公開日 2016.9.2

京都大学客員准教授や全日本ディベート連盟代表理事など、いろんな顔をもつ瀧本哲史さん

京都大学客員准教授や全日本ディベート連盟代表理事など、いろんな顔をもつ瀧本哲史さん


各地の中学校で中学2年生を対象に行われた、「未来をつくる5つの法則」というタイトルの特別授業をまとめた『ミライの授業』を2016年7月に発刊した瀧本哲史さん。社会には答えが見つからない問題が山積みだけれども、この閉塞した状況を打開するための一番手として中学2年生を挙げています。中学生に期待できることを伺いました。

中学生でも「未来に残るもの」を作り出せる

── 中学2年生に大きな期待を寄せるきっかけとなった、瀧本さんご自身の経験を教えてください。

僕が通っていた麻布中学・高校は、ちょっと変わった校風の中高一貫校として有名ですが、生徒会の組織もかなり特殊で、生徒会本部を持たず、具体的な活動は行事ごとの実行委員会に委ねられ、大切な決め事はそのつど選挙で決めることになっていました。麻布生にとって、選挙はとても重要な意思決定の場なのですが、僕の在校当時、選挙はなんと当事者同士の相互監視のもとで行われていて、選挙を第三者の立場で管理する選挙管理委員会もなければ、選挙に関する規約(ルール)もない杜撰な状態だったんです。
その、まるで民主的ではない状況に対して、当時、まさに中学2年生、つまり14歳だった僕は、「きちんとした選挙制度と選挙管理委員会を作ろう」という提案をしました。そして、中学3年生のときに自分がリーダーになって、選挙管理委員会を立ち上げ、規約作りを行ったんです。ふつうはそういう委員会のリーダーは高校2年生がなるものなのですが、自ら提案した委員会だったので、僕は中学3年生でリーダーになりました。
規約は、国レベルならば憲法に相当する、麻布の生徒会活動の骨格を決めるものなので、恣意的な運用ができないように、専門性の高い内容になるよう条文を一つずつ作っていったんですよ。僕のこの体験が、中学2年生でもやろうと思えばなんでもできるという考えにつながっています。

中学時代の思い出を懐かしそうに語る瀧本さん

中学時代の思い出を懐かしそうに語る瀧本さん


Girls, be ambitious.
女子よ、もっともっと前へ!


── 瀧本さんは『ディベート甲子園』というイベントにも主催者として関わっていますが、そこで感じたことも『ミライの授業』に反映されていますか?


『ミライの授業』には、Boys , be ambitious. ならぬ、Girls , be ambitious. 『女子よ、大志を抱け!』という思いを込めました。
僕は『ディベート甲子園』というイベントで、毎年全国から集まる若者たちの討論ぶりを見ているのですが、中学部門では圧倒的な強さを見せる女子が、高校に上がると『おとなしくなってしまう』ことに歯がゆさを感じていました。弁の立つ女子は敬遠される風潮があるのか、総じて抑制的になってしまうのです。せっかく討論の力を磨いてきたのに、自らその才能に蓋をしてしまうなんて、実にもったいないことです。
女子のこのような変化を見るにつけ、自分なりの意見や考えを持って行動する女子や、新しいことをしようとしている女子を、もっと社会全体で応援しないといけないなと思っていました。そこで僕なりにエールを贈ろうと、『ミライの授業』では、女性の偉人を意識して多めに取り上げています。人生のお手本として、大いに参考にしてほしいです。果敢に挑戦する強者の登場を心待ちにしています!

瀧本さんは『ディベート甲子園』のみならず、あらゆる場面で女性の活躍を期待している

瀧本さんは『ディベート甲子園』のみならず、あらゆる場面で女性の活躍を期待している

古いものを知らない強みを生かせ!

── 最後に、中学生に対するメッセージをお願いします。

中学2年生をはじめ、中学生のみなさんは、古い日本、世界を知りません。それはとてつもなく大きな強みです。知らないからこそできる挑戦・冒険、感じ取れる感覚がたくさんあり、それらは新しい未来をつくり出すヒントを与えてくれます。何も知らない、何者でもないという大きな可能性をぜひ活かしてください。世界を変えるには、まず自分を変えること。『自分には無理だ』などと頭から否定しないで、まず行動してみて。必ず得るものがあるはずです。

プロフィール

瀧本哲史(たきもと・てつふみ)
京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。東京大学法学部卒業後、同大学助手を経て、マッキンゼー&カンパニーに入社。おもにエレクトロニクス業界のコンサルティングに従事。独立後は、企業再生やエンジェル投資家として活動しながら、京都大学で教鞭をとる。全日本ディベート連盟代表理事、全国教室ディベート連盟事務局長。『僕は君たちに武器を配りたい』『君に友だちはいらない』(ともに講談社)のほか、『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』(ともに星海社新書)といった著書がある。