公開日 2016.1.29

思考力と表現力を測る、新しい大学入試

こちらの記事でもお伝えしたとおり、大学入試センター試験でも抜本的な改革が実施されることとなりました。現行の大学入試センター試験が廃止され、2021年度から「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」が導入される見通しです。

大学入学者選抜の改革スケジュール
(文部科学省資料を基に編集部作成)


現行の大学入試に代表される、画一的な指標で一斉に試験を行う方法では、どうしても知識の暗記・再生を評価する視点に偏りがちになっていました。これでは「思考力・判断力・表現力」、あるいは、主体性を持って多様な人々と協働する態度など、真の「学力」を十分に育成・評価できない、という懸念があります。2021年に導入される予定の新しい大学入試は、それを改善する取り組みとして実施されるものです。

記述式問題の導入へ

大学入試のおける評価方法は、この「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」に加え、「小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学者希望書、学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、その他受検者のこれまでの努力を証明する資料などの活動」が配慮されます。

これらは「アドミッション・ポリシー」として明確化され、各大学の入学者選抜の設計図として公開されます。大学入学試験に際して、多元的な評価を重視した個別選別のシステムが確立される予定です。

大学入学者選抜改革の全体像(イメージ)


では、試験の形式的な部分は、どのように変化するのでしょうか。その変更点の1つが、記述式が導入されることです。

マークシート方式では、「思考力・判断力・表現力」のうち、思考力や表現力を問うことができていませんでした。記述式の導入により、思考や表現を測るための出題が可能となる見通しです。

大学入試改革にも、ICT利用の波がやって来る

さらにもう1つ、大きな変更点がICT導入です。すでに多くの学校で、タブレットを活用した授業がスタートしていますが、大学入試にも導入される可能性があります。

先進国で構成される経済協力開発機構(OECD)では、3年ごとに15歳の生徒の技能と知識を測定する学習到達度調査(PISA)を実施しています。

ここでは「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3科目が評価されてきましたが、近年「デジタル読解力」も調査対象とされるようになりました。さらにPISAによると、日本におけるICT利用について、娯楽目的でのモバイル端末利用は促進されているものの、学習・教育に関するICT利用率は、OECD諸国の平均に比べ、低いという結果が出ています。

そうした情勢を踏まえ、「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」でもICT利用が促進されます。それを明確に表しているのがCBT方式(Computer Based Testing)の導入です。

CBT方式とは、コンピューターを利用して実施する試験方式を指します。受験者はコンピューターに表示された試験問題に対して、マウスやキーボードを用いて解答します。

合教科・科目型の問題の設計イメージ(案)
  1. 評価する思考力・判断力・表現力を明確化。
  2. 明確化された思考力・判断力・表現力が、どの教科・科目等においてどのような力として主に育成されるか特定。
    例えば…… 言語 ⇒ 国語・英語、 数 ⇒ 数学、 科学 ⇒ 理科、 社会 ⇒ 地歴又は公民
    問題発見・解決力 ⇒ 総合及び各教科・科目、 情報活用能力 ⇒ 情報
  3. 特定された教科・科目等において育成される力を、他教科・科目等のどのような文脈に当てはめていくことが効果的かを検討しつつ、教科・科目等の組合せを決定し作問。
※2014年12月22日 中央教育審議会発表資料より

CBT方式では、コンピューターを利用することで、個々人に向けた多彩な出題パターンを設定できるようになります。さらに、音や映像といったさまざまなメディアを組み合わせた出題が可能となるため、問題用紙の文章を読み解き、回答していく現行の方法より、バリエーションが広がる可能性を秘めています。これらは、マークシート方式ではできなかった、思考や表現に波及できるものとなります。