《目次》

  1. 早稲田大学政治経済学部の一般入試改革について
  2. 「学部独自試験」とは?
  3. 大問1(日本語長文問題)の概要
  4. これまでの早稲田大学政治経済学部・国語の問題との違い
  5. どう対策するか?
  6. 大問2(英語長文問題)の概要
  7. これまでの早稲田大学政治経済学部・英語の問題との違い
  8. どう対策するか?

1. 早稲田大学政治経済学部の一般入試改革について

早稲田大学の政治経済学部では、2021年度から一般入試による選抜方法を変更します。
具体的には、
  • 大学入学共通テスト
  • 英語外部検定試験
  • 学部独自試験
の合計点により選抜する方式に変更されます。
学部独自試験100点のうち、3割程度(全体の15%程度)は英語外部検定試験が配点されます。
※英語外部検定試験は大学入学共通テストで活用される試験を前提として検討中。

「学部独自試験」については、早稲田大学から公表されたサンプル問題がありますので、今回、分析を行いました。

2.「学部独自試験」とは?

早稲田大学のホームページには「学部独自試験」について次のような説明があります。
学部独自試験は1科目のみを90分間で実施します。なお、日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する形式とし、記述解答を含むこととします。

今回公表されたサンプル問題は大問2つから構成されています。

大問1は日本語の文章読解問題です。
早稲田大学政治経済学部教授・河野勝氏の文章から出題されました。
(河野勝「復興を支援することは、なぜ正しいのか」(金慧氏との共著)『政治を科学することは可能か』中央公論新社、2018年所収)。

ジョン・ロールズの正義論とそれに対する批判とを対比し、「不遇な人々に対して、どのように向き合うことが道徳的に正しいのか」について論じた文章です。

大問2は英文の読解問題です。
問5で、問題文を踏まえて300字以内の日本語で記述する問題が出題されました。

それぞれの大問(日本語長文問題、英語長文問題)について詳しくみてみましょう。

3.大問1(日本語長文問題)の概要

大問1(日本語の文章読解問題)の配点は40点です(英語は30点)。
大問1・2を90分で解く必要があります。
大問1では7000字を超える文章が出題されました。
小問は全部で6つです。
  • 脱落文挿入問題…2つ(問1と2)
  • 文章整序問題…1つ(問3)
  • 記述問題…2つ(問4と問5。それぞれ30字以内と50字以内)
  • 下線部の内容理解を問う選択問題…1つ(問6)

4.これまでの早稲田大学政治経済学部・国語の問題との違い

大きな違いとしては、2点あります。
  • 古文、漢文の出題なし
  • 「考えて、書かせる」記述問題の出題(思考力・表現力をより問う問題へ)
サンプル問題では古文、漢文の出題はありませんでした。
現代日本語の読解能力を問う問題のみ出題されています。

また、これまで以上に「考えて、書かせる」記述問題があるのが特徴です。

今回公表されたサンプル問題の問4と問5をみてみましょう。
問4
文中の5に入る文として適切なものを、記述解答用紙に30字以内で記せ。

問5
文中の6には、Aの境遇をDと対比して説明する文が入る。記述解答用紙に50字以内で記せ。
サンプル問題と比較するために、2018年度の政治経済学部・国語の大問2、問十六をみてみましょう(一部省略しています)。
問十六 空欄6には「美人投票論」について説明した一文が入る。その文を記述解答用紙の空欄を補うかたちで完成させよ。その際、次の条件にしたがうこと。
  • 全体を「株式市場の人々は、自分が〜投票する」という形式にまとめること。
  • 文の途中に「美人」、「他人」、「投票するのではなく」の語句を用いること。
  • 記入欄には三十五字以上四十字以内で記入し、読点も字数にふくめること。
過去3年、国語で出題された記述問題をみると、上記の問十六のように「ガイド」が存在しているため、何を書くべきかある程度見当がつけやすくなっていました。

ところが、今回公表されたサンプル問題では、従来の入試と違って「ガイド」がなく、より思考力・表現力が問われる出題へ変化しています。

5.どう対策するか?

