早寝早起き朝ごはん、テレビを消して外あそび

プロジェクトに関わる大学院生や学部ゼミ生に研究の進め方を説明

文部科学省は、幼児期からの生活習慣の確立を目指して、平成18年に「子どもの生活リズム向上プロジェクト」事業を始めた。表題はその標語だ。学校の先生たちは経験上、夜更かしや朝食を抜くなどの生活習慣の乱れと子供の体調や意欲、学習能力などとの間に相関関係があると考えている。しかし、その相関を立証するには、先生たちの経験だけでなく、こころを研究する心理学とからだを研究する生命科学の協力が必要になる。
立教大学では、心理学と生命科学を融合して、人の行動と体内の状態の関係を科学的に解明する研究を進めている。神経の働きは体内の化学物質によるものだ。しかし、心理学はこうした物質としてのからだの機能とこころの関係の把握が弱い。一方、生命科学の研究者はヒトのからだの働きに関心を寄せながらも、ヒトを実験対象とできず、十分に研究できていない。この研究は、両者の強みを生かす5カ年計画のプロジェクトで、20人以上の研究者が関わっている。大石幸二教授は心理学分野のリーダーだ。彼はこのプロジェクトの成果を、人のこころを健やかな状態に保つ一助にしたいと考えている。ストレスの軽減法もその一つだ。
外部から精神的ストレスが加わった時、人の腸は内壁が爛れ、悪玉菌が繁殖した状態になり、逆にこれを改善することは精神的安定感に繋がる。日本人が腸内環境を改善するには、雑穀や豆、乳製品を食べるとよいことが明らかになっている。食習慣の改善には、腸の機能に違いがある外国人ではなく、日本人にとってはこれがよいという具体的な素材まで提示することが重要だ。また、腸内環境を観察することで、ストレスに負けやすい体質を明らかにできる。私たちは、ストレスへの自分の耐性を自覚することで、外圧にどのように対処すればよいかがわかり、ストレスを回避しやすくなる。それは自殺やうつ病などの防止にもつながると予想される。
このプロジェクトの研究チームは、3年後に、大手製薬会社や病院、福祉施設に、人のこころを守るための具体的な実践法を提案する予定だ。大石教授は、「早寝早起き朝ごはん、テレビを消して外あそび」といった生活習慣と子どもの意欲や精神的安定感との間の相関関係も、このプロジェクトにより科学的に立証できるだろう言う。しかし、私たちに今すぐできることもある。早起きして、朝ごはんをしっかり食べ、他者との肯定的なかかわりを増やすことだ。
 

大石幸二(立教大学現代心理学部教授)

専門は応用行動分析、臨床心理学。現代心理学部心理学科と理学部生命理科学科による融合研究『インクルーシブ・アカデミクス−生き物とこころの「健やかさと多様性」に関する包摂的研究』(文部科学省私立大学研究ブランディング事業」選定)の推進に邁進している。