北野高等学校校長に聞く、新大学入試の考え方(前編)_2019.3
公開日 2019.3.22
2021年度から導入される「大学入学共通テスト」をはじめ、大きく変わっていく大学入試。高校の現場では、この変化をどのように受けとめ、対応しようとしているのでしょうか。大阪府の公立トップ校であり、また、大阪府が指定する進学指導特色校「グローバル・リーダーズ・ハイスクール」の1校でもある大阪府立北野高等学校の恩知忠司校長にお話をうかがいました。
◆身につけてほしい力は、昔も今も変わらない
北野高校では、生徒に身につけさせたい資質・能力として「高い学力」「英語運用力」「プレゼン力・発信力」「リーダーシップ・健全なマインド・未来志向」の4つを掲げ、授業づくりや、大阪府のグローバル・リーダーズ・ハイスクールとしての各種取り組み、高大連携活動などに取り組んでいます。
「高い学力」とは、深い知識を、文理を問わず幅広く、バランスよく身につけること。「英語運用力」とは、英語を話す力。「プレゼン力・発信力」は、「話す」「書く」「やってみせる」などの行動によって自らの考えを発信していく力。「リーダーシップ・健全なマインド・未来志向」とは、過去にとらわれず、未来を見据えて前向きに、健全でいることです。
この4つの資質・能力は、少なくとも私の教師人生では「不易」なものでした。とくに学力については、文系・理系科目をたすきがけで学び、文理両道をめざしてほしいと考えています。これは、北野高校文理学科の基本理念とも重なります。ただし、学習のさせ方については「不易」に「流行」を取り入れることが大事だと考えています。
「高い学力」とは、深い知識を、文理を問わず幅広く、バランスよく身につけること。「英語運用力」とは、英語を話す力。「プレゼン力・発信力」は、「話す」「書く」「やってみせる」などの行動によって自らの考えを発信していく力。「リーダーシップ・健全なマインド・未来志向」とは、過去にとらわれず、未来を見据えて前向きに、健全でいることです。
この4つの資質・能力は、少なくとも私の教師人生では「不易」なものでした。とくに学力については、文系・理系科目をたすきがけで学び、文理両道をめざしてほしいと考えています。これは、北野高校文理学科の基本理念とも重なります。ただし、学習のさせ方については「不易」に「流行」を取り入れることが大事だと考えています。
◆英語4技能を磨けるよう、授業を構造化
今、私たちがとくに重点を置いているのが、「発信力」や「英語運用力」です。発信力については、各科目の授業や、課題研究の中で、論理立てて書く、要約する、1枚にまとめてみる、といった「言語化」を意識した取り組みを行っています。また、英語を話す力の重要性というのは、今も昔も変わっていません。ただ、これまでの英語教育では、話せる人を育てることができなかった。だからこそ、従来から鍛えてきた「読む」「書く」「聞く」力だけでなく「話す」力も鍛えていく。幸い、本校では、2015年ごろからいわゆる、受験対応力と英語運用力の両立をめざす授業づくりに取り組んでくれていました。
具体的には、ディベートやペアワークなど「話す」機会を増やしながら、受験に必要な知識・技能も身につけられるよう授業を構造化しました。例えば、高2生のある授業では、ネイティブ教員が教科書本文の120語程度の要約を口述した音源を作り、生徒たちが4人1組でその音源を聞くというワークを取り入れています。1人が音源を聞いてシャドウイングするのを、残りの3人が聞いて意味をとる、ということを交代で行った上で、さらに、全員で音源のディクテーションも行います。こうして、英語を話すこと、英語を聞いて意味をとること、英語を書き取って英文の構造を知り英作文に役立てること、教科書の内容を理解することなどにつなげていくのです。
具体的には、ディベートやペアワークなど「話す」機会を増やしながら、受験に必要な知識・技能も身につけられるよう授業を構造化しました。例えば、高2生のある授業では、ネイティブ教員が教科書本文の120語程度の要約を口述した音源を作り、生徒たちが4人1組でその音源を聞くというワークを取り入れています。1人が音源を聞いてシャドウイングするのを、残りの3人が聞いて意味をとる、ということを交代で行った上で、さらに、全員で音源のディクテーションも行います。こうして、英語を話すこと、英語を聞いて意味をとること、英語を書き取って英文の構造を知り英作文に役立てること、教科書の内容を理解することなどにつなげていくのです。
このような授業を3年間受けた学年が初めて2018年春に卒業を迎えましたが、彼らのセンター試験の英語の平均点はおよそ180点。見事に受験英語と英語運用力の養成を両立することができました。当初は「高3にもなってもディベートやペアワークなんてやってていいのか?」などの声もありましたが、先生方がどうすれば両立できるかを常に考えてくださった結果だと感じています。
◆必要な力の追究に、入試改革の動きが符合してきた
大学入試を意識しないことは北野高校ではありえないことではありますが、授業づくりや高大連携など課外の各種活動は、大学入試のためというよりは、「将来にどうつながっていくか」という発想で取り組んでいます。生徒が高得点を取れればそれでいいとか、解答欄を埋められればそれでいいという授業は一切ありません。
なぜなら、大学合格はゴールではなくスタートであって、合格した時点で燃え尽きてしまってはいけませんから。それに、世の中でリーダーシップを発揮できるかどうかは、知識量だけではなく、得た知識を活用できるか、あるいは、知識を自分のものにした上で社会という大きな枠組みの中で考えられるか、というところまで関係しています。私たちは、そこまで意識して教育に取り組まないといけないと考えています。
大学入試改革において、英語の4技能評価や大学入学共通テストに記述問題が導入されることで、自分の考えを他人にわかりやすい形にして発信することが多くの人に必要な力であることが示され始めています。今重点を置いて高めるべき力は何かと考え、発信力や英語運用力などを重視した取り組みを進めてきたことに入試改革の動きが符合してきて、北野高校のベクトルは間違っていなかったなと感じています。
なぜなら、大学合格はゴールではなくスタートであって、合格した時点で燃え尽きてしまってはいけませんから。それに、世の中でリーダーシップを発揮できるかどうかは、知識量だけではなく、得た知識を活用できるか、あるいは、知識を自分のものにした上で社会という大きな枠組みの中で考えられるか、というところまで関係しています。私たちは、そこまで意識して教育に取り組まないといけないと考えています。
大学入試改革において、英語の4技能評価や大学入学共通テストに記述問題が導入されることで、自分の考えを他人にわかりやすい形にして発信することが多くの人に必要な力であることが示され始めています。今重点を置いて高めるべき力は何かと考え、発信力や英語運用力などを重視した取り組みを進めてきたことに入試改革の動きが符合してきて、北野高校のベクトルは間違っていなかったなと感じています。
プロフィール
恩知 忠司(Tadashi Onchi)
英語教師として大阪府立高校の教壇に立ち、大阪府教育委員会(現大阪府教育庁)指導主事、参事、大阪教育大学教職教育研究センター教授などを経て、2017年より大阪府立北野高等学校校長。
北野高等学校HPはこちら
英語教師として大阪府立高校の教壇に立ち、大阪府教育委員会(現大阪府教育庁)指導主事、参事、大阪教育大学教職教育研究センター教授などを経て、2017年より大阪府立北野高等学校校長。
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