「化学」2017年度京都大学個別試験分析
2017年度京都大学個別試験 分析速報
■分量と難度の変化(理科…時間:2科目180分)
・全体的に難化。2015年度から難化した2016年度に比べて,さらに難度が高かった。状況を把握するのに時間を要し,また計算が煩雑であるなど,労力がかかり解き進めづらい小問が目立った。
・全体の分量は増加。2016年度も大問4問とも2つの中問があり計8問だったが,各大問中の中問どうしが内容的に繋がりのあるものもあった。しかし,2017年度は,内容が中問ごとに完全に独立しているため,負担感が増加した。目新しい題材や見慣れない図を多く扱っており,長いリード文から状況を理解するのに時間がかかるという特徴は例年どおりである。
・全体的に難化。2015年度から難化した2016年度に比べて,さらに難度が高かった。状況を把握するのに時間を要し,また計算が煩雑であるなど,労力がかかり解き進めづらい小問が目立った。
・全体の分量は増加。2016年度も大問4問とも2つの中問があり計8問だったが,各大問中の中問どうしが内容的に繋がりのあるものもあった。しかし,2017年度は,内容が中問ごとに完全に独立しているため,負担感が増加した。目新しい題材や見慣れない図を多く扱っており,長いリード文から状況を理解するのに時間がかかるという特徴は例年どおりである。
■今年度入試の特記事項
・大問4問とも2つの中問があり,完全に独立しているため,実質計8問であった。
・例年以上に,労力対効果(得点)の小さい小問が多かった。
・例年に比べ,導出過程を書かせる計算問題が非常に多かった(2017年度は7問,2016年度は1問,2015年度は0問)。
・昨年は出題されなかった,核酸に関する問題が出題された。核酸の出題は,2015年度以来である。
・昨年はなかった,字数制限のある論述問題が出題された(2015年度,2014年度は出題されている)。
・例年以上に,労力対効果(得点)の小さい小問が多かった。
・例年に比べ,導出過程を書かせる計算問題が非常に多かった(2017年度は7問,2016年度は1問,2015年度は0問)。
・昨年は出題されなかった,核酸に関する問題が出題された。核酸の出題は,2015年度以来である。
・昨年はなかった,字数制限のある論述問題が出題された(2015年度,2014年度は出題されている)。
■合否の分かれ目
・比較的難度の低い中問であった化学問題II(a),化学問題III(a),(b),化学問題IV(a)で得点を確保したうえで,残りの時間を使って,その他の問題の解けそうな箇所で得点を積み重ねることができたかどうかが,合否の分かれ目となっただろう。
・化学問題II(a)は,一見複雑な思考を要する問題だが,京大では出題されやすい内容で,京大受験生であればできてほしい。この中問で得点できたかどうかは,差がつくポイントの一つとなっただろう。
・2017年度は分量が増加し,難度も上がったため,時間内にすべて解答することは非常に難しい。そのため,解ける問題を素早く判断して解き進められたかどうかが重要となっただろう。たとえば,化学問題II(b)のような明らかに労力を要する問題より,化学問題III(a)のような比較的見慣れた形で,複雑な思考は要さないと判断できる問題を優先的に解くべきといえる。従来の東大化学を解くときのような戦略が功を奏したと考えられる。
・化学問題II(a)は,一見複雑な思考を要する問題だが,京大では出題されやすい内容で,京大受験生であればできてほしい。この中問で得点できたかどうかは,差がつくポイントの一つとなっただろう。
・2017年度は分量が増加し,難度も上がったため,時間内にすべて解答することは非常に難しい。そのため,解ける問題を素早く判断して解き進められたかどうかが重要となっただろう。たとえば,化学問題II(b)のような明らかに労力を要する問題より,化学問題III(a)のような比較的見慣れた形で,複雑な思考は要さないと判断できる問題を優先的に解くべきといえる。従来の東大化学を解くときのような戦略が功を奏したと考えられる。
