公開日 2019.5.27

「大学入試が変わる」と言われていますが、新大学入試に関する高校生の意識について、Z会員にアンケートで聞いてみました(有効回答数:267)。これまでの大学入試の変遷とあわせてご紹介します。

◆Z会員に聞きました、「大学入学共通テスト」どこまで知ってる?

回答したZ会員のうち8割以上が、2021年度入試より「センター試験」から「大学入学共通テスト」に変わることを知っていました。しかも、「大学入学共通テスト」の国語と数学で記述式問題が出題されることや英語で民間の資格・検定試験が併用されることについては、入試対策に直結する内容として、「わりと知っている」と答えた割合が6割以上もいました。

◆Z会員に聞きました、大学入試の変化は不安?

回答したZ会員の半数以上が不安と答えています。
不安な理由のTOP3としては、下記が挙げられました。
1.具体的に、どんな対策をすれば新しい大学入試の問題に対応できるのかわからないから。
2.情報が少なく、どんなふうに変わるのか想像がつかないから。
3.「思考力」「判断力」「表現力」に自信がないから。

一方で、不安はないとした人の理由TOP3は、下記の通りです。
1.英語4技能に自信があるから。
2.「思考力」「判断力」「表現力」に自信があるから。
3.明確な理由はないが、不安は感じない。
Z会の通信教育では「思考力」「判断力」「表現力」を鍛えるための教材を提供しているので、日々、取り組んでいるZ会員の中には、その積み重ねが自信となって不安と感じていない人もいるものと思われます。

◆これまでの大学入試改革を振り返る

例年、1月中旬の週末に行われている「大学入試センター試験」が2020年1月実施を最後に廃止され、2021年1月からは「大学入学共通テスト」が始まります。それでは、いったいなぜ、新しいテストに変わるのでしょうか。これまでの大学入試改革を振り返ってみましょう。

【センター試験はなぜ始まった?】

日本で現在の4年制大学の制度ができたのは、第2次世界大戦後のこと。当初、各大学はそれぞれ個別に入試を行っていて、試験問題は記述式(論述式)が基本でした。ところがその後、高度経済成長の時代を迎えて若者の大学進学率はグングン上昇し、受験者数も激増。それで採点に手間のかかる記述式(論述式)問題が減り、マークシート式が入試問題の主流になってきました。1979年、センター試験の前身にあたる「大学共通第一次学力試験」(通称:共通一次)が始まったときも、全問マークシート式が採用されました。共通一次はもともと国公立大志望者専用のテストでしたが、1990年にセンター試験に衣替えしてからは私立大学の利用も広がり、大学受験生ならば誰もが受ける試験になっていきました。
共通一次が始まる以前、各大学の入試では受験生の成績に差をつけるため、とんでもない難問奇問が出されるような事態になっていました。受験生のために標準的な良問からなる共通のテストをつくろう。共通一次の導入には、そういう意図もありました。一方で、毎年何十万人もの受験生が「共通一次」や「センター試験」を受けるようになったことで、偏差値による大学の序列化が進んでしまった面もあります。

【マークシート式の問題の限界】

すでに言ったように、「共通一次」や「センター試験」の問題そのものはよく考えられた良問でした。しかし、今度はマークシート式の問題に対する批判の声が高まってきました。高度経済成長の時代には正確な知識を身につけて実行する能力が重要でしたが、時代が変わり、より個性的・創造的な人材が求められるようになったことがその背景にあります。単なる暗記や詰め込みでは対応できない能力を重視すべきだという考え方が強まり、1980年代には「小論文」を入試科目に採り入れる大学が急増しました。また、筆記試験の成績に偏らない選抜方法である「AO(アドミッションズ・オフィス)入試」も、2000年代に入って一気に広がっていきました。

【入試の変化の背後には社会の変化がある!】

今後、グローバル化がさらに進み、産業の栄枯盛衰のスピードはさらに速まります。国境を超えた人々の移動も激しくなります。日本が世界の中で生き残るためには、さまざまな分野でこれまでのやり方にとらわれない技術革新を進めていかなくてはなりません。また、AI(人工知能)の開発が今急速に進んでいます。これからは知識や情報を集めて決まったやり方で処理する作業はすべてAIがやってくれるようになるかもしれません。だとすれば、人間にしかできない仕事とは、さまざまな価値観や背景をもつ人々が集まり、コミュニケーションをとりながら難題の解決をはかり、これまでにないアイデアを生み出す……といったものになります。
それを見越して、新たに始まる「大学入学共通テスト」では国語と数学で記述式問題を導入し、具体的な場面を設定して考えさせる問題を増やすことにしました。未来の社会で活躍するために中高生が身につけるべき力が昔と違ってきた以上、授業のあり方や入試のしくみもそれに合わせて変える必要があります。学校で「アクティブ・ラーニング」が推進され、グループでの討論や成果の発表などが重視されるようになってきているのも、まさにそういうことです。
各大学が個別に行う入試についても、文部科学省は、これまで「知識・技能」の評価に偏っていたとし、これからは「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」も含めた多面的・総合的な評価を行うように求めています。これを受けて、それぞれの大学でも入試のしくみや入試問題の見直しを進めているところです。

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