2017年度京都大学個別試験 分析速報

■分量と難度の変化
・分量:昨年並み / 難易度:難化
・2016年度と同様に,大問4題の構成。IとIIは長文読解問題で,下線部和訳に加えて内容説明や記号選択式の空所補充問題が出題された。IIIは和文英訳問題で,IVは2016年度から登場した自由英作文が今年も出題された。
■今年度入試の特記事項 
・Iで下線部に含まれる指示内容を明らかにしながら和訳する問題が出題された。
・IIで130〜160字の日本語で1つの解答にまとめる内容説明問題が出題された。
・IIの長文中の単語の空所補充は2年連続の出題。
・IVは2016年度に続き,自由英作文の出題であった。
■合否の分かれ目 
今年はIの(1)やIIの(3)のように下線部の具体的な内容を日本語でまとめさせるタイプの内容説明問題だけでなく,Iの(2)のような下線部和訳においても指示内容の正確な把握が求められた。下線部を構造分析してそのまま日本語にするだけの和訳の対策では太刀打ちできないだろう。読解問題においては,下線部分の構造解釈による精読だけでなく,速読により前後の展開をしっかり押さえた上で的確に文意をとることが不可欠である。
■大問別ポイント
 I 

・論説「砂漠化についての誤ったイメージ」についての約530語の英文。小問3題から成り,(1)は指示語の内容を具体的に述べる問題,(2)は内容説明を含む下線部和訳,(3)は下線部和訳という設問であった。文章全体は砂漠化という言葉が使われるようになった経緯と,砂漠化に対する見方を述べている。下線部和訳では,見慣れない単語や取りにくい構造もあり,日本語にしにくかったかもしれない。
・(1)estimateが名詞で「推定」という意味であることを手がかりにすれば,下線部と同じ第1パラグラフにある Up to 70% …に気づくだろう。
・(2)「As such の指す内容が具体的にわかるように」という条件が付いているが,これは直前の because 節を受けている。文構造は the way … problem が長い主語で,shaped が動詞で,our reactions からが目的語となる。the way に続く関係詞節がどこまでかわかるかがカギとなる。
・(3)The assumption が 主語で,since … period の副詞句に気づけば,has led to が動詞句だと見抜けるはず。 assumption の後ろの that は同格。policies の後ろの that は関係代名詞。単語は marginalize, indigenous の2語が難しかったかもしれない。非制限用法の whom は peoples を受けている。
 II 
・論説「なぜ人間は今を生きることに恐怖を抱くのか」についての約560語の英文。小問3題から成り,(1)は空所補充 ,(2)は下線部和訳,(3)は下線部内容説明という設問であった。
・昨年度は大問IIの(3)は下線部和訳であったが,今年は下線部内容説明に変更された。
・(1)は選択肢を比較級に関連する less,more,worse と,副詞 likewise,otherwise,therefore の2グループに分けた上で,空所の前後の文脈を注意深く読みとって選択肢を選ぶ必要がある。(エ)は「もはや存在しない;死んでいる」を表す no more を選ぶのが難しかった。
・(2)は another と more thorough が名詞 way を修飾していることと,現在分詞句 ranging 〜および<with O+C>の訳出がポイント。単語は,immersion と the Hereafter の訳出が難しい。
・(3)は下線部直後の1文と,最終パラグラフ第1文の内容が下線部の問いに対する筆者の端的な考えになっている。ただし,どちらの内容も抽象的であるので,それぞれの該当箇所以降の英文を参考にして具体的に130字〜160字にまとめ直す必要があるという点が難しかった。
 III 
・例年どおり,エッセイ調の日本文を英訳する問題が出題された。
・昨年度同様,分量は1問。
・昨年度は一部訳しにくい語句を含むものの,基本的な構文を組み合わせれば答えられたが,今年度の問題は日本語独特のフレーズが多く,英語の適語をそのまま思い浮かべづらいこともあり,和文和訳の工夫が一層求められた。
・特に「生兵法は大怪我のもと」「聞きかじった」「痛い目にあう」「油断は禁物」といった表現が差がつくところだろう。
・「生兵法は大怪我のもと(A little learning is a dangerous thing.)」のように諺は英語では簡潔に表現できるものが多いので,表現の幅を広げるためにも積極的に覚えてほしい。
  IV  
・2年連続で会話補充型の自由英作文が出題された。
・2箇所の空所を会話の展開に合うような内容で埋める点および語数が明示されていない点も昨年同様。
・会話完成型ではあるが,ある立場に立って意見を述べさせる点で意見論述型と捉えることもできる。ただ,テーマを与えられてそれに関して述べる意見論述型とは異なり,会話の流れに完全に沿った内容にする必要がある点で2人がどの立場に立って意見を述べているかを押さえる必要がある。
・今年度は「音楽に国境があるか」についての対話で,(1)では「音楽には国境がない」とする理由が,(2)では(1)の意見を受けて,それと相反する「音楽にもやはり国境はある」とする理由が,それぞれ入る。
今年は主張があらかじめ設定されているという点で,昨年度とは異なる出題であった。
・複雑な語彙や構文を用いる必要はないため,京大型の英作文の練習を重ねてきた受験生であれば英文の構成は容易だろうが,説得力のある内容を短時間で思い浮かべられるかがカギとなった。Anneの最初の発言の内容をヒントにできただろう。

京大英語攻略のためのアドバイス

京大英語を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。
●要求1● 単語力
   京大の和訳や英作文では,まず相応の単語力が大前提となる。純粋な語彙の量だけでなく,複数の語義やイディオムなど,1つ1つの語彙に対する深い理解が求められ,日々の英語学習の中で意識的に身に付けていく必要がある。そのためには必ず単語集による学習を行うようにしよう。また,英語を日本語に直すだけでなく,日本語から適切な英語表現を引き出せるようにしておく必要がある。
●要求2● 文法・構文力
   「文法・構文力」は,京大の英文和訳,内容説明,英作文で大前提となる力。これも自分に合った問題集・参考書を見つけ,早めに苦手分野をなくしておくこと。また,知識の定着だけでなく,実際の英文の読解に取り組む中で実戦的に構文を見抜く練習も並行して行いたい。
●要求3● 精読力
    京大の場合,まずは1文ずつ,文構造を把握しながら正確に読む「精読力」の養成から始めよう。難関大の入試を見据えた長文読解の参考書に取り組むことが望ましい。しばらくは,時間がかかっても構わないので,英文を読む際には,辞書を引きつつも単語の意味を文脈から推測して読む練習をしよう。
  まずは,●要求1・2●の基礎的な部分を満たすことを目指そう。単語にしろ,文法・構文にしろ,覚えては忘れ,忘れては覚えていく地道な努力は確実に実を結ぶ。また辞書を引きながら長文読解問題や英作文問題に取り組み,精読力と実戦的な文法・構文力を同時に高めていこう。
 次に,辞書の利用を徐々に少なくしていきながら,制限時間内の解答を意識しつつ京大レベルの問題に取り組もう。長文読解問題では,英文全体の論理展開を意識して取り組むとよい。また,日本語独特の表現をうまく英語で表せるような表現力も身に付けていきたい。
 最後に,京大レベルの演習に精力的に取り組み,第三者の添削を受けるようにしよう。英訳・和訳の比重は依然大きいが,近年の出題形式は流動的な部分があるので,自由英作文を含め,一般的な国公立大の記述型問題には対応できるよう練習を積んでおこう。Z会では,さまざまな問題形式を総合的に扱っていく。
 
▼「京大コース」英語担当者からのメッセージ
・京大英語は,従来英文和訳と和文英訳の大きな2本柱で構成されたシンプルな出題でした。しかし,近年長文読解では,内容説明問題や空所補充問題などの出題が含まれ,下線部和訳だけの出題ではなくなりました。また,英作文も,和文英訳と自由英作文の2題構成になりました。長文読解,英作文ともに共通するのは,難度の高い英文や英作文で解くのに時間がかかりますが,単に空所や下線部などを見るだけではなく,英文全体を俯瞰することが必要になるということです。
・IIの(3)はまさに,全体を俯瞰することが試される問題でした。下線部の直後だけをまとめるなどという小手先のテクニックではなく,パラグラフを越えて読む必要があります。字数制限もあるため,情報も取捨選択しなくてはなりません。和訳力と同時に,内容をまとめる記述力を養うことも心がけましょう。
・IVの自由英作文は2年連続の出題で,会話の中に設けられた2箇所の空所を埋める英文を作るタイプです。文法・語法の注意はもちろんですが,この形式は,会話の流れを逸脱しないような説得力のある内容が書けるかがカギとなります。その点でも読解力が求められると言えるでしょう。