■大問別ポイント
化学問題I
化学問題I
(a)<理論・無機>結晶,酸化還元反応
後半は酸化還元反応に関する知識の応用力が試された。
・問1は,それほど複雑な思考を要するわけではないが,問題文を正確に理解したうえで,3桁の計算をするのに時間はかかっただろう。
・問2は,この反応で硫黄Sが生成するということを予想するのは非常に難しく,かなりの難問であった。
・問3は,問2と同様に見慣れない反応式を書かせる問題だが,こちらは問題文のヒントから立式しやすく,できてほしい問題であった。
・問4は,比較的難度は高かったと思われるが,「鉄Feが析出する(Fe3++3e−→Fe)」といったような誤った予想はしないでほしいところである。
(b)<理論・無機>各金属イオンのNaOHによる分離,水酸化物と錯イオンの化学平衡
各金属イオンの水酸化物に関する問題で,理論・無機の総合的な知識を要した。
・問5は,解き方はすぐに浮かぶと思われるが,各金属イオンについて吟味しないと正解にたどり着けないため手間はかかる。結果的に,ア〜エが溶解度積の小さいものから順に並ぶため,当てずっぽうで正解できた受験生もいたかもしれない。
・問5が正解できて,図2の意味を理解できていれば,問6(i)は自動的に正解できる。問6(ii)は,溶解度積に関する基本的な問題。
・問7(i)は,「錯イオンの溶解度の常用対数をyとして」という箇所を正確に理解できたかがポイントとなっただろう。本問での「溶解度」とは,図2で「mol/L」とあるように「モル濃度」のことで,すなわちlog10([Zn(OH)4]2−)=yが成り立つことを考え,文字式の計算を進める。問7(ii)は, 4乗根が出てくるため,正しく計算できていた受験生も戸惑ったことだろう。計算ミスも起こり得る問題だが,解きにいった場合は,少なくとも導出過程はきちんと記しておきたい。
後半は酸化還元反応に関する知識の応用力が試された。
・問1は,それほど複雑な思考を要するわけではないが,問題文を正確に理解したうえで,3桁の計算をするのに時間はかかっただろう。
・問2は,この反応で硫黄Sが生成するということを予想するのは非常に難しく,かなりの難問であった。
・問3は,問2と同様に見慣れない反応式を書かせる問題だが,こちらは問題文のヒントから立式しやすく,できてほしい問題であった。
・問4は,比較的難度は高かったと思われるが,「鉄Feが析出する(Fe3++3e−→Fe)」といったような誤った予想はしないでほしいところである。
(b)<理論・無機>各金属イオンのNaOHによる分離,水酸化物と錯イオンの化学平衡
各金属イオンの水酸化物に関する問題で,理論・無機の総合的な知識を要した。
・問5は,解き方はすぐに浮かぶと思われるが,各金属イオンについて吟味しないと正解にたどり着けないため手間はかかる。結果的に,ア〜エが溶解度積の小さいものから順に並ぶため,当てずっぽうで正解できた受験生もいたかもしれない。
・問5が正解できて,図2の意味を理解できていれば,問6(i)は自動的に正解できる。問6(ii)は,溶解度積に関する基本的な問題。
・問7(i)は,「錯イオンの溶解度の常用対数をyとして」という箇所を正確に理解できたかがポイントとなっただろう。本問での「溶解度」とは,図2で「mol/L」とあるように「モル濃度」のことで,すなわちlog10([Zn(OH)4]2−)=yが成り立つことを考え,文字式の計算を進める。問7(ii)は, 4乗根が出てくるため,正しく計算できていた受験生も戸惑ったことだろう。計算ミスも起こり得る問題だが,解きにいった場合は,少なくとも導出過程はきちんと記しておきたい。
化学問題II
(a)<理論>反応速度,化学平衡,浸透圧
前半で問われているのは,反応速度に関する基本的な内容。後半は,慣れていないと解きづらいが,京大では出題されやすいタイプの問題である。
