2017年度京都大学個別試験 分析速報

■分量と難度の変化
・難易度は昨年並み
・分量も昨年並み
■今年度入試の特記事項 
・2016年度は1題だった小問の入った問題が3題出題された。
・文理共通問題はなかったが,文系と題材が共通の問題が1題出題された。
・示す問題は1題(2設問)であった。
■合否の分かれ目 
・小問のある1,2,4の(1)は,京大受験生ならば得点したい問題。
・残りの問題で全体の5〜6割の得点が欲しいところである。本年は誘導のついた問題が多かったが,誘導なくとも自力で方針を立てる力をつけておくことが重要である。
■大問別ポイント
 第1問 

・複素数平面上の軌跡の問題。
・wを極形式で表し,題意をみたすように軌跡を求める。取りうる値に注意して,計算を進めればよい。
・(1),(2)と小問が入っているが,独立した設問であった。
 第2問 
・(1),(2)と小問の入った図形の証明問題。
・(1)は与えられたベクトルを位置ベクトルなどで表し,平行のときの条件を求めればよい。
・(2)は四角形DEFGが正方形になるなど,正八面体の性質を利用した式から考えていく。結論が見えているので,ここに向かうように式を作れば,シンプルな答案を作ることができただろう。
 第3問 
・tanで表された式をみたす自然数を求める問題。
・どのように証明を進めるかが難しいところである。加法定理から出てくるp,qの関係式をqの2次関数としてみるなど,2変数の扱いがポイントであった。
 第4問 
・(1),(2)と小問の入った平面図形の問題。
・(1)は落とせない問題である。
・(2)はまず,rを∠ABCなどを用いて,三角関数で表したい。あとは三角関数の取りうる値の範囲を考えるわけだが,△ABCが鋭角三角形という条件に注意が必要。
 第5問 
・曲線や直線で囲まれた部分の面積を求める問題。
・aの値で場合分けが必要であるが,計算自体はよく見かけるものである。最後まで丁寧に計算して完答したい。
 第6問 
・各桁の和が3で割り切れる確率を求める問題。
・余りが0,1,2となる場合のときの確率を設定し,漸化式を作って考えていくのがポイント。余りが1,2のときは同じ確率になることから,文字を減らすこともできる。

京大理系数学攻略のためのアドバイス

京大文理系数学を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。
●要求1● 速く正確に計算をする力
  京大だからといって,すべての問題が難しいわけではない。とくに微積分は,2017年度の5のように,解答の方針を着想することよりも速く正確に計算することが要求される。積分法は置換積分法,部分積分法など,慣れていないと対応しにくい計算も多い。このような計算の時間を短縮できれば,ほかの問題を解く時間に使うことができる。微積分に限らず,計算力をつけることが必要である。計算力は日々の計算練習で身につく。問題集などを使って,毎日,計算練習をしよう。
●要求2● 問題の構造を捉える力
  京大理系数学において頻出の分野として,図形問題がある。図形問題には,初等幾何,ベクトル,座標幾何などいろいろな解法があり, 2017年度の2や4のように,どの解法を取ればよいのかをまず考えてから解く必要があるものが多い。どの解法を使うのか,見方を変えてほかの問題に帰着させることができないかなどを発想できる力をつけることが必要である。発想力は,京大の過去問など発想力を鍛えられる問題を解き,考える訓練をすることで身につけられる。
●要求3● 採点者に自分の考えを伝える力
   証明問題において論証力が要求されることは言うまでもないが,求値問題においても,答えに至る過程を丁寧に説明する力が要求されるものが目立つ。2017年度の3がその例である。記述式の試験においては,自分の頭の中では分かっていてもそれを採点者に伝えることができなければ,点数に結びつかない。論理的に無理なく,より簡潔に答案を書くための論証力をつけることが必要である。論証力は自分一人で勉強を進めても身につきにくい。この力は,Z会の通信教育で別の人に採点・添削をしてもらい,その結果を復習することで身につけられる。

   まずは,各分野の完成からである。京大入試では様々な考え方が必要とされるので,苦手分野があれば,遅くとも高3の夏休みまでには克服したい。Z会の通信教育では,入試に必要な考え方を幅広い分野の演習を通して身につけることができるようになっている。

 高3の秋以降は,それまでに身につけた考え方を,実戦的な問題演習を通して使いこなせるようにしていこう。受験生用のZ会の講座では,微積分,図形,整数,確率といった京大頻出分野の問題を中心に,論証力も養成されるように学習を進めていく。

 センター試験が終わったあとは,これまでの学習の総まとめである。京大入試に即応したZ会の問題で,入試に使える計算力・発想力・論証力を完成させよう。

▼「京大コース」理系数学担当者からのメッセージ
 今年の大問6であるが,1から5までの数で作られたn桁の数が3で割り切れる確率を求める問題であった。Z会の京大コースの教材で「n桁の自然数で各位の数字に0と9を含まないもののうち,3の倍数となるものの個数を求めよ。」という問題を扱った。この問題を復習していた受験生は確実に得点できたはずだ。

 微積分,確率,図形,整数といった分野は京大では頻出分野である。これらの分野は計算力,発想力,論証力をみるのに適しているといえる。Z会の教材は,これらの力を鍛えるためであることはもちろん,論証力といった人に説明する力も添削で養うことができる。数学は短期間で鍛えることができる力ではない。少しでも早く対策ができるように学習をスタートさせてほしい。