2017年9月号
公開日 2017.11.27
Z会中高一貫コース「総合」講座は、「人文分野」「自然分野」「社会分野」の中から、毎月1分野に取り組み、答えがひとつではない問いに自分なりの答えを見つけ、それを他の人と深め合いながら解決できるようになることを目指した講座です。
ここでは、「総合」講座の問題と実際に会員から寄せらせた解答、担当者の講評をご紹介していきます。
※掲載の都合により、表現を一部省略・変更させていただいた箇所があります。
ここでは、「総合」講座の問題と実際に会員から寄せらせた解答、担当者の講評をご紹介していきます。
※掲載の都合により、表現を一部省略・変更させていただいた箇所があります。
◆中1 _社会分野 エネルギーの未来を考える
◎出題のねらい◎
普段当たり前のように使用している電力などのエネルギー。このエネルギーは何をもとにして作られているのでしょうか。エネルギーの使用構成については、国によって特徴があり、近年大きく変わりつつあります。今回は、エネルギーの特徴、安全性、エネルギー源などの資源の流出、国ごとの方針…などなど、さまざまな視点から将来のエネルギーについて考えます。
普段当たり前のように使用している電力などのエネルギー。このエネルギーは何をもとにして作られているのでしょうか。エネルギーの使用構成については、国によって特徴があり、近年大きく変わりつつあります。今回は、エネルギーの特徴、安全性、エネルギー源などの資源の流出、国ごとの方針…などなど、さまざまな視点から将来のエネルギーについて考えます。
◎問題◎
政府の2030年時点の電源構成目標のグラフを見て、あなたが政策の決定者である場合、2030年時点でどのような電源構成とすることを目標にしますか。そのような目標を設定する理由、目標を実現するために取るべき政策や方針にも触れながら、400字以内であなたの考えを述べなさい。
◎答案例1◎
私は、地熱発電の割合を、もっと上げることが必要だと思う。なぜかというと、日本は火山大国と呼ばれるほど火山が多く、世界一の地熱発電ができると思うからだ。(中略)火山の多い大分や熊本、鹿児島などの県は「ご当地発電」と称して発電すれば、多くの人に電気が供給でき、効率が上がれば県内の電力を地熱発電でまかなうこともできるかもしれない。(以下略)
◎答案例2◎
日本は地震が多いので、原子力発電所が被災すると東日本大震災以上の被害が出る可能性があるかもしれません。だから火力を増やすべきです。火力を増やすと地球温暖化は進みます。ですが、それ以上に植林していけば、2030年には緑が増え、火力を増やしても影響を削減できるのではないでしょうか。そのためには、もっと緑にお金をかけるべきだと思います。各家庭に一定量の緑を支給し、国民一体となり緑を増やすべきです。(以下略)
◎講評◎
答案では、環境への配慮から、全体的に「再生エネルギーを積極的に採り入れるべきだ」とする解答が多く見られました。今回は、そのなかでも「目標を実現するためにとるべきこと」について、工夫が見られた答案を紹介しました。
「答案例1」を初めとして多くの人から、地熱発電や風力発電など、日本の自然特性を活かした提案が見られました。これらの発電は、安全面や健康面への問題もあり、現在の発電割合は低いが、新しい仕組みや技術開発によって今後上手に取り入れたいエネルギーの1つですね。
「答案例2」のように、新しい視点からの提案も見られました。どのようにすれば実現できるか、さらに深く検討してほしいですね。
今回は「課題発見・分析力」で点数が取れていない答案が多く見られました。問題に2030年と2014年の電源構成目標がグラフで示されていたため、グラフの内容についても述べてほしかったのですが、ここに言及している答案は少なかったです。提示されている資料についても触れることで、自分の考えがより明確化されます。問題をよく読み、注意して取り組みましょう。
◆中2 _社会分野 働くことの今と未来
◎出題のねらい◎
日本国民の三大義務の一つに「勤労」、つまり「働くこと」があります。皆さんも将来、社会に出て仕事に就くことになると思いますが、「働く」とはどういうことなのでしょうか。今回のワークでは、何のために、どのように働くのか、また、働くことを通じて何を得るのか、といったさまざまな角度から分析します。
添削問題では、「未来の労働」として、近年話題になっている「AI(人工知能)」との関係も含めて考えます。AIが発達する中で人々の労働がどのように変化しうるのか、考えてほしいと思います。
日本国民の三大義務の一つに「勤労」、つまり「働くこと」があります。皆さんも将来、社会に出て仕事に就くことになると思いますが、「働く」とはどういうことなのでしょうか。今回のワークでは、何のために、どのように働くのか、また、働くことを通じて何を得るのか、といったさまざまな角度から分析します。
添削問題では、「未来の労働」として、近年話題になっている「AI(人工知能)」との関係も含めて考えます。AIが発達する中で人々の労働がどのように変化しうるのか、考えてほしいと思います。
◎問題◎
今後、人工知能やロボットによって代替可能な仕事が増えていく中で、人工知能やロボットと人間はどのように協調して仕事をしていけばよいか、具体的な仕事(職業または分野)を1つ取り上げ、あなたの考えを300字以内で述べなさい。
◎答案例1◎
私の夢は医師だ。だから、将来のAIと医師の私の協調を想像してみよう。AIは情報の積み重ねで技術を学ぶ。したがって今日腹腔鏡で医師の手により行われる手術もいずれはAIが習得するだろう。医師による病気の診断、薬の処方もAIの実用化が迫っている。では、私は何ができるだろう。そもそも私が医師を志すのは日野原先生の影響だ。先日亡くなった先生は百歳を越えて現役医師を続けられた。先生の本を読んで考えるのは、命と接する機会の多い医師こそが命の大切さを訴えられるのだ、ということ。日本の自殺者は豊かな国である一方多い。AIができない、心を読み、手をさしのべること。私は、患者とのコミュニケーションを大切にしたい。