・リード文で,タンパク質の光の有無による構造の変化が示されているが,問題を解くうえでは細かく考える必要のない記述だ。その点に素早く気づき,必要な情報を拾えれば,問1,問2は容易だっただろう。
・問3は,このタイプの演習をこなしてきていれば,難しくは感じなかっただろう。この問題は,今年の京大化学全体で,差がつくポイントの一つだったと考えられる。
・問4は,これまた問題文が長く,状況を把握するのに時間を要する。状況を正確に把握できれば,ファント・ホッフの式から求まる濃度差が[YZ]と等しいことが導けて,計算自体は容易。ただ,やはり本番では,なかなか手を付けづらく見え,後回しにしたくなる問題だろう。
(b)<理論>混合気体,蒸気圧,熱化学
混合気体,蒸気圧に関する総合問題で,各操作で条件が複雑に変わるため,難度が高く時間もかかる。また,京大で頻出の,リード文中の空欄を補充する形式ではあるものの,例年よりも一つ一つの空欄を埋める負担が大きかった。
気体の分圧を扱う練習用の問題としてじっくりと解くのにはよいが,時間の限られる本番では後回しにしたくなる中問といえる。
・問5アは,操作(1)のリード文の温度や気体の物質量の情報と,問5の問題文の熱に関する情報を用いて解くことができる。
・問5イは,全圧は与えられており,混合気体中の成分Aの分圧を求めればモル分率が求まる。図2cからdにおける変化で,成分Aに着目して計算できたかがカギとなる。
・問5ウは,「全圧=各気体の分圧の和」より立式すればよいだけだが,「xB=1−xA」として文字xBを消去しないと,問題の指定に合う形で答えられない点に注意。本番では意外と慌ててしまった受験生もいたと思われる。問5エは,「成分AとBの混合溶液が生じ」という箇所から,どちらの成分の分圧も,それぞれの飽和蒸気圧になっていることに注意してほしい。
・問6は,問5ウと同様の式変形をして,「yA=」の形で文字式を立てるのだが,式が得られたとしても,右辺の式中のxAが増加したときにyAがどうなるかという判断に戸惑った受験生もいたと思われる。数学で用いる考え方も必要な問題であった。
前半で問われているのは,反応速度に関する基本的な内容。後半は,慣れていないと解きづらいが,京大では出題されやすいタイプの問題である。
・リード文で,タンパク質の光の有無による構造の変化が示されているが,問題を解くうえでは細かく考える必要のない記述だ。その点に素早く気づき,必要な情報を拾えれば,問1,問2は容易だっただろう。
・問3は,このタイプの演習をこなしてきていれば,難しくは感じなかっただろう。この問題は,今年の京大化学全体で,差がつくポイントの一つだったと考えられる。
・問4は,これまた問題文が長く,状況を把握するのに時間を要する。状況を正確に把握できれば,ファント・ホッフの式から求まる濃度差が[YZ]と等しいことが導けて,計算自体は容易。ただ,やはり本番では,なかなか手を付けづらく見え,後回しにしたくなる問題だろう。
(b)<理論>混合気体,蒸気圧,熱化学
混合気体,蒸気圧に関する総合問題で,各操作で条件が複雑に変わるため,難度が高く時間もかかる。また,京大で頻出の,リード文中の空欄を補充する形式ではあるものの,例年よりも一つ一つの空欄を埋める負担が大きかった。
気体の分圧を扱う練習用の問題としてじっくりと解くのにはよいが,時間の限られる本番では後回しにしたくなる中問といえる。
・問5アは,操作(1)のリード文の温度や気体の物質量の情報と,問5の問題文の熱に関する情報を用いて解くことができる。
・問5イは,全圧は与えられており,混合気体中の成分Aの分圧を求めればモル分率が求まる。図2cからdにおける変化で,成分Aに着目して計算できたかがカギとなる。
・問5ウは,「全圧=各気体の分圧の和」より立式すればよいだけだが,「xB=1−xA」として文字xBを消去しないと,問題の指定に合う形で答えられない点に注意。本番では意外と慌ててしまった受験生もいたと思われる。問5エは,「成分AとBの混合溶液が生じ」という箇所から,どちらの成分の分圧も,それぞれの飽和蒸気圧になっていることに注意してほしい。
