2017年度東京大学個別試験 分析速報

■分量と難度の変化 
・難易度は昨年より易化
・分量は昨年並み
■今年度入試の特記事項 
・昨年度は小問のない単問が多く出題されたが,今年度はすべての出題に小問がつけられていた。
・昨年度に引き続き,複素数平面からの出題があった。
・小問による誘導が非常に丁寧で,取り組みやすく,得点も重ねやすい出題であった。
■合否の分かれ目 
・第1問は確実に得点したい。
・第5問は一見難しそうに感じるかもしれないが,取り組んでみると計算主体の問題。ここで加点できると有利だろう。
・第3問の複素数平面は「数学III」の内容で,苦手な人が多いかもしれない。典型的な題材なので,ここでの加点も有利に働く。
・第4問は(4)の論述の仕方で差がつくが,(3)までは確実に得点したい。
■大問別ポイント
 第1問 

・(1)問題文に“整式で表せ”とあることに注目すれば,分子が分母で割れることが予想できる。
・(2)2次関数の最小値の話で,基本的な内容だが,aの範囲に注意が必要。
 第2問 
・上下左右への移動の回数について,規則性を捉えられるかがポイント。
・(1)と(2)の違いに注意したい。
 第3問 
・反転に関する知識があれば,見通しを立てやすい。
・標準的な出題だが,演習量が足りない人には厳しいかもしれない。差がつきやすい問題といえる。
 第4問 
・(1)〜(3)は確実に得点したい内容。
・フィボナッチ数列を扱う際も似たような操作をすることがある。過去問演習が十分な人は扱ったことがあるだろう。
・(4)結果は予想しやすいが,論述力で差がつくだろう。
 第5問 
・直線y=xに関する対称性に着目できると見通しがよい。
・(2)“存在することを示し”というのが一見難しそうだが,具体的に挙げてしまえばよい。
 
 第6問 
・(1)△OPQは“1辺の長さが1の正三角形”が強力な条件。OQが固定されているので,OQを軸に△OPQを回転させることに気づけるかどうかがカギ。
・(2)OQ=1なので,点Qは平面x=0上のOを中心とする半径1の円を描く。これと(1)の結果から,円すいの側面をx軸の周りに回転させることが見えてくる。
 

東大理系数学攻略のためのアドバイス

東大文理系数学を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。
●要求1● 高度な思考力
  特別な知識は要求されないものの,高いレベルの思考力,発想力を試す問題が多く出題されている。他の大学では,一見しただけで典型問題だとわかる出題が多いが,東大では出題の仕方がかなり工夫されており,すぐには問題の解法が浮かびにくいものが多い。初見の問題に色々な面からアプローチして,解法を決める力が求められる。確率,整数の問題で主にこの力が問われる。
●要求2● 早く正確な処理力
  例年,処理量の多い問題が出題され,比較的処理量の少ないものでも,1問あたり20〜30分くらいかかるものもある。特に積分の求積問題で,ハードな計算を要求するものが多い。また,やや高度な出題も見られるが,処理力重視の問題は,方針が立てやすい。数式処理力の差は直接得点差につながりやすいので,速く正確に処理できる力を充実させておきたい。
●要求3● 解ける問題を見極める力
   東大の数学では,例年,5割程度取れれば合格ラインといえる量とレベルの出題である。つまり,全問を解く必要はなく,解く問題の選択が合否を分ける。過去問演習などを通して,完答できる問題を見極める力を養っておこう。小問ごとに解ける問題は,もちろん解くべきである。

   まずは,苦手分野があれば,遅くとも受験生の夏休みまでには克服したい。ただし,基本的なことばかりやっていては,高度な思考力を要求される東大入試には太刀打ちできなくなる。

 受験生の秋以降は実戦的な演習を行い,得点力アップを図ろう。また,答案を作成する力の養成も意識したい。

 センター試験が終わったあとは,東大入試に即応したZ会の問題で,最後の総仕上げをしよう。解答を作成する時間や,採点者にきちんと内容の伝わる答案作りを意識し,実戦力を完成させよう。

 Z会の講座では,上記の各段階に応じて,東大対策を無理なくこなせる設計になっている。Z会の講座を活用して,ライバルに差をつけよう!

▼「東大コース」理系数学担当者からのメッセージ
・「数学III」の複素数平面は現行課程らしい出題であり,2年連続で出題されている。問題そのものの難易度は高くないが,演習量不足で差がつきやすい分野になっている。今年度取り上げられた“反転”も昔からよく知られた題材であり,この分野を強化することでライバルに大きく差をつけられる可能性がある分野ともいえるだろう。複素数平面が履修範囲に含まれていた1997年から2005年の過去問なども参考になるだろう。