Q&A一覧

Q1.新大学入試システムはいつから導入されますか?

2016年4月時点で中学2年生のお子様が大学受験する際に適用される予定です。

Q2.なぜ、センター試験から「大学入学希望者学力評価テスト」に変わるのでしょうか?

毎年50万人以上が受験する大学入試センター試験では、基礎的な学習の達成度が判定されます。点数での評価が中心となることから「正答に関する知識の再生」のみが問われ、勉強内容を暗記中心に偏らせてしまう、という課題が生じていました。これでは、新たな時代を見据えた「生きる力を育む」教育改革との間に大きなギャップが生じてしまいます。

この課題を解消するために導入されるのが「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を中心とした、新しい大学入試制度です。ここでは基礎的な学力だけでなく、高等学校教育までに身につけた「生きる力」「確かな学力」が多面的・総合的に評価されます。今までは点数による評価で公平性が保たれてきましたが、新しい大学入試制度では、1人ひとりの多様な力を多面的に評価することで、一義的な評価軸に寄らない公平性を保とうとしています。

Q3.どのようなテスト形式になるのでしょうか?

マークシート方式だけではなく、記述方式が導入されます。
 

Q4.「大学入学希望者学力評価テスト」では、どのような対策が必要になるのでしょうか?

国語と数学で記述式が導入されますが、記述対策だけに気をとられることなく、「思考力・判断力・表現力」をバランスよく伸ばしていく必要があります。
具体的には、
  • 自分の考えをまとめる、記述式の訓練を着実に積み重ねる
  • 知識を活用し、答えが必ずしも一つではない問題に、様々な観点からアプローチして、論理的に問題の解決策を考え、それを他者に伝える
  • 学問や世の中の問題に広く関心を抱き、社会をよりよくしようとする意志をもって、日々の学習と社会や自分自身のありかたを結びつけて、主体的に学ぶ姿勢を培っていく
といった観点を大事にして、学習を進めていきましょう。

また、英語では、「話す」「書く」「聞く」「読む」の4技能を重視する方向です。自分の実力を客観的に把握するために、民間の検定試験を受けることをおすすめします。
 

Q5.新大学入試システムの導入によって、大学入試は変わることはありますか?

従来の画一的なペーパーテストから、「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」とアドミッションポリシーに基づく様々な評価方法(面接、集団討論、小論文、高校での学習・活動成果など)を組み合わせ、受検者の学力を多面的・総合的に評価する入試へと、選抜方法を転換することが求められています。
 
これにより、高校生が大学に入るための教育も、知識の暗記・再生が中心となるペーパーテスト対策から、真の「学力」を育成するための主体的な学びへと変わっていくでしょう。
 

Q6.すでに「大学入学希望者学力評価テスト」の傾向が見えてきている入試問題はあるのでしょうか?

「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の策定については現在、文部科学省が中心となり、審議・検討が進められています。いずれの教科・科目も「思考力・判断力・表現力」の判定機能を強化することが基本です。すでに中学入試でも、現在の社会情勢をベースにしながら自らの考えを問う問題が出題されはじめています。

2015年8月には次期学習指導要領の答申素案が公表され、そこには選択科目として、数学と理科を統合した「数理探求」を新設する案が盛り込まれました。すなわち、数学と理科の知識・技能を総合的に活用して主体的な探求活動を行う新たな科目であり、高大接続改革を見据えた「思考力・判断力・表現力」を適切に評価する科目の一例ともいえます。

また、コンピューターを利用したCBT(Computer Based Testing)が導入され、
「複雑な文章の構成力を問う問題」「統計的方法を用いて複雑な現象を表現する問題」「多様な表現形態によるさまざまな資料や動画を活用した出題内容の拡大」「テキスト入力を利用した記述式問題」なども検討されています。

Q7.各大学入試で重要視されるというアドミッション・ポリシーとはどういったものですか?

高大接続改革では、高等学校で行われる「高等学校基礎学力テスト(仮称)」と、大学が個別に行う入学者選抜の新テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が実施されますが、特に大学の個別選抜では「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」に加え、調査書・面接・小論文・プレゼンテーション等による多元的評価がなされます。その際に示される大学側の受け入れ方針が、高大接続改革のガイドラインに基づいた「アドミッション・ポリシー」です。

アドミッション・ポリシーには「大学がどのような力を持つ学生を受け入れたいのか」、「『知識・技能』『思考力・判断力・表現力』『主体性・多様性・協働性』の3要素について、具体的にどのような能力を求めているのか」、さらには「それらの評価基準・評価方法」が盛り込まれます。アドミッション・ポリシーとは、大学の求める学生像を示す「入学者選抜の設計図」と言えます。
 

Q8.“将来に求められる力”とはどのような能力ですか?

 「自分の知識や考え方の軸をベースに、他者と協力しよりよい解を見つけ、次の問いを見つけていく」能力です。
 

Q9.海外ではどのようなスキルが求められているのでしょうか?

経済協力開発機構(OECD)は1997〜2003年にかけて「DeSeCoプロジェクト」を実施しました。ここでは「特定の状況のなかで(技能や態度を含む)心理社会的な資源を引き出し、動員することにより複雑な需要に応じる教育」が「コンピテンシー」として定義され、同時に「相互作用的に道具を用いる力」「社会的に異質な集団で交流する力」「自律的に活動する力」の3つが、これからの時代に求められる「キー・コンピンテンシー(主要能力)」として提示されました。

これらはPISAの枠組みにも盛り込まれ、世界的に共通する教育概念となりました。これにならい、世界各国で教育改革における資質・能力目標が設定され、各国でナショナルカリキュラムを開発する動きが活発になっています。国によって「キースキル」「汎用的能力」など呼称は異なるものの、共通するのは、従来の「基礎的なリテラシー」に加え、思考スキルや学び方の学習、協働する力といった「認知スキル」、人間関係や問題解決といった「社会スキル」の2つが、汎用的な能力として育んでいくことに重きが置かれている点。これは日本でも必要性が叫ばれている「21世紀型能力」でも同様のことがいえます。
 

Q10.“将来に求められる力”がついているか、どのように判断できるのでしょうか?

“将来に求められる力”、いわゆる「求められる資質・能力」は「自分の知識や考え方の軸をベースに、他者と協力しよりよい解を見つけ、次の問いを見つけていく能力」です。この能力がついているか、まず基礎的な力として、言語運用能力、数理能力、ICT能力が必要です。これらは、思考・行動・コミュニケーションのためのツールとなります。

さらに、このもう一段階先で必要となるのが、問題解決力・組織的行動能力・自己実現力の3つです。それぞれの力は、問題解決力ならば「答えがない・見えない問題に対して自分の力で解決策を導き出すことができるか」、組織的行動能力ならば「グループの中で当事者意識を持ち、行動することができるか」、自己実現力ならば「探究心・達成志向を持ち、かつ、そのための自己管理やストレスコントールができるか」といった力であり、これらは普段の生活における子どもたちの行動から判断できます。

詳しくは「第3回:「思考力・判断力・表現力」は、新しい大学入試でどのようにして測られる?」を参考にしてください。
 

Q11.なぜ「求められる資質・能力」が必要となっているのでしょうか?

今、世界は目まぐるしく変化しています。米デューク大学の調査によれば、今の子どもたちが成人する2027年には「65%が新しい職業になる」とも言われています。

どんな仕事に就いているのかもわからない、そんな予測不能な将来を生き抜く子どもたちには、今のうちから、世のなかや身の回りの問題・課題を自分ごととして考え、自分とは価値観や考え方が異なる他の人と協力し合いながら、解決策を見出していく力を養わなければならず、そのためにも“将来に求められる力”が必要なのです。“将来に求められる力”を養うことは、将来生まれるであろう「新しい職業」に対応できる力を、今のうちから育むこと、とも言い換えられます。

 

Q12.“将来に求められる力”、いわゆる“求められる資質・能力”はどうしたら身につくのでしょうか?

たとえば、日常的なさまざま事象のなかから、自分なりの問題・課題となるものを設定し、その解決に向けた道筋をつくり上げることができるかどうか試す訓練を続けることで「問題解決力」の育成を行うことが可能です。

また、チームで問題解決にあたるようなワークショップ等であれば、チーム内での自分の役割を認識させながら自分の考えを主張していくことで「組織的行動能力」を培うことが可能です。その際には、他者の主張・価値観を否定することも鵜呑みすることもしないよう注意喚起すれば、より効果的と言えるでしょう。

最後に「自己実現力」を持たせる課程では、日ごろから探究心・達成志向を持ち、何事にも「自分はどう生きていくか」「どのような人間でありたいか」という志を持つことがポイントとなります。
 

Q13.“求められる資質・能力”を身につけている方には具体的にどのような人がいますか?

すでに“将来に求められる力”を身につけている人は、世界中に存在します。それは、社会のさまざまな課題を自ら発見し、協働関係のなかからその解決に当たっている、各分野のリーダーたちに代表されます。

思考や行動、コミュニケーションのための基礎ツールを駆使しながら、問題解決・組織的行動・自己実現に向け活動している様子は新聞・雑誌・書籍等で紹介されています。そのなかで、「自分の知識や考え方の軸をベースに、他者と協力しよりよい解を見つけ、次の問いを見つけていく能力」を存分に発揮していることがわかるはずです。

本サイトではインタビュー「未来を拓く力を聞く」のなかで、“将来に求められる力”を持ったリーダーたちがいかにして問題解決に挑み、未来を切り拓いてきたかを伺いました。ぜひ参考にしてみてください。
 

Q14.“求められる資質・能力”をさらに伸ばす方法はありますか?

“将来に求められる力”、いわゆる「求められる資質・能力」を伸ばすには、重要なポイントが2つあります。

1つは、これまでの教科学習をしっかりと継続的に行うことです。問題・課題を発見するにしても、他者と協働しながら新しい価値を生み出していくにしても、そのためには基礎的な知識が不可欠です。これまでの勉学も怠らないように注意しましょう。

もう1つは、学んだことを「要するにどういうことか」と言葉にすることです。Q10で紹介した「思考・行動・コミュニケーションのための基礎ツール」3つのうち、「言語運用能力」を身につけることができます。また、自分の考えを言語化する過程のなかで「問題解決力」を養うことにもつながります。

本サイト「未来を拓く力を養う」の「第7回:これからの社会に必要な力を身につけるために、今、中学生がすべきこととは」のなかでは、より具体的な方法を解説しているので、そちらも参考にしてください。