的行動能力、自己実現力の4つの資質・能力が必要」と紹介しました。それでは、これらの資質・能力を身につけるために、中学生が今からすべきことは何でしょうか。前回に続き、基盤学力総合研究所・ジェネラルマネージャーの上之門宏美さんに伺いました。

◆まずは教科学習をしっかりと

「思考・行動・コミュニケーションのための基礎ツール、問題解決力、組織的行動能力、自己実現力が大事」という話を聞くと、「じゃあ、これからはプレゼンテーションやディベートの力が問われるから、知識はそれほど必要ない?」と思われる方もいらっしゃると思います。しかし、決してそんなことはありません。
 
これらの資質・能力を見に身につける上でも、教科学習をしっかりやっていただきたいと思います。なぜなら、考えるためには材料となる知識が必要だから。教科学習の中には、世界・社会の成り立ちを知る上で重要なエッセンスがぎゅっと詰まっています。
 
例えば、皆さんの中には「数学なんて何の意味があるんだろう?」と思っていらっしゃる方もいると思います。かくいう私がそうでしたが、ある大学の先生のお話を聞いてその考えを改めました。その先生は「人間が数によって世界の認識をどのように広げていったかという数学史を、小学校から高校までの数学で追体験できるなんて、こんなに面白いことはない」とおっしゃったのです。こう聞くと、意義も見えてくるのではないでしょうか。
 
このように、教科学習は、問題や課題を認識して解決したり、新しい価値を生み出したりするのに必要な知識や考え方、物事の捉え方を育むものとして重要なのです。

◆学んだことを言語化することで、言語運用能力が鍛えられる

 その上で、4つの資質・能力の育成につながる取り組みとして今からできることは、まず、教科学習の際に、学んだことを「要するにどういうことか」と言葉にすることです。これは、言語運用能力を身につけるのに有用です。また、自分の考えを言語化することで、問題解決力のような高次の思考力を養うことにもつながります。
 
具体的な方法としておすすめなのは、学んだことの要点を人に説明できるように自分のノートに整理してみること。よく、「他人に教えられるようにならないと、本当にわかったとは言えない」といいますが、本当にその通りで、得た情報を「要するにどういうことだっけ?」と追体験して言葉で吐き出すことによって、自分が本当はわかっていなかった部分を再発見し、復習・確認することでより深く理解することが出来ます。先生の板書を写すだけ、配られたプリントの穴を埋めるだけ、ではなく、先生が授業中に話していたことや、お友達が授業中に発言した内容なども含めて、しっかり言語化して記録に残していくとよいでしょう。
 
同じような効果をもたらすものとして、友達と話しながら勉強するのもおすすめです。例えば、友達と一緒に試験勉強をするとき、各々が個別にアプリで英単語を覚えるのではなく、「これってどういう意味?」「この単語を使った例文って何がある?」などと話しながら勉強するのです。あるいは、覚えたい科目・単元について自分で授業をしてみてもいいでしょう。自分が教えた内容に、相手が納得していないようなら、自分の言い方がわかりにくいのか、それとも相手が教わりたい内容に答えられていないのかを振り返り、改善してみる。こうした学習が、組織の中で自分の主張を適切に展開していく力につながっていきます。