・問6は,問5ウと同様の式変形をして,「yA=」の形で文字式を立てるのだが,式が得られたとしても,右辺の式中のxAが増加したときにyAがどうなるかという判断に戸惑った受験生もいたと思われる。数学で用いる考え方も必要な問題であった。
化学問題III
(a)<有機>芳香族化合物の構造決定
リード文の量が少なく,受験生なら見慣れている形式の問題であった。今年の京大の中では,最も取り組みやすい問題であったといえる。
・問1は,与えられた値から,化合物A 1molに水素1molが付加することを導ければよく,容易な問題。
・問2は,「粘性の高い液体」,「天然の油脂を加水分解して得られる」といった記述から,グリセリンと判断できるだろう。この手の問題にかなり慣れている人は,「分子量92.0」というところからも判断できたかもしれない。
・問3では,「こんな少ない条件で決定できるのか?」と疑問に思った受験生もいたと思われるが,条件を整理すると,化合物Dは炭素を2つもつ(カルボキシ基の炭素を含む)と絞られ,化合物Dは酢酸と決定される。これができれば,化合物Fも決定できる。この化合物Dを決定できたかどうかは,差がつくポイントの一つとなっただろう。
・問3に続いて考えると,化合物Eは,幾何異性体が存在する化合物とわかるので,問4では,シス−トランスの両者を答えればよい。
・問5では,リード文の冒頭の「不斉炭素をもたず」という箇所から,2番目(真ん中)の−OHに化合物Eをエステル結合させた化合物Aを考え,それに水素を付加した構造を答えればよい。
リード文の量が少なく,受験生なら見慣れている形式の問題であった。今年の京大の中では,最も取り組みやすい問題であったといえる。
・問1は,与えられた値から,化合物A 1molに水素1molが付加することを導ければよく,容易な問題。
・問2は,「粘性の高い液体」,「天然の油脂を加水分解して得られる」といった記述から,グリセリンと判断できるだろう。この手の問題にかなり慣れている人は,「分子量92.0」というところからも判断できたかもしれない。
・問3では,「こんな少ない条件で決定できるのか?」と疑問に思った受験生もいたと思われるが,条件を整理すると,化合物Dは炭素を2つもつ(カルボキシ基の炭素を含む)と絞られ,化合物Dは酢酸と決定される。これができれば,化合物Fも決定できる。この化合物Dを決定できたかどうかは,差がつくポイントの一つとなっただろう。
・問3に続いて考えると,化合物Eは,幾何異性体が存在する化合物とわかるので,問4では,シス−トランスの両者を答えればよい。
・問5では,リード文の冒頭の「不斉炭素をもたず」という箇所から,2番目(真ん中)の−OHに化合物Eをエステル結合させた化合物Aを考え,それに水素を付加した構造を答えればよい。
(b)<有機>乳酸,ラクチド,ポリ乳酸の立体化学
阪大などでも近年出題されたような立体化学の問題を解いたことがあれば,考えやすかったと思われる。今年の京大の中では,比較的取り組みやすい問題。
・L体,D体の決定を一度学習したことがあれば,問6はできたのではないだろうか。
・問7は,正しく立体表記をする力が試される問題であった。「残り2つ」というヒントも頼りに,空間内でひっくり返したり回転させたりしても重ならないものを考えればよい。
・問8は,ノーヒントだと考えづらいかもしれない。しかし,与えられた語句だけで,制限字数の半分弱はあり,また,問題文から分子の配列が規則的かどうかが関連してくることも予想でき,答案をまとめること自体は意外と難しくなかったと思われる。
・問9について,受験生はとくにオで悩んだと思われる。「基質特異性」というキーワードが浮かんだ人は正解できたと思われるが,教科書でも後の方に学ぶため,なかなかカバーしきれない分野ではