公開日 2017.8.31

Z会中高一貫コース「総合」講座は、「人文分野」「自然分野」「社会分野」の中から、毎月1分野に取り組み、答えがひとつではない問いに自分なりの答えを見つけ、それを他の人と深め合いながら解決できるようになることを目指した講座です。
ここでは、「総合」講座の問題と実際に会員から寄せらせた解答、担当者の講評をご紹介していきます。

◆中1 _総合分野 食情報との向き合い方〜食品表示を読み取ろう〜

◎出題のねらい◎
身のまわりに溢れる食に関する情報。
「これを食べると体にいい!」「この食品は体に悪い!」といったキャッチーな言葉が踊っています。
メディアや広告が一方的に発する情報では、真実性よりも話題性や意外性が優先されがちです。これらの情報を鵜呑みにすれば、食生活が振り回されかねません。
中1の7月号では、食情報と接する際の目のつけどころを扱い、食品表示から定量的に判断する力を養います。

◎問題◎

あなたの同級生の友人(女子)が、「毎朝、牛乳飲んでるんだけど、ダイエットしたいから、低脂肪牛乳にかえようかな。」と言っています。下に挙げた内容をふまえて、具体的な数値を示しながら、彼女にアドバイスしなさい。ただし、「脂質の摂取量」「エネルギー」の語句を両方とも用いること。
  • 乳脂肪分…牛乳3.8%,低脂肪牛乳1.0%
  • 12〜14歳女性の推定エネルギー必要量…1日あたり2400kcal
  • 脂質1gが体内でうみ出すエネルギー…約9kcal

◎答案例1◎
ふつうの牛乳だと、脂質の摂取量は1杯200mLとして、200×0.038=7.6gである。エネルギーの摂取量は7.6×9=68.4kcalである。あなたのエネルギー必要量は1日あたり2400kcalであるため、あまり影響はないと考えられる。しかし低脂肪牛乳は確かにエネルギーは少ないかもしれないが、ぼくはあまりおいしくないと思うから、ふつうの牛乳をおすすめする。

◎答案例2◎
100gあたりの脂質の摂取量は、牛乳は3.8g,低脂肪牛乳は1gになる。これらからとれるエネルギー量は、牛乳は9×3.8で34.2kcal,低脂肪牛乳は9×1で9kcalになる。だから、1日では変化は見られないけれど、毎日続ければやせられると思う。

◎答案例3◎
一食分に飲む牛乳をだいたい200mLとすると、牛乳に入っている脂肪分は200×0.038で7.6gになります。低脂肪牛乳は、200×0.01で2gになります。それぞれ、エネルギー量は牛乳で7.6×9=68.4kcal,低脂肪牛乳で2×9=18kcalのため、牛乳から低脂肪牛乳に変えた時の減らせるカロリーは50.4kcalになります。これは、50.4÷2400×100で1日の必要量の2.1%にしかなりません。たったの2.1%減らしたところであまり大きな効果は得られないと思います。


◎講評◎
今回の課題では毎朝何mLの牛乳を飲むか問題文に与えられていないので、自分で量を決めなければなりません。想像力を働かせて、何mLとするか自力で考えることが求められました。感想欄では、「条件が少なくて大変だった」「難しくてくじけそうになった」といった声が寄せられた一方で、「実物を見ながら調べて楽しかった」「栄養のことなど一度も考えたことがなかったのでこれからは考えたい」など嬉しい声も届きました。
「答案例1」では「おいしさ」という独自の視点でアドバイスをしてくれました。低脂肪牛乳についても計算して「どれだけ摂取カロリーが減るのか?」が書けると、さらに良くなります。
「答案例2」ではエネルギー量を求めるところまでわかりやすく書けています。「毎日続ければやせられる」という結論を補強する証拠を集めればより説得力のある答案になります。
「答案例3」では文章の論理構成が完璧でした。

◆中2 _総合分野 あなたならどうする?〜データを読み,自らの意見を伝えよう〜

◎出題のねらい◎
統計教育が盛んになっています。それは、身のまわりにはいろいろなデータが存在し、そのデータをどのように解釈するかで、全く異なる結果に結びつくことがあることも一つの理由でしょう。自分の解釈と、他の人の解釈がどう違うのかを知ることで、多様な考え方に触れることができますね。
今月号では、予防接種を題材として、あるデータから情報を読み取り、予防接種を受けるかどうかについて考えてもらいました。
添削課題では、実際のデータを用いて、読書量や図書館の利用について考察をしてもらいました。事前に予想をしてみて、データから読み取った結果と自分の感覚が合っているかを確認してみるのもよいでしょう。


◎問題◎

(i)で説明したような状況である理由(あなたの仮説)と、あなたの仮説が正しいことを説明するためにどのような調査や考察を行えばよいかを120字以内で説明しなさい。
※(i)では各都道府県の貸し出し業務実施情報のデータなどを踏まえて、東京都と滋賀県の図書館の利用状況を比較し、仮説を立てています。

◎答案例1◎
滋賀県の図書館の帯出者数が少なく、それとくらべて貸出冊数が多いのは、図書館の利便性が原因だと思う。図書館の位置や県の面積に対する個数などを調べ、東京と滋賀でデータを比べてみる。個数、位置的にも不便だった場合、(2)(i)のような状態になるのではないか。

◎答案例2◎
同じ面積でも都市では図書館の数が多く、地方では都市よりも少ないと思う。なので面積に対する図書館の数、家から図書館までかかる時間、図書館への行き方を東京と滋賀のそれぞれで調べればよいと思う。

◎答案例3◎
その県の人口が集中しているところに図書館が多くあればすぐに図書館に行くことができるが、そうでないと車や電車を使わなければ簡単に行くことができない。そのため、図書館のある場所と周辺の人口について調査する必要があると思う。


◎講評◎
今回取り上げた答案は、表現は違うもののどれも「図書館への行きやすさ」に着目していました。東京都と滋賀県を比べてみると、「同じようなところ」と「違うところ」があることがわかると思います。同じ日本人なのだから「同じようなところ」があるのは当然として、問題は「違うところ」があることです。この「違うところ」がある原因は何なのだろうか?ということを考えてまとめると説得力のある答案になります。
「答案例1」は、利便性という言葉で表現しています。東京と滋賀のどちらが利便性が悪いのか、図書館の数や位置がどうだったら利便性が悪いのかといったところまで踏み込んでかけるとさらによい解答になります。
「答案例2」では、多くの調査方法を挙げていますね。このような調査によって東京と滋賀にどのような違いが生じるかといった点も答案にあるとベストです。
「答案例3」は図書館周辺の人口について着目しています。東京と滋賀について、この数値がどのように変わると予想できるかといったことが書かれると得点につながります。



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