日本企業が推進したオーストラリアの都市開発

フィールドワークで実際に街を観察している。

最近のニュースで、空き家の問題が取り上げられることが多い。その大きな原因は人口減少である。日本の人口は2008年をピークとして、2017年までに100万人以上減少している。これは、秋田県の人口がまるごと無くなったようなものだ。人口減少は私たちの社会に様々な影響を与えている。空き家の問題もその一つで、特に都市部で深刻な問題となり始めている。また、日本は高齢化が進み、2030年には人口の1/3が高齢者になると予測されており、都市の高齢化に起因する諸問題は大きな課題となっている。こうした問題に対応する研究と人材育成は重要である。
実験ができない、あるいは難しい研究分野では、歴史や他国の事例と比較する手法が用いられる。法律や都市計画などがそれだ。「試しに法律を制定してみる」とか、「とりあえず都市を作ってみる」というのが無理なことは、あなたも理解できるはずだ。ここで、都市問題を研究する都市生活学部を持つ東京都市大学の例を見てみよう。
東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)は、西オーストラリア州の州都パースにあるエディスコーワン大学への4ヵ月間の留学を含む2年に亘るプログラムだ。このプログラムでは語学だけでなく、都市計画に関わる科目「都市の動向と分析」も学ぶ。これはパースの街を観察し、この街がどのように変化しているかを、歴史的、あるいは他の様々な視点から分析する科目である。

住宅の分譲が行われ、街が作られている。

実は、東京都市大学と同じ東急グループに属する東急電鉄が、1970年代から、日本で鉄道沿線を開発した経験を活かし、パース近郊の開発を進めてきた。現在進行形で進められている都市開発を観察することは、日本で蓄積された都市開発の手法が海外で応用される事例を見ることができる貴重な機会と言える。冒頭で述べた少子化や高齢化の問題に加えて、増加する海外からの移民も都市の課題となるだろう。TAPに参加し「都市の動向と分析」を学ぶことは、変化していく日本で必要とされる都市開発を学ぶ基礎となっている。

川口和英教授(東京都市大学都市生活学部)

都市生活学部 学部長。未来都市研究機構長。専門は土木計画学、交通工学、都市計画。『環境スペシャリストをめざす』『集客の科学』など著書多数。東京の未来を研究する「未来都市研究機構」は、魅力ある未来都市創生に貢献する超高齢社会の活気ある街の研究と実用化を実現する国際的なリーダーを目指し、全学部が一体となった取り組み。

「都市の動向と分析」は都市生活学部の単位となる