公開日 2017.9.26

Z会中高一貫コース「総合」講座は、「人文分野」「自然分野」「社会分野」の中から、毎月1分野に取り組み、答えがひとつではない問いに自分なりの答えを見つけ、それを他の人と深め合いながら解決できるようになることを目指した講座です。
ここでは、「総合」講座の問題と実際に会員から寄せらせた解答、担当者の講評をご紹介していきます。

◆中1 _総合分野 身近なテーマの調べ方、深め方〜オリンピックについて考察する〜

◎出題のねらい◎
8月号教材では、「調べ学習」や「?」を解決していくための方法を学んでもらいました。添削問題では、オリンピックを題材に、そこから浮かんでくる疑問やその本質に迫っていく方法を疑似体験してもらいます。これを通じて、オリンピックの見方が、すこし変わるかもしれません。

◎問題◎

あなたはオリンピックがどのようなイベントであるべきだと考えますか。
その考えについて端的にタイトルをつけたうえで、そのような大会にしたい理由や実現に向けて必要な事柄について、実際の開催に大きく影響を与えていると思われる要因に触れながら、300字以内で説明しなさい。

◎答案例1◎
タイトル:クリーンな大会
近年、国際スポーツにおいて、華やかさのシンボルといえるトップアスリートたちが薬物使用の増加傾向にある。薬物を使用しないクリーンな選手がいる中、数多くのドーピング違反者が見つかっている。そのためクリーンな選手の中にはドーピング違反者と競技を行うことを好まない人もいる。ボイコットやいがみあいなど選手同士の対立をさけるべく、今こそオリンピズムの一つであるフェアプレーの精神に戻るべきだ。そして、最新式といわれる「生体パスポート」をつかって継続的な検査を推進するべきだ。そして、薬物が一切使われていない、クリーンな選手たちで堂々と競い合いオリンピックという舞台を一層発展させてほしい。

◎答案例2◎
タイトル:互いに友情を深め平和な世界を実現する大会
僕が、このような大会にしたい理由は、世界の人々が互いに友情を深め、仲良くなると戦争はなくなり平和な世の中になると思ったからです。オリンピックは世界各国からたくさんの人々が集まるので国籍の違う人々と友情を深めるチャンスだと思いました。しかし、外国で開催されると資金の問題などで、オリンピックの観戦にいけない人も多いと思います。だから、ボクは競技ごとに別の国で開催させた方がよいと思いました。そのようにすることで開催する国が負担する資金も少なくなり、オリンピックの観戦に行くことができる人も増えると思います。


◎講評◎
オリンピックという皆さんの関心も強いテーマだったためか、設問について具体的に検討できている答案が多く寄せられました。「理想的なあり方」は、決して「現実のあり方」の否定ではありません。今回の答案ではあまり見られませんでしたが、「現在のオリンピック」を肯定するような視点があっても良かったでしょう。
「答案例1」のように、ニュースの影響からか「ドーピング」を事例に挙げて、オリンピックのクリーンさ、公平さを求める答案が比較的多く見られました。この答案では「生体パスポート」という具体的な方法を提案して意見を述べることができている点が良かったですね。一方で、冒頭の「薬物使用の増加傾向」という指摘は、本当でしょうか。医療の発達によって、過去の薬物使用が最近になって発覚する、というケースもでているため、一概に「近年増加傾向」とは言いがたいです。こういった事柄を述べる際には、根拠を提示するようにしましょう。
「答案例2」の「競技ごとに別の国で開催する」というのは、面白い観点で、実際に開催国の負担の軽減なども期待できます。一方で、「複数の競技が、その知名度や人気の差異を問わず、同じ大会の中で実施される」というオリンピックの特徴をどうとらえるか、という点が気になりました。各競技団体が主催している「世界選手権」とどう違うのか、という疑問が当然浮かぶでしょうから、それに対する反論を考えるようにすると、議論の練習にもなりますね。

◆中2 _総合分野 世の中の仕組みについて考えてみる〜オリンピックのウラ側はどうなっているのか〜

◎出題のねらい◎
2020東京オリンピック決定の瞬間、喜んだ人も多いでしょう。しかし、その後のあれこれは、どうもスッキリしません。なんだかキラキラしたイメージのイベントですが、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。本当にオリンピックを招致したいと思っているのは、どこの誰なのでしょうか。また、何のために? 今回は、提出課題も含めて、それを考えるための材料を提示します。

◎問題◎

水泳という競技に限らず、多くの競技において、トップアスリートたちは、それぞれ契約した企業から最新鋭のウェアやシューズなどの提供を受けています。それに対して、1では、高速水着を例に、「一部のトップ選手だけが着られるというのは不公平」、すなわち「最新鋭の用具の提供を受けられない選手もいるから不公平」という、否定的な見方を紹介しました。
ただ、トップアスリートが企業から最新鋭の用具の提供を受けることについては、必ずしもデメリットだけというわけではありません。あなたなら、トップアスリートが企業から最新鋭の用具の提供を受けることを、どのように擁護しますか。400字以内で意見を書きなさい。
なお、書き出しは「トップアスリートが企業から最新鋭の用具の提供を受けることは、悪いことではない。」とすること。

◎答案例1◎
トップアスリートが企業から最新鋭の用具の提供を受けることは、悪いことではない。レーザー・レーサーなどの用具をもらうことができれば、良い記録が出せてトップアスリートにはメリットである。また、それを作った企業やその国は、技術力が世界に認められることになる。もし、これが他の選手や企業のことであった場合でも、その用具よりも良い物を作ろうと、企業同士が切磋琢磨することになり、結果的にはメリットとなる。このような事が繰り返され、技術は発達してきた。例えば、陸上のシューズは百年前と比べると半分ほどの重さになり、タイムもぐっと縮んでいる。どこの選手が良い記録を出しても、そのスポーツを観る人にとってはメリットだ。大きく取り上げられ、スポーツをする人、その世界に活気が生まれる。このように、トップアスリートが用具をもらうと現れるメリットはたくさんある。

◎答案例2◎
トップアスリートが企業から最新鋭の用具の提供を受けることは、悪いことではない。最新鋭の用具の提供を受けられない選手からすれば不公平だと感じるが、立場を変えてみるとメリットはある。まず、選手に用具を提供する企業だ。企業からすると、トップアスリートが自分たちの作った用具を使うことで、世界中に向けた広告となる。私はよくテレビ中継でサッカーの試合を観ることがある。その時に選手の着ているユニフォームやスパイクなどに企業の名前やロゴがあると、それはとても印象に残る。選手が広告になるのにはとても大きな役割があると思う。また、私たちからしてもメリットはある。それは、より良い最新鋭の用具を使うことで選手がより良い記録を出すことができるからである。選手が世界記録を塗り替えると、過去の人類に勝つことができた気がして私は嬉しい。私は、企業がトップアスリートへ最新鋭の用具を提供するのは、メリットもあると思う。


◎講評◎
今回の課題の場合、選手のメリットとして好記録を出せること、企業のメリットとして宣伝効果があることを挙げるのは、さほど難しくはなかったと思います。そこからさらに踏み込めたかどうかで、評価が分かれました。選手の生活面の安定、企業の新商品開発にまで目を向けることができれば、たいしたものですね。「スポーツは選手にとって仕事であり商売である」という観点から論じたものもありましたが、これはこれでいっそ清々しいと思いました。言われてみれば、スポーツに限らず、自分の身体(に備わった能力)ひとつがモノをいうジャンルは多いのであって(たとえば、芸術)、スポーツだけをことさらに商売から遠ざけようとするのは、おかしな気がしなくもないですね。



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