これからの時代に求められる学びを考える(前編)_2018.1
公開日 2018.1.5
グローバル化、高度情報化、少子高齢化とさまざまな課題に直面している現代日本。課題克服のための解決策をなかなか見いだせず、次々と訪れる変化の波に耐えるのが精いっぱいという現状を目の当たりにするにつれ、これからの時代を生き抜いていくためにはどうしたらいいのか?と考えずにはいられません。
そこで今回は、不透明な時代だからこそ必要な「生きる力」とは何か、その力をつけるために必要な学びとはどのようなものかについて、育児・教育をテーマに精力的に執筆・講演活動を行っている教育ジャーナリストのおおたとしまささんにお聞きしました。
そこで今回は、不透明な時代だからこそ必要な「生きる力」とは何か、その力をつけるために必要な学びとはどのようなものかについて、育児・教育をテーマに精力的に執筆・講演活動を行っている教育ジャーナリストのおおたとしまささんにお聞きしました。
── 近年、さまざまな場面で「これまでの手法や考え方が役に立たなくなっている」と言われていることが多いのですが、おおたさんご自身はこれから日本はどのような時代に入っていくとお考えですか?
一言で言うと、「正解というものが存在しない時代」でしょうか。「成功のパターン」を当てはめるだけでよかったこれまでとは異なり、課題ごとに最適な解決策を見つけていかなければならない、そういう時代になっていくと思います。
しかし、よくよく考えてみれば、「成功のパターン」のようなわかりやすい正解が存在した
ここ数十年が奇跡的で、長い歴史を見れば、常に暗中模索してきたことがわかります。たとえば明治維新の時代。それまでの政治体制はひっくり返って、誰が国の指導者になるのかもわからない。外に目をやればヨーロッパの列強がひしめき合い、日本もいつ攻め込まれてもおかしくない……。まったく先の見えない時代だったと思います。その時代の市井の人たちは自分たちの未来をどのように思い描いて生きていたんだろう?と不思議になりますよね。戦後もそうです。すべてを失って、大混乱にあったわけですが、見事に乗り越えてきました。
歴史的視野に立てば、先行き不透明な社会というのは決して珍しいものではありません。だから、これまでの手法や考え方が役に立たなくなってきたとしても無闇に悲観したり怖れたりせず、通常パターンに戻っただけと捉えた方がよいと、私は考えます。
一言で言うと、「正解というものが存在しない時代」でしょうか。「成功のパターン」を当てはめるだけでよかったこれまでとは異なり、課題ごとに最適な解決策を見つけていかなければならない、そういう時代になっていくと思います。
しかし、よくよく考えてみれば、「成功のパターン」のようなわかりやすい正解が存在した
ここ数十年が奇跡的で、長い歴史を見れば、常に暗中模索してきたことがわかります。たとえば明治維新の時代。それまでの政治体制はひっくり返って、誰が国の指導者になるのかもわからない。外に目をやればヨーロッパの列強がひしめき合い、日本もいつ攻め込まれてもおかしくない……。まったく先の見えない時代だったと思います。その時代の市井の人たちは自分たちの未来をどのように思い描いて生きていたんだろう?と不思議になりますよね。戦後もそうです。すべてを失って、大混乱にあったわけですが、見事に乗り越えてきました。
歴史的視野に立てば、先行き不透明な社会というのは決して珍しいものではありません。だから、これまでの手法や考え方が役に立たなくなってきたとしても無闇に悲観したり怖れたりせず、通常パターンに戻っただけと捉えた方がよいと、私は考えます。
── 普通に戻っただけといってもなかなか気持ちを切り替えるのはたいへんそうです。
そうですね。でも実際、日本がこれまでの数十年間成果を上げ続けてきた成功パターンは明らかに通用しなくなっています。私たちはまずその「昭和仕込みの勝ちパターン」を手放すことが必要でしょう。そして、新たなモデルを作り上げなくてはならない。
では、何を手掛かりにして新しいモデルを作ればいいのか?というと、これは歴史に学ぶしかないと思います。過去の激動の時代を生き抜いた人たちの考え方や行動、彼らが生み出したさまざまな知見・思想・哲学などにふれることで、生き延びるのに必要な力を学び、それを新たなモデルを創り上げる手がかりにするのです。
そうですね。でも実際、日本がこれまでの数十年間成果を上げ続けてきた成功パターンは明らかに通用しなくなっています。私たちはまずその「昭和仕込みの勝ちパターン」を手放すことが必要でしょう。そして、新たなモデルを作り上げなくてはならない。
では、何を手掛かりにして新しいモデルを作ればいいのか?というと、これは歴史に学ぶしかないと思います。過去の激動の時代を生き抜いた人たちの考え方や行動、彼らが生み出したさまざまな知見・思想・哲学などにふれることで、生き延びるのに必要な力を学び、それを新たなモデルを創り上げる手がかりにするのです。
── 生き延びるための力とはどのようなものなのでしょうか?
