公開日 2018.11.15

Z会の中学生向け中高一貫コース「総合」講座は、答えがひとつではない問いに自分なりの答えを見つけ、それを他の人と深め合いながら解決できるようになることを目指した講座です。
今回ご紹介する教材テーマは「じっと資料を見る〜平均,特異点〜」です。みなさんは何かの資料を読んで、違和感を感じたことはありますか?
Z会が以前、会員のみなさん向けに「何歳で結婚をしたいか」とのアンケートを行ったところ、なんとその結果は平均60歳! と、いうのも、1人が「10万28歳」と回答していたことが原因だったのです。これは極端な例ですが、資料を鵜呑みにせずに、なぜそういった数値となっているのかを考えることは大切なことです。
今回の課題では、会員のみなさんに資料を批判的に見つめることに挑戦していただきました。
※掲載の都合により、表現を一部省略・変更させていただいた箇所があります。

◆中2_社会分野 じっと資料を見る〜平均,特異点〜

◎出題のねらい◎
社会的な問題を取り扱った文章には、しばしば「平均値」が取り上げられ、グラフが付されます。しかし、その「平均値」なるものが、私たちの実感と合わない、というケースも、またしばしば見られます。「収入」や「貯蓄額」がそのいい例ですね。今回は、そういったことがなぜ起こるのかを考えてもらいたいと思い、このテーマを設定しました。いわば資料の批判的読解のトレーニングです。添削問題では、少子高齢化問題を取り上げ、何が問題の背景にあるのかを資料の批判的読解に基づき推理してもらいます。

◎問題◎

資料1〜資料3からもわかるように、「少子化」という問題については、さまざまな論点から考えることが可能です。また、その対策についても、いろいろなことを同時に行っていく必要があるでしょう。
では、もしあなたが、「少子化社会対策大綱」の「集中取り組み期間」が終わった2019年に、政策の決定者となった場合、少子化問題に対してどのような政策を打ち出しますか。2019年までの少子化対策の結果やその原因にも触れながら、400字以内であなたの考えを述べなさい。

◎答案例1◎
子どもを生む目的の変化に、資金面での問題が追い風となって、少子化の原因になると私は考える。また、それによって「集中取り組み期間」の対策をとっても成果があまり得られないと考えた。
フランスの教育事情を調べると、大学まで教育費が無償となっている。一方、韓国では教育費はかかるものの、大学進学率は実に98%以上(帝国書院より)。日本は子どもを生む目的の意識からまず違うのではないか、と考えた。(中略)
よって私は、教育に関わる資金を減らすべく、無償化したり目的を定める必要があると思う。資金で困るのは裕福か否かではなく、出費に問題があるのではないか、と考えるのだ。

◎答案例2◎
少子化対策大綱を読む限り、政策というより目標の羅列のような気がした。「〜のような取り組みを推進する」という文字は目だったが、政府としてどういった取り組みをするのかはあまりかかれていなかった。
ここから大綱の結果を推測すると、あまりうまくいかないのではないかと思う。具体的にどうするのか書かれている箇所は少なく、社会の動きとして少子化対策を作ることが難しいだろうと考えたからだ。
私は、民間単位での優れた取り組みを支援していくだけでなく、政府として行動を起こすべきと考えている。政治体制の内部でもまず子育てしやすい環境を整えた上で、国民や企業への呼びかけを強化すべきだ。その上で、子育て中の人の労働時間に基準を設けたり、補助金制度の充実をはかったり、経済的にも時間的にも余裕を持って労働と生活・子育ての両立ができる制度をととのえていくべきだと思う。

◎答案例3◎
日本は、近年国内で少子化が著しく進んでいるという現状から立ち直らせるために、男性の育児休業取得率や女性の継続就業率を伸ばす、などの「働き方改革」をここ数年、行ってきた。だが、その数値はそれぞれ2%、38%と目標と大きくかけ離れている。これではいつまでたっても少子化は解消されない。というより、そもそも、少子化する日本を立ち直らせることがそんなに重要なのか。「意識の改革」というのは、少し行きすぎなのでは?人口推移によれば、日本は人口が「減る」というより「戻る」傾向にある。明治時代のころと同じ人口に戻ったからといって、そんなにあわてることはない。明治の人々はそれで生きてきたのだから。したがって、僕はこう考える。少子化対策の政策は、2019年までと同じ目標は掲げるが、「意識を根本的に…」とは言わない。「勧める」程度。少子化は、日本の歴史の一大エピソードに過ぎない、と冷静に考えることも必要だと思う。


◎講評◎
設問では「現在の少子化対策の成否」についての意見も求めていましたが、それを踏まえて解答を作成することに苦戦した人が多かったようですね。多くの答案でこの点を書き漏らしており、結果として点数が低くなってしまっていました。「問にしっかりと答える」ことが、よい評価を得るためのポイントとなるので、忘れずに言及しましょう。
答案では全体的に、「少子化対策はうまくいかない」という意見から、みなさんなりの提案として「幼稚園や保育施設の拡大」「女性の社会進出の整備」などの方向から論じてくれました。いずれも大切な視点ですが、これらの主張をどうやって「説得力」のあるものにするか、というところで評価が分かれました。
答案例1の答案では、「日本は子どもを生む目的からまず違うのではないか」という着眼点が興味深いですね。実際の掘り下げのところではすこし苦労し、結論部ではこの着眼を生かしきれていなかったようですが、「今の日本の各家庭が、子どもを生み、子育てをする理由は何なのか」という点について考えてみると、一般的に言われている「少子化問題」とは違う論点が見えてくるのかもしれませんね。
答案例2の答案は、冒頭の「政策というより目標の羅列」という指摘が鋭かったです。確かにそうですね。実際の政策は、この「大綱」の方針に従って、具体的なものが立てられているはずですが、何かの問題を解決するためには、具体的なことを明言しておくのが大切だ、ということは、勉強にもつながることかもしれません。なお、「子育ての環境を整える」という方向の意見は複数見られましたが、この論点については、「そのための人材をどう確保するか」ということも考えられるとなおよいですね。
答案例3は、確かに「日本の歴史の一大エピソード」という見方をすることも重要ですが、このように完全に「傍観者」という態度をとるのは、責任の放棄にも映りかねません。このように「少子化」をある程度「仕方がない」こととして受け入れる立場をとる場合は、その上で、変化した社会をどうやって良いものにしていくか、という方向から考えるようにするとよいでしょう。

このように、「総合」講座では身近ではあるけれど、今まで深く考えたことがなかったであろう問題に正面から向き合い、徹底的に考え、答案にまとめます。このプロセスを毎月くり返すことで『思考力』『判断力』『表現力』が伸び、自らの考えを深め表現する力を養います。
ぜひ、「総合」講座で考える力を培ってください。

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