勉強にはノウハウがある
―そのスタイルが学び続ける力の土台になる

鎌田先生は、中高生のうちにどのような学び方を身につけるのがよいとお考えでしょうか?

中高生の皆さんは、勉強することを通じて「学び方」を身につけている段階にいると思うのですが、まず知っておいてほしいのは、勉強にはノウハウがあるということです。そして、そのノウハウを知ったうえで、学習を進めるべきだということをまずお伝えしたい。そうすることで、無駄を抑えて効率的に学力を伸ばすことができます。

私は、学力は「コンテンツ学力」と「ノウハウ学力」に分けられると考えています。

「コンテンツ学力」とは、英単語や物理の公式、化学式、歴史、物理や数学の概念など、個々のコンテンツ=教科に関する知識を学ぶことです。学校で先生が授業で解説されるような内容ですね。

一方、「ノウハウ学力」とは、勉強時間が1時間あるなら、どういう配分で学習しようか、受験当日までの学習スケジュールはどうやって立てようか、どの文房具を使って勉強するとやりやすいか、ノートをどう取ろうか、というような、学習する際のノウハウ(やり方)を考える力です。

ノウハウがないまま闇雲に勉強しても、しんどくて勉強が嫌いになってしまうでしょう。しかし、世の中には、さまざまな勉強法や読書術、時間活用術があふれていますから、まずはそういったノウハウを知り、実際に試してみましょう。そして、自分に合わないものはバッサリ捨て、合うものだけを選び、必要に応じてカスタマイズするのです。

そうやって自分に合った勉強法を身につけてからコンテンツを学んでいくと、楽に、ストレス少なく勉強できるようになります。楽に楽しく勉強できると成果も上がりますし、成果が上がればますます勉強したくなりますよね。

ノウハウを知って自分に合うようにカスタマイズしたうえでコンテンツを学ぶという方法を学ぶことが、なぜよいのでしょうか?

大学生や社会人になっても、就職試験や資格試験など、勉強が必要な機会はありますし、自分や周りを幸せにするために何かを生み出したり、成功するビジネスのかたちをつくったりする必要はあります。「学び方」が必要なのは、学生時代だけではないのです。また、「世間のよいものを取り入れて実際に使ってみる→ダメなものは捨ててよいものだけを残す」ということを繰り返し、よいものを自分の中に貯めていくというやり方を鍛えるには、勉強はもっともよい訓練になると私は考えています。

ノウハウは、どのようにして身につけるとよいでしょうか?

学校の先生、友達、塾、Z会など、今はいろいろなところで情報を手に入れることができます。先人に習うのがいちばんです。一から自分で編み出すのは難しいし時間がかかりますから。私も、いくつか勉強のやり方に関する著書を出しています(笑)。

1つコツをお伝えすると、教えてもらったやり方を実践する際には、質のよい教材を使いましょう。昔、江戸時代には、よく商人の間で偽物の小判が出回っていたようです。そこで、ある大店の主人は、偽物が出回った時にすぐに気づけるよう、丁稚(でっち)の人たちには普段から本物の小判しか触らせなかったそうです。勉強も同じで、一番よいもの=本物を使って勉強するのが、最も効率がいい。

学校の先生や先輩から「これがおすすめ」「この一冊をやるといい」と言われた問題集や参考書の中から1冊を決めたら、少なくとも半年ないし1年はそれに集中しましょう。すると、本物がわかってよい直感がはたらくようになり、偽物の勉強法を排除できるようにもなります。もちろん、どうしても合わないときは別のものに変えてかまいません。大切なのは「自分に合うようにカスタマイズする力」ですから。

そのカスタマイズのやり方ですが、どのようなタイミングで勉強法を見直せばよいのでしょうか?

模擬試験が見直しのチャンスでしょう。模擬試験を受けた後には、どの問題ができなかったか確認しますよね? 自分にはどの部分のコンテンツ学力が不足しているのか、どんな方法で勉強したからダメだったのかといったことが、テストを見直すことでわかるわけです。それを受けて、足りない知識を勉強し直したり、勉強法もより自分に合ったものに見直すとよいでしょう。

たとえば、大学受験まであと半年しかない状況で日本史は古代と近現代が得点できていないことがわかったとする。残りの期間を考慮すると、一番配点が高い近現代の勉強に注力して古代は捨てる、という戦略を立てることもできるでしょう。これも、ノウハウ学力がなければ判断できないことです。

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基礎学力を身につけるのは大前提。残りの時間で地頭力を鍛えよう

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