早稲田大学のアドミッションポリシーには次のような文言がみられます(下線部は筆者)。
本学の教育に耐えうる基礎学力を持ち、本学の理念である進取の精神に富んだ知的好奇心が旺盛であり、同時に、地球社会に貢献する意志が強く勉学意欲の高い学生を世界のあらゆる地域から迎え入れる。

サンプル問題をみると、受験者の「基礎学力」を測るテストとして適切な難易度になっています。「文章を読んで理解し、聞かれていることに正確に答える」という、ごく当たり前のことができるよう、国語の学習に日々取り組んでいけば対処できるでしょう。

具体的な対策としては、
  • 政治経済に限らず、様々なテーマの文章を日ごろから読む
(様々なテーマに関する予備知識が多少でもあると、初見の文章も内容把握が容易になります)

  • 文章の構造も考えながら読む
(同じことを言っている箇所はどこか、対立することを言っている箇所はどこか、など)

  • 30字〜50字程度の記述問題に定期的に取り組み、先生などに添削してもらう
(書くべき要素は何かを意識して書きましょう)
といったことが挙げられます(もちろん、過去問も有効活用してください)。

6.大問2(英語長文問題)の概要

英語の問題は30点の配点です(国語は40点)。

問題文のテーマは「日本人の英語教育における年代別の変遷と地域による違い」です。語数としては本文だけで700語程度、単語の難易度も高くありません。

しかし、図表が3つ示されており、設問も本文から実際に図を描かせるもの、選択式で正しい図を解答するものと、図表に絡めた出題がされています。

また、「問題文を踏まえ、理由とともに」300字以内の日本語で述べるという出題も目新しく、入試改革のポイントとなる問題といえます。

7.これまでの早稲田大学政治経済学部・英語の問題との違い

純粋な英語の運用能力だけではなく、より自分で考え、それを表現する力が測られるということがこれまでとの大きな違いです。

従来の早稲田大学政治経済学部の英語は、論説文を中心とした出題で、出題形式は内容一致文選択、語句・文整序、空欄補充、最後に自由英作文が課される、というのが近年の傾向でした。本文の分量が多く、速読速解力が求められているのが特徴です。

一方、今回発表されたサンプル問題では語数も多くなく、文章自体は比較的平易と言えます。しかし、先に記したように、本文と図表の両方の情報を組み合わせて答えを導く必要がある問題が出題されており、本文の内容を理解するだけでは解けず、複数の情報を組み合わせて答えを導く力や数理的な処理力が求められています。

さらに、実際に図表を描いたり、問題文を踏まえて理由とともに日本語で論述したり、本文や図表の内容を理解し、それらを踏まえ表現したりする力が問われています。従来の出題と比べると、「英語で論文を読み、それらを基に自分で論文を執筆する」という、大学入学後に学生が英語を使用する場面に近い、実際的な英語力が試されると言えるでしょう。

ここで述べる実際的な英語力とは、「英語を使って何ができるか」、言い換えれば英語が手段として用いられているということです。英語の運用能力そのものは外部検定試験でも測ることができますから、それだけでは分からない受験者の思考力を評価したいという大学の意図が見えます。

また、これまでは設問指示、選択肢ともに英語で書かれていましたが、サンプル問題では問題指示が日本語で述べられ、これまでより複雑になっていることも異なっています。従来の出題では、最後に英問英答の自由英作文が出題されていましたが、サンプル問題では日本語の設問、日本語での記述に変更されています。

8.どう対策するか?

ここで、早稲田大学政治経済学部のアドミッションポリシーを確認してみましょう。
受験生に期待されるのは、学習の土台となる母語および英語を核とする言語運用能力や論理的思考力、自身の立ち位置を認識するために必要となる歴史・文化的知識、そして世界中の人々と交流しながら様々な問題に立ち向かう行動力であり、上述の各種入学試験ではこれらの知識・能力を多面的に考査することになる。

今回のサンプル問題では、より如実にアドミッションポリシーが体現されていると言えそうです。自分の考えを表現することは、急に身につけられるものではありません。実用的な英語学習を通じ、普段から自分の考えを表現する練習を積むことが一層求められるでしょう。

具体的な方法としては、まず英文の主旨を理解できるだけの英語力を身につけるため、今まで通り語彙や文法の知識を習得することは必要です。その上で、日本語でも英語でも、自分の考えを文章でまとめ、論理的な整合性があるか添削してもらうというのも良いでしょう。さらに今回のように基礎的な数学力が求められる問題に対応するには、数学の学習も疎かにはできません。「英語の問題だから、英語の語彙と文法が理解でき、文章が読めれば良い」ということではなく、幅広い視野を持って学習をすすめていっていただきたいと思います。

ぜひ一度、サンプル問題を実際に解いてみて、どれくらいの時間がかかるのか、どういった種類の問題が苦手なのか、といった点を確認してみましょう。

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公開日:2018/08/17