公開日 2018.9.26

Z会の通信教育 数学教材責任者 花岡正司

2020年から始まる新大学入試。
センター試験の後継となる「大学入学共通テスト」では、記述問題の導入(数学・国語)や英語4技能の総合的な評価などといった大きな変更が予定されています。
社会の変化に応じて形を変えてきた大学入試ですが、同時にその変遷からは、変わらない出題-大学が一貫して学生に求める力-もわかります。
時代によって変わること、変わらないこと。
京大入試には、その両方がよく表れています。
ここでは、出題傾向や学生に求められる力、そこから伺える入試対策について、Z会の数学教材責任者が解説します。

◆数学に見る、京大入試の20年

1995(整数問題)

(1995年 京都大学 個別試験問題から引用)

20年以上前の京大の問題です。東大で整数問題が頻出となる前から、京大では整数問題が毎年のように出題されていました。また、この頃の京大の問題は適度に小問に分かれていて、前問が問題解決の誘導となる設問になっているパターンの問題が多かったですね。この問題も(2)の方針を決める際に、(1)が効いている問題です。


2006(問題文の短い論証問題)

(2006年 京都大学 個別試験問題から引用)

なんと短い問題文!この頃から、誘導のない単問が多くを占めるようになりました。以前のよく練られた小問に分かれた問題は、前半の設問だけ解いて、部分点で合格できるとの批判があっての変化でした。この問題は、その中でも問題文が最も短くストレートな問題ですね。論証の京大と言われるように、答えだけでなく、その論理を問う姿勢が高いのも特徴。この問題も特別な難問ではありませんが、どのように論理を構成するかが問われる問題です。


2018(空間図形)

(2018年 京都大学 個別試験問題から引用)

最後は今年度出題されたばかりの問題です。近年では、誘導のない単問をベースとしながらも、必要に応じて誘導つきの問題も見られるようになりました。また、この問題のように、京大では図形の問題が頻出で、とくに図形的特徴を持つ空間図形の問題がよく題材になります(本問にAB=CDを加えるとすべての面が合同な等面四面体となりますが、これは過去に何度も出題例があります)。京大の図形問題の特徴としては、初等幾何、三角比、ベクトル、座標といった道具の中から、どれを使って考えるべきか、道具の選択がカギになるものが多く、この問題も例外ではありません。

時代はもちろん、年度によって、変化が見られるものの、以下のような力が問われるという点は、ほぼ変わっていません。


京大数学で求められる3つの力
整数問題や確率が頻出で、思考力、発想力が求められる
図形問題も多く出題され、適切な解法(知識)の選択まで含めた、図形的な見方・考え方が要求される
論証問題が目立ち、正確に論理を構築する論証力、記述力が求められる

◆京大数学の対策

前述のとおり、京大数学では自ら考え方を工夫し、解法を選択し、論理を組み上げ、正確に記述する(*)という一連の力が必要、というわけですから、「パターンAの問題だから解法Aで」という考えでは太刀打ちできませんね。
少しずつでもよいので、(*)のような経験を積むこと、つまり解き易い問題ばかりではなく、時間が掛かってもよいので、やや難しい問題や見たことのない問題に、試行錯誤しながら挑戦し、自ら答案にまとめるという経験を積むことが大切です。とはいえ、基本的な考え方を理解したり、計算力を高める練習なしに、いきなり難しい問題ばかりに挑戦したり、我流のやり方に固執してばかり、というのもマイナスです。
その辺りを考慮し、Z会では、高1・高2からしっかり入試を見据えたカリキュラム学習で、また高3では徐々にレベルを上げて、そのような経験を通して、自分の論理の間違いに気づき、別解で多様な考え方を吸収すれば多くの武器を獲得できます。第三者に答案を添削してもらい、復習することが大切だと考えています。
基礎を大切にしながらも、少しずつ背伸びをする経験が、発想力や論証力、記述力の大きな伸びにつながっていく、というわけです。

◆学生に求められる力

京大数学の傾向や求められる力は、京都大学のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)に基づきます。京都大学のアドミッション・ポリシーを抜粋すると以下のとおりです。
1. 高等学校の教育課程の教科・科目の修得により培われる分析力と俯瞰力
2. 高等学校の教育課程の教科・科目で修得した内容を活用する力
3. 外国語運用能力を含むコミュニケーションに関する力
このような基礎的な学力があってはじめて、入学者は、京都大学が理念として掲げる「自学自習」の教育を通じ、自らの自由な発想を生かしたより高度な学びへ進むことが可能となります。
京都大学は、本学の学風と理念を理解して、意欲と主体性をもって勉学に励むことのできる人を国内外から広く受け入れます。
(京都大学アドミッション・ポリシーより一部抜粋)
キーワードは「研究」ということです。先日、京都大学の望月新一教授が、数学の難問「ABC予想」の証明について、学会誌の査読を通過したというニュースが話題になりました。数多くの名だたるノーベル賞やフィールズ賞の受賞者の存在からも、研究大学の西の雄として、更にその存在感を高めたい、そして、入学者にもその基盤となる学力を求める、ということです。
分析的に掘り下げたり、俯瞰して構造を掴むことで、本質を見抜いたり、学んできた事柄の中からどれを使うか、どう応用するか、そして自然科学の言語として、しっかり論理的に考え、記述できるか、そういった部分を試しているといえるでしょう。

◆京大入試のこれからと、取るべき対策

現在、教育改革、入試改革が進んでいて、2020年から新大学入試がスタートします。変化の激しい時代の到来に向け、知識を問う入試から、知識の活用や応用、他者との協働やグローバル、といった要素を重視した教育や入試に変わりつつあります。
実は、京大でも入試改革の一つとして、すでに特色入試が導入されています。特色入試では、高校での活動と、京大で学ぶ意欲や志が総合的に評価されます。学部により、学力型AO、推薦、後期型など、選抜方法は異なりますが、研究大学を指向する京大らしい制度で、特定の分野についての興味関心が高い高校生は、選択肢の一つとして検討してみてもよいかもしれません。
一方、共通テストについては、2017年末月にプレテストの内容が公表されましたが、その内容は、現在のセンター試験と大きく変わりました。数学でも、対話形式で文章の長いものや日常生活の場面を取り上げたものなどが多く出題されました。まだ、最終型ではないものの、共通テストについては、大きな変化が予想されているところです。
また、現在、新たに導入される高等学校の新指導要領が検討されていて、数学Bにある「ベクトル」が数学Cに移動する案となっていますから、将来的には出題範囲にも変化がありそうです。
加えて、大学の機能分化という方向性を踏まえると、共通テストや各大学の入試はいろいろな変化が予想され、Z会でも注視しているところですが、京大について予測すると以下のとおりです。

◆これからの京大入試

京大の個別試験(一般入試)対策については、研究大学としての変わらない位置づけや、現在の入試問題がすでに十分、思考力、記述力などを試す本質的な問題であることを踏まえると、仮に多少の変化はあったとしても、大きく変化する可能性は少ないと予測しています。その意味では、京大を志望する方の対策としては、前述で述べたとおりでよく、とくに変える必要はないでしょう。
小手先の対策で対応できない本質的な出題をしているからこそ、その対策もこれまでどおりで十分ということです。
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