◎答案例2◎
人工知能と人間が協調できる仕事のうちに、教員があると思う。教員の仕事は大きく分けると二つに分かれる。事務的な仕事と他者との交流をする仕事である。事務的な仕事には生徒の出欠確認やテストの採点、成績管理等があげられ、他者との交流をする仕事には生徒への指導、保護者との面談、部活の顧問や他校との交流等がある。そこで、正確さやスピードが重要な事務的な仕事は正確にスピードを持ってできる人工知能に、人の気持ちを汲むことが重要な他者との交流をする仕事はより細かい人の気持ちがわかる人間にさせることによって効率よく仕事ができる。それに近年問題視されている教員の長時間労働もこれによって解消されると考えている。
◎講評◎
多くの答案で、「人工知能やロボット」「人間」それぞれの特徴と仕事の内容を結びつけて検討することができていました。その中でより高い評価を受けた答案は、「人工知能やロボット」と「人間」がともに働くことで生まれる「新しい価値」にまで言及できています。今人間がしている仕事(または作業)が人工知能やロボットに置き換わるということは、その分人間が新しい仕事や作業をする時間が生まれる、ということ。そこにまで目を向けて自分の答案を読み返してみてほしいですね。
医者をはじめとする医療の仕事を取り上げた答案が一番多かったですが、「答案例1」では先日亡くなられた日野原医師の活動と照らし合わせて分析していました。おそらく、字数が足りなくなったために「新しい価値の創造」への言及が弱くなってしまったと思われますが、分析は興味深く、読み応えがあります。
「答案例2」が取り上げた「教師」は、まさにこれまでは人と人との関係で成り立っていた仕事です。そこに人工知能やロボットがどのように関係するのか、10年、20年後の学校のあり方をイメージして解答してくれていますね。「教員の長時間労働の解消」という社会問題を取り上げてくれているのも良い視点です。「新しい価値の創造」と言われると、「これまでにはないサービスを始める」という方向に目が行きがちですが、このように「現代抱えている課題の解決」も、十分に「新しい価値」と言えるので覚えておきましょう。
◆中3 _社会分野 貿易が生み出す「格差」とは?
◎出題のねらい◎
近年、チョコレート・コーヒー・衣類などの「フェアトレード商品」を見かけることが多くなりました。フェアトレード商品は、公平・公正な貿易による原料を用いた商品のことですが、一方で、「フェア」でない貿易で、国際的な格差が生まれているといわれています。今回は、こうした貿易が生み出す国際格差について学ぶことで、どのようにして格差は生まれるのか、どうしたら格差は解消できるかを考えます。「フェアトレード」のような新しい取り組みは、どのようにすればうまく広めることができるのかについても、一緒に考えていきましょう。
近年、チョコレート・コーヒー・衣類などの「フェアトレード商品」を見かけることが多くなりました。フェアトレード商品は、公平・公正な貿易による原料を用いた商品のことですが、一方で、「フェア」でない貿易で、国際的な格差が生まれているといわれています。今回は、こうした貿易が生み出す国際格差について学ぶことで、どのようにして格差は生まれるのか、どうしたら格差は解消できるかを考えます。「フェアトレード」のような新しい取り組みは、どのようにすればうまく広めることができるのかについても、一緒に考えていきましょう。
◎問題◎
(2)国際的な格差の解消という目的のために、今後どのようなことを行っていくべきだと思いますか。300字以内であなたの意見を述べなさい。
- フェアトレードに関することについて述べても、それ以外のことについて述べてもよいが、(1)で述べた考えをふまえたものであること。
- 国や国際機関が行うこと、民間企業が行うこと、社会で進めていくことなど、いずれについて述べてもよい。
◎答案例1◎
フェアトレードを扱うことは生産者や労働者の生活の改善や経済的な自立を助けることになるが、その国の環境が変わらないと改善できないと思います。だから、生産者個々の支援だけでなく、水道設備や電気工事など、生活していく上で必要な環境を整えていくのも先進国の役目ではないかと思います。また、消費者である私たちが関心を持つことも必要だと思います。(以下略)
◎答案例2◎
先進国の医者が途上国の医療にたずさわることで医療における格差問題を解消できると思います。(中略)これによって途上国の医者は先進国の発達した医療を学び、自国の医療に活かせるというメリットがあります。また先進国は自国にはない病が世界にはある、ということを明確に知り、医学の研究などに役立てることができると思います。
◎講評◎
今回は、国際的な格差の解消というテーマであったせいか、考えをまとめるのに苦労した会員が多かったようです。格差解消の方法として、ウォーミングアップや問題(1)からフェアトレードについて触れている答案が多く見られました。中には「書いていると、知らぬ間にとても真剣にフェアトレードについて考えていた」、「300字じゃ書ききれなかった」というような感想もありました。普段なじみのないテーマにも少し興味を示してみると、新しい扉が開けるかもしれませんね。
今回は、その他の視点を挙げてくれた答案を取り上げました。「答案例1」は「消費者である私たちが関心を持つこと」が大事だと答えてくれました。「知る」ことは本当に大事なことです。これからも幅広い知識を身につけ、正しい考えを持てるようになってほしいです。また、途上国の医療への貢献を挙げてくれた「答案例2」のような答案もありました。現在も、青年海外協力隊や国境なき医師団など、世界中で活躍している人々がたくさんいます。皆さんの中にも目指している人もいるでしょうか。今回のテーマがよいきっかけとなってくれればと思います。
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