公開日 2018.2.27

Z会中高一貫コース「総合」講座は、「人文分野」「自然分野」「社会分野」の中から、毎月1分野に取り組み、答えがひとつではない問いに自分なりの答えを見つけ、それを他の人と深め合いながら解決できるようになることを目指した講座です。
ここでは、「総合」講座の問題と実際に会員から寄せられた解答、担当者の講評をご紹介していきます。
※掲載の都合により、表現を一部省略・変更させていただいた箇所があります。

◆中1 _自然分野 おおまかな数の概算

◎出題のねらい◎
たとえば「日本で中学校の数はいくつある?」と問われたとき、よく考えれば正確な数を知らなくても、およその数を概算することができます(中学生が総人口に占める割合や、1校あたりの総生徒数を考えれば計算できます)。このように、対象をモデル化して概算する手法は「フェルミ推定」とよばれ、科学の分野だけでなく、企業がターゲットとする顧客の数を概算する場面など、非常に幅広く使われています。中1の10月号では、ウォーミングアップや添削問題を通じて、知らない数を「わからない」と答えるのではなく、自らモデル化して計算する力を養います。

◎問題◎

家庭用水の目的別の使用量の内訳はグラフのように表される。グラフから、風呂が4割、トイレと炊事が約2割ずつを占めていることがわかる。このグラフを仮定として用いて、1日に1人が使用する家庭用水の量を推定しなさい。

◎答案例1◎
僕の家のお風呂は幅60cm、深さ40cm、奥行き120cmなので容積は288Lだ。友達に多い家族構成は、親2人、子2人の4人家族だ。4人で288Lを使うとすると、1人が288÷4=72Lをお風呂で使っていることになる。それが家庭用水の40%なので、1日に1人が使用する量をxとすると
0.4x=72よりx=180
よって180L使用すると推定できる。

◎答案例2◎
一般家庭のお風呂の容量…180L/それにシャワーなどを足すと180L+30L=210L
トイレの水量…5L/トイレは大体6回ぐらいするので30L
洗濯機の表示に20Lと書いてあったのでこの量とする(1人で使用したとき)
炊事…朝10L,昼15L,夜20Lぐらいで計45L
その他は10Lぐらい
よって210+31+20+45+10=315L


◎講評◎
同じ量を推定するにもいろんな方法があり、スタッフも楽しみながら答案を拝見しました。
「答案例1」は論理的に説明できていて完璧な答案でした。特に、自分の家のお風呂のサイズをもとに容積を仮定したところと、自分の友達の家族構成をもとに世帯人数を仮定したところが評価のポイントです。
「答案例2」は、風呂、トイレ、洗濯、炊事、その他の量をそれぞれ推定して足し上げて、それぞれしっかり推定できている答案です。風呂や炊事の水は家族全員で使うと考えて、家族の人数を推定して1人当たりに直すことでより精度の高い値が得られます。

◆中2 _自然分野 もののカタチ

◎出題のねらい◎
皆さんは、身のまわりにあるものについて「なぜこんな形をしているんだろう?」と思ったことはありますか? ものの形には理由があり、偶然ではないことが多くあります。今回の教材では、新幹線、飛行機、動物、ペットボトルやカップ麺の容器などを題材にして、その形に注目して考えを深めていきます。見過ごしてしまいがちなものに注意を払い、疑問を持ち、根拠を持ってその理由を考えることは、科学的なものの見方を身につける第一歩です。

◎問題◎

カップラーメンの容器を上から見ると、丸形をしているものがほとんどだが、カップ焼きそばの容器は四角形のものが多い。カップ焼きそばの容器において、丸形よりも四角形が有利と考えられる点を2つ挙げ、解答欄の枠の範囲で、箇条書きにして書きなさい。

◎答案例1◎
丸である必要がないなら、四角形にしたほうがコンパクトにして輸送できるから。

◎答案例2◎
湯切りのときに角をしっかり持ち、角から正確にお湯を捨てられる点。

◎答案例3◎
やきそばを食べたい人が、間違えてラーメンを買ったりしない。


◎講評◎
文章をよく読みこんでいることがわかる答案や、なんとか答えを書こうという意気込みが伝わってくる答案がいくつもありました。このような姿勢を身につけておくと、将来必ず役に立つはずです。
「答案例1」は、「カップ焼きそばは食べたことがないから、自信がない」という感想を書いてくれましたが、そんな中でよく想像力を働かせて書いてくれています。「丸である必要がないなら」という点は、書いてくれた人が少なかったのですが、重要なポイントです。カップラーメンの容器はどうして丸形である必要があるのか、踏み込めるとなおよかったですね。
「答案例2」は、「湯切り」という言葉を上手に使って説明できています。また、「角から正確にお湯を捨てられる」という、状況をよく想像できているのもよいところです。
「答案例3」は、面白いところに着目してくれたようですね。確かに、形を分けておけば取り違えも起こりにくいので、よい答案です!

◆中3 _総合分野 あなたならどう使う?〜データを正しく用いて、課題を解決しよう〜

◎出題のねらい◎
データから情報を読み取り、自分の意見を伝えることのさらにその先を学習します。まず、課題があって、それを解決するために、必要なデータは何かを考えます。そして、そのデータを加工し、傾向や結果を読み取り、結論に結びつけて課題を解決するという流れです。「こういう傾向がある」、「こういうことをするとよい」ということについて、自ら正しくデータを利用して、数値の裏付けをし、説得力のある説明ができるようにしましょう。

◎問題◎

「アイスクリームの売り上げと水難事故の発生件数について相関を調べたら、またまた強い正の相関関係があった。ということは、水難事故を減らすにはアイスクリームの販売を自粛すればよいのかな?」
この意見は正しくない。しかし、アイスクリームの売り上げと水難事故の発生件数の間には正の相関関係が存在する。これはどういうことか理由を書きなさい。

◎答案例1◎
水難事故の発生件数は、人が川や海で遊ぶ夏に多いと考えられ、アイスクリームの売上が高くなるのも夏であるため、水難事故の発生件数の高い頃はアイスクリームの売上が高くなるから。

◎答案例2◎
アイスクリームの売上と水難事故の発生件数には直接的な関係はないが、暑さによって変化するという共通点がある。両方とも暑くなるとそれぞれの値が高くなるという傾向があるので、偶然、正の相関関係が存在してしまったということ。

◎答案例3◎
アイスクリームの売上、水難事故の発生件数ともに最高気温との強い正の相関関係が見出せる。…しかし、この2つの事柄は直接的に関係しているわけではなく、あくまでも「気温」を通して間接的に関係している。因果関係ではない。


◎講評◎
今回もたくさんの解答を見せてもらいました。まず、グラフやQCRなどのツールを使って数理的に分析するという今回のテーマについて「難しかった」「自信がないです」と苦戦していたようです。しかし、「グラフを読み取るのがおもしろかった」という感想も寄せられ、ふだんとは少し違う課題に楽しんで取り組んでいる様子もうかがえました。
「答案例1」は「夏」を介して2つの変量が関係していると説明してくれました。問題文中の「最高気温」を「夏」と置き換えることで,2つの変量の関係がみえてきますね。
「答案例2」では「夏」であることを「暑さ」と表現してくれています。また、「直接的」「偶然」という言葉を補うことで、2つの変量の関係を表現しています。この2つの用語で、2つの変量の関係がよりはっきりと描かれてきます。すばらしい表現力でした。
「答案例3」も「直接的」な関係ではないことを指摘したあと、「間接的」と表現しています。このように対義語を利用すると、さらにくっきりと説明することができてきますね。そして、「因果関係ではない」と表現したことで、2つの変量が見かけ上の関係であることがはっきりしてきています。すばらしい整理と表現力でした。
「何となく」わかっているつもりでも表現してみると、理解にあいまいなところがあったり、うまく伝えられなかったりとたいへんなことがよくあります。今回を機会に「何となく」わかった状態を明確な状態にできるようにしていけるといいですね。




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