公開日 2018.4.13

Z会中高一貫コース「総合」講座は、答えがひとつではない問いに自分なりの答えを見つけ、それを他の人と深め合いながら解決できるようになることを目指した講座です。
今回ご紹介する教材テーマは「スポーツについて考える」です。私たちの生活に深く関係している「スポーツ」についてさまざまな角度から考察する問題を出題しています。例えば、プロ野球の楽天球団は、本拠地スタジアムの外野席やそのそばに観覧車やメリーゴーランドを建設しました。なぜ、「遊園地」にあるようなアトラクションを野球場に建設したのでしょうか。こういった「理由」に目を向けて、今まで見えてこなかった「スポーツ」の側面を考えてもらいました。
添削問題では、近年話題の「ビッグデータ」と「スポーツ」の関係について考える問題を出題しています。新しい技術や考え方によってこれまでのあり方がどのように変化するのか、それはよいことなのか、さまざまに思考を広げてもらいました。記事内では実際に会員から寄せられた解答、担当者の講評をご紹介していきます。
※掲載の都合により、表現を一部省略・変更させていただいた箇所があります。

◆中1 _社会分野 スポーツについて考える〜スポーツとビックデータ

◎出題のねらい◎
今回の添削問題は「ビッグデータ」と「スポーツ」の関係について考える問題を出題しています。「ビッグデータ」は近年さまざまな場面で話題になっていますが、「スポーツ」に導入され始めたのはつい最近のことです。スポーツとデータは、一見反対のものに思えます。スポーツは体を動かし、楽しんだり、競い合ったりするものです。データは頭を使って分析し、統計や戦略に役立てるものです。単純化すると、「スポーツは体」「データは頭脳」というイメージになるでしょう。
ところが今、スポーツとデータは強く関連し始めています。選手の身体機能や試合での動きについて科学的に測定し、そのデータを分析して体調の管理やフォームのチェック、戦術の決定、選手の起用法や評価に活用しているのです。
こういった新しい技術や視点が入ることで、「スポーツ」のあり方がどのように変化しうるのか、それは果たして「よいこと」なのか、と考えをめぐらせて自分の意見を述べてほしいと考えています。

◎問題◎

大問1の資料をふまえ、スポーツに統計データ(ビッグデータ)を活用することについて、具体的なスポーツ競技を取り上げつつ、スポーツをする立場や観る立場から、あなたの考えを300字以内で述べなさい。

◎答案例1◎
サッカーの場合、スポーツをする立場にとって統計データを活用することは賛成だ。なぜなら活用することで相手チームに対しての作戦が次々と考えつくことで様々な戦い方ができるようになるからだ。それにより相手チームも対策をしてくるようになり、どんどん面白いスポーツになっていく。しかし、これはサッカーに詳しい人にしか理解できず、あまり知らない人が観るとどこが面白いのかわからず、サッカーを誤解する可能性があるため観る立場にとってはあまり賛成できないと思う。それを解決するために、サッカーに詳しくない人が観ても面白いと思ってもらえるようにするために実況者や周りの人たちがわかりやすく説明することが大切だと思う。

◎答案例2◎
私は部活で剣道部に入部している。剣道はたしかに他のスポーツと同様勝敗が決まるが、その中で大事なのは礼儀である。相手を尊重し、又反則を犯した場合は審判に礼をする必要がある。もし剣道でビッグデータを活用したらどうなるか。確かに相手に勝つよう分析され、勝つことができるかもしれない。だがその「勝ち」は自分の力で作りあげた「勝ち」ではない。勝利至上主義というのは、勝ちにこだわりすぎて、スポーツをやる上での礼儀を忘れてしまった状態を言うと思う。ビッグデータでできた試合をして、使用した選手は勝って本当にいいのか、やられた相手は気分がよいものだろうか、見てて感激した、ということがあるのだろうか。

◎答案例3◎
統計データは、個々にパターンが生まれるようなスポーツに有効だ。分かりやすいのはやはり野球だろう。スポーツを行ううえで、当事者としての立場からすれば便利なものだ。相手の選手によってデータをもとに作戦を変える。見る側からすればまさにヒヤヒヤの頭脳戦だろう。しかし、それは勝つためだけの手段ではないのか。データを扱うということは、その相手を熟知するということだ。ならば、裏をかくにはなれないことをするしかない。その先は?データに頼るということは、当事者からすれば勝つために必要なのかもしれない。しかし観戦者は、一か八かの大勝負を待っているのではないか。先回りされた試合など楽しくはないだろう。


◎講評◎
今回は「スポーツに対するビッグデータ活用の賛否」を問うような出題でした。確認した限りでは「賛成」の立場のものがやや多かったですが、否定的な見方や「活用の仕方による」といった中立的な立場をとる答案も見られました。
<答案例1>のように「サッカー」を事例に取り上げたものが比較的目立ちましたが、ここでは「する立場」「見る立場」双方からの検討がしっかりとできているので、データ活用の意義を十分に読み手に伝えることができています。さらに「見る立場」におけるデータ活用の問題点に対して、しっかりと解決策を提示できているのがよいと思います。このように、「課題」に対してそれをどうやって克服するのか、という提案ができると、非常に説得力のある主張になりますね。また、感想欄では、「統計データを活用することはたくさんのお金や人、時間を使うと思う」と指摘されていました。「ビッグデータ」を活用することは、ともすると「貧富の差」がスポーツの結果に今以上に影響を与える可能性がある、という非常に重要な視点ですね。
<答案例2>の指摘では、剣道を例にスポーツで求められる「礼儀」の部分に焦点を当てているところが興味深いです。たしかに、「相手」がいてこそ成り立つ側面があるスポーツでは「礼儀」や「相手への敬意」は欠いてはいけない視点です。ただ、この解答のように、最後を疑問の形で終わらせてしまうと、結局どのような主張をしたいのか、わかりづらくなってしまうことがあります。コラムなどでも時折見られる形ではありますが、自分の意見を述べる形としては適切とはいえないので注意しましょう。
<答案例3>は、「野球」を例にとって、観戦者から見たデータ活用のデメリットを取り上げています。確かに、データや技量を超えた「真剣勝負」を見る側は求める傾向にあり、そういった試合は後世になっても「美談」として人々の記憶に残っています。ビッグデータの活用によって、そのような真剣勝負がなくなってしまうのかはわかりませんが、スポーツの見方を考える上では、重要な視座といえるでしょう。


このように、「総合」講座では身近ではあるけれど、今まで深く考えたことがなかったであろう問題に正面から向き合い、徹底的に考え、答案にまとめます。このプロセスを毎月くり返すことで『思考力』『判断力』『表現力』が伸び、自らの考えを深め表現する力を養います。
ぜひ、「総合」講座で考える力を培ってください。