わかりやすく言うと「世の中の変化に対応する力」でしょうか。「対応」というと能動的に感じるかもしれませんが、ニュアンスとしてはもっと受動的で「反応してしまう」という意味合いの方が近いです。何かを意図して力ずくで変えていこうというのではなく、変化していくものに対して上手に乗っかっていくイメージです。人間に本来備わっている「適応力」と言ってもいいかもしれません。
わかりやすく言うと「世の中の変化に対応する力」でしょうか。「対応」というと能動的に感じるかもしれませんが、ニュアンスとしてはもっと受動的で「反応してしまう」という意味合いの方が近いです。何かを意図して力ずくで変えていこうというのではなく、変化していくものに対して上手に乗っかっていくイメージです。人間に本来備わっている「適応力」と言ってもいいかもしれません。
── その適応力を覚醒させるには何を身につければいいのでしょうか?
私はよく子どもたちに「虫の目、鳥の目、魚の目を身につけよう」と言っています。「虫の目」とは、物事を細かく見る力、正確に細部にわたって理解する力。「鳥の目」は、少し引いた場所から全体像を俯瞰し、全体の構造がどうなっているのかを正確に捉える力。「魚の目」とは、物事がこれからどのように動いていく(変化していく)のか、変化の方向(潮流)をとらえる力です。この「3つの目」を持っていれば、今の世の中がどうなっていて、どちらに向かって進んでいこうとしているのかを的確に捉えることができ、時代の変化についていくことが可能になります。
次に、自分という視点、「軸」を持つこと。「3つの目」で自分の生きる社会を把握した上で、その中で自分は何をしたいのか、すべきなのか、「自分はどう生きるか」をはっきりさせるということです。
私はこの3つの目と自分軸を持つことが適応力を発揮していくうえで欠かせないと考えています。
私はよく子どもたちに「虫の目、鳥の目、魚の目を身につけよう」と言っています。「虫の目」とは、物事を細かく見る力、正確に細部にわたって理解する力。「鳥の目」は、少し引いた場所から全体像を俯瞰し、全体の構造がどうなっているのかを正確に捉える力。「魚の目」とは、物事がこれからどのように動いていく(変化していく)のか、変化の方向(潮流)をとらえる力です。この「3つの目」を持っていれば、今の世の中がどうなっていて、どちらに向かって進んでいこうとしているのかを的確に捉えることができ、時代の変化についていくことが可能になります。
次に、自分という視点、「軸」を持つこと。「3つの目」で自分の生きる社会を把握した上で、その中で自分は何をしたいのか、すべきなのか、「自分はどう生きるか」をはっきりさせるということです。
私はこの3つの目と自分軸を持つことが適応力を発揮していくうえで欠かせないと考えています。
プロフィール
教育ジャーナリスト。株式会社リクルートから独立後、多数の育児誌・教育誌の編集にかかわる。教育や育児の現場を精力的に取材し、『名門校とは何か?』(朝日選書)、『ルポ塾歴社会』(幻冬舎新書)、『名門校の「人生を学ぶ」授業』(SB新書)など50冊以上の本にまとめる。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許も持ち、私立小学校での教員経験もある。2児の父。