分析速報

■分量と難度の変化(理科…時間:2科目150分) 
・分量:大問数は3題。論述量は2018年度よりもやや増加したが,作図や計算を必要とする問題が無かったため,負担感としては前年並だった。
・難易度:難易度は標準的であった。
・出題分野:各大問は,分野融合となっていることが多く,1回の試験で扱う分野は幅広い。
・形式:用語,正誤判断,論述が中心である。
・解答用紙は,1題当たり横35文字,縦25行程度の文字が書けるように罫線が入っている。論述問題は字数ではなく,行数で指定される。
■今年度入試の特記事項 
・ここ数年,計算の必要な大問が多かったが,2019年度は数的な関係をグラフなどで考察させる形となった。
・2019年度の記述問題は,2〜3行程度で論述するものが多かったが,5行の問題もあった。
・第1問は中問に分かれているものの,最初から最後まで連動した考察問題が出題された。
 
■合否の分かれ目 
・大問のすべてに中問が存在したが,I・IIは関連した話題だったため,題材の広がりは絞られたように感じられた。
・第1問は,線虫の分化誘導に関するしくみが問われた。Aでは,2017年度,2018年度と生物用語を論述形式で説明させる問いが出題されたが,2019年度は生物用語を問うにとどまった。IIで迷ってしまったら,第2・3問を先に取り組もう。
・第2問は,光―光合成曲線の傾きや切片の意味を正確に理解していないと,BやCが解きにくい。IIは取り組みやすかったので素早く解答して手間のかかる問題に時間を使えるようにしよう。
・第3問は,表現型可塑性をテーマとした問いであった。A〜C,Fは時間をかけずに解答し,IIの最後の正誤判断問題までしっかりと取り組みたい。 Eでは,実験計画を立てることはそれほど難しくないため「どのような結果が得られるか」まで記述できたか否かがポイントとなった。
 
■大問別ポイント
 第1問 

・線虫の分化誘導に関するしくみがIとIIにまたがって問われた。
_I 〔文1・文2〕
・CはIIの前提条件となるため,ここで間違えると後に影響する。

 II〔文3〕
・E〜GはHを解くためのヒントになっている。
・Eは表1-1の(d)を参考に,P2〜P4細胞で表皮以外の組織に分化していることを答える。
・Fは表1-1の(g)から,Xタンパク質が壁細胞への分化を促進するとわかる。
 第2問  
 I 〔文1〕
・Bアは呼吸量が小さくなることから,グラフの切片が0に近づく。
・Bイは光合成の制限要因である二酸化炭素の量が少ないことから,光が弱くても光飽和点に達する。
・Dは「ただし」以降の文章に着目し,光合成に必要な水が不足する環境を考える。

 II〔文2〕
・E〜Gでは,生物の環境応答や光合成に関わる基本的な知識を問われた。
・Jは損傷したD1タンパク質が分解され,新たに合成されたD1タンパク質に置き換わる点を記述する。
 第3問 
 I 〔文1〕
・A・Bは進化のしくみに関する基本的な問いのため,確実に解答したい。
・Eは環境要因の変化を連続的にしたとき,閾値がない場合に現れる表現型を考える。

 II〔文2〕
・Gはタバコスズメガの熱処理により起きる体色変化が,表現型可塑性に当たることを確認する。
・Hについて,頸部を結紮した際の体色は「胸部と腹部」のものを示しており,ホルモンβが含まれる範囲であることに注意する。
・Iの難易度は高くない。最後の問題までしっかり解答できる時間を作っておくことがポイントとなった。

攻略のためのアドバイス

東大生物を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1●正確な 知識力
  各大問の前半に知識問題が出題されることが多い。ハイレベルな勝負になる東大生物では,知識問題での失点は許されない。教科書と図説を参照する習慣を身につけよう。教科書で太字になっている語については単純に暗記するだけでなく,関連する生命現象とあわせて,自分の言葉で説明できるようにしておくこと。
●要求2● 素早く要点をおさえる 読解力
  問題の分量が多いので,リード文はすばやく的確に読み解く必要がある。そのためには,内容を箇条書きにして整理する訓練が有効。まずは標準レベルのリード文を読む訓練から始めて,徐々に東大レベルに近づけていこう。また,解答時間を意識しながらの演習は,スピードアップに効果的。また,問題演習などで表・グラフをみるときは,大小関係や変化の様子をつかむことを意識しよう。
●要求3● 読解力と知識力に基づく 考察力+論述力
   基本となる見慣れない考察問題攻略のコツは,実戦演習を重ねる中で,仮説→実験→結果→考察という一連の流れを自分なりに整理する癖を身につけること。また,論述力は自分の手を動かして答案を書き上げることが何よりも大切。独りよがりな答案になっていないか,添削をしてもらうとよい。
   なるべく早く●要求1●の完成を目指すこと(遅くとも高3の夏を目指そう)。とくに,「生物の進化と系統」は対策が遅れがちになるので,計画的に学習を進めよう。Z会の本『生物 知識の焦点』は,高校生物の全範囲について,教科書だけでは学べない入試頻出事項を解説しているので,知識力完成に役立つだろう。
次のステップとして,入試形式の演習問題になるべく数多くあたり,●要求2●・●要求3●のレベルUPを図ろう。典型・頻出問題は一通りこなしておくこと。Z会の通信教育「東大コース」でも,東大の出題レベルに合わせて典型・頻出問題を出題していく。
最後に,問題の分量が多い東大生物では,なるべく全部の設問に手をつけられるよう,問題を解くスピードも重要になってくる。本番の入試を意識して,時間配分にも気を配った演習を積もう。
▼「東大コース」生物担当者からのメッセージ
・時間をかければ解ける問題が多く,時間配分に迷った方が多いのではないでしょうか。「もう少しで解けそう」という問題に次々取り組むと,時間が足りなくなってしまいます。時間を意識しながら解くことを忘れないようにしましょう。
・記述問題では,伝えたいことを抜けもれなく書けているか不安になった方もいたと思います。論述力を確かなものにするために,Z会の通信教育「東大コース」では,丁寧な添削指導が受けられる教材を用意しています。
・2019年度第3問Aの「環境変異」など,一部教科書では掲載のない語が問われる年度もあります。現行課程の教科書は取り上げている題材の差が大きいのですが,Z会の本『生物 知識の焦点』を活用したりすることで,お手持ちの教科書にない題材も一通りおさえることができます。

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