公開日 2016.12.16

◆中1 _人文分野 『個性』について考えてみる

◎出題のねらい◎
個性を尊重すべし、と言われるときの「個性」とは一体何を指しているのか。またその「個性」は、いついかなる場合でも尊重されなければならないのか。個性を尊重すべし、というのは、現在、あたかも疑問を差し挟めないかのように扱われている理念の一つだが、それに対して、異議申し立てが可能かどうかを考えてもらう。

◎問題◎

現代の日本で、「個性」はどのように扱われるべきか?「個性」のあり方をあなたなりに定義したうえで、あなた自身の考えを300字以内で述べなさい。
◎答案例1◎
私は、「個性」とは他人からの圧力などによって変えられることのない、自分の強い意志によってできた自身の特徴としてあるものだと思う。だから、現代日本で「個性」とは他人と比べられない、関係のないものとして扱われるべきだと考える。しかし、オンリーワンなどという考え方からもわかるように、他人と比べた上での自分の特徴を「個性」ととらえる風潮は日本に根強く残っている。この現状を変えるためには、一人一人が人と向き合うときに今まで出会った人たちと重ね合わせないよう心がけることが大切だと思う。

◎答案例2◎
個性とは、児童生徒一人一人が持っている、すぐれた部分のことだと思う。僕はこの個性について、わざわざ学校側があれこれ言って個性をのばすようなことはしなくてもよいと思う。個性は一人一人みんなちがうため、学校が全員の個性をのばしていこうとすることは、無理があると思う。このように、学校が一人一人の個性をのばしていこうとするよりは、一人一人が自らの手で個性をのばした方がいいと思う。自分の個性は自分が一番わかっているため、このようにすれば、作業効率がよくなると思う。つまり、現代の日本では、学校が個性をのばすことを強制するのではなく、児童生徒一人一人が好きなように個性をのばしていけばよいと思う。

◎答案例3◎
個性は、その個人を特徴づけている性質・性格であり、良いものに限らず、悪いものも含まれると思う。もちろん、良い個性のように他人に良い影響を与えるものは教育するときに助長すべきだと思う。一方で悪い個性も一応、その人の特徴であり、消してしまうと、画一的な人間ばかりそろってしまうので、少しでも他人への影響を和らげるように教育するようにし、その人特有の個性を完全に消失させず、良いものはさらにのばしていくといった教育や社会の考え方が日本においても重要だと思います。

◎答案例4◎
現代の日本では、「個性」はむやみに伸ばすことをせず尊重すべきだと私は思う。なぜなら、「個性」はもともと身に付いているものであり、それは自分以外の誰かが何かをしても変わらないと思うからだ。例えば、お調子者の誰かがいたとする。その人をどれだけ静かな人にしようとしても、おそらく完全にお調子者の個性が抜けることはないだろう。逆に、お調子者という部分を伸ばそうとしてみたとする。それは他の人が伸ばせるだろうか。それはその人自身が伸ばさないと伸びないだろう。このように「個性」とは、他の人の手によってではなく、自分の手によって変わるものであるため、むやみに伸ばしたり抑えたりしてはいけないと思う。

◎講評◎
答案の中には、尊重すべきとされる「個性」に含まれるある一定の価値観に感づいていること、そしてそれに対する拒絶の意志がうかがわれるものも見られ、世間で言われていることを鵜呑みにしない態度が培われつつあることがわかります。

◆中2 _人文分野 世界の言語を知り、外国語教育を考える

◎出題のねらい◎
中学校学習指導要領の「外国語教科では原則として英語を履修させる」という内容の記述に対する賛否を論じてもらいました。
これは、中学生が当たり前のように学習している英語(実は必修科目ではなく、「外国語」という教科の一選択肢に過ぎない!)について、「本当に全員に英語をやらせるのがよいのか?」「他の言語への可能性も開くべきではないのか?」という観点で見つめ直し、常識を疑ってみてもらうことを目的としています。

◎問題◎

現行の中学校学習指導要領では、以下のように規定されています。
第2章 各教科 第9節 外国語
第3 指導計画の作成と内容の取扱い
2.外国語科においては、英語を履修させることを原則とする。
この原則に対する賛成または反対の意見を、理由も含めて400字以内で述べなさい。
◎答案例1◎
私はこの原則に賛成だ。なぜなら、英語は今最も話者が多いと考えられる言語だからだ。たしかに、第一言語話者の数では、英語は中国語やスペイン語に負けている(『データブック・オブ・ザ・ワールド2016』(二宮書店)より)。しかし、公用語や準公用語として見た場合、英語は世界で最も話者数が多く、世界で最も通じやすい言語だと言える(HP『世界の言語ランキング』より)。ここでそもそもなぜ外国語教育を中学校学習指導要領に入れたのか調べてみると、文部科学省の報告によると外国語学習を通して言語や文化に対する理解を深めコミュニケーション能力を養うためだと書いてある。よって、英語を履修させれば世界中のより多くの人々とコミュニケーションをとれ、その人々の母国の言語や文化などの理解を深めることができると考えられる。よって私は、外国語学習においては、英語を履修させることを原則とするという原則に賛成である。

◎答案例2◎
私は英語を原則とすることで中学生の視野狭窄になると思うため、この原則に反対です。日本人は英語をしゃべる事が出来れば世界の人とコミュニケーションを取る事ができ、世界の文化を知る事が出来ると考えています。しかし、世界の母語として最も使われている言語は中国語で英語を母語として使っている人より8億6200万人も多いです。中学校学習指導要領で英語を原則とする事は英語を学べば世界の事を理解できると中学生に錯覚させて結果的に視野狭窄につなげてしまうと思います。(後略)

◎答案例3◎
私は、この原則に賛成だ。今、世界では英語が広く国際語として使用されている。私はフィギュアスケートが好きで、テレビでも試合をよく見るが、最近日本の選手が他の国の記者のインタビューに英語で応えるという場面を見る事が多い。スポーツの場だけではない。学者や研究者たちも論文を英語で発表する事が多いように思う。このように、現在国際語である英語を学ぶと、世界規模での活躍ができる可能性が開け、自分自身の視野も広がっていくと思う。もちろん、“英語だけが重要”と言うのではない。しかし、まず英語という「母語でない言語」を学ぶことによってさらに他の言語にも手を伸ばしやすくなるのではないか。英語以外の言語を学びたい人にとっては、その準備段階として英語を学ぶ、というのも良いと思う。このような理由で、私は英語を外国語科として履修させるという原則に賛成である。

◎講評◎
答案では、英語の国際性、有用性を根拠に、指導要領の記述に賛成する意見が多く見られましたが、「英語が大切」という「常識」を疑う視点を得た人も多かったようです。
また、英語以外の言語を履修する可能性を広げるべきだという考えで論を展開したものも見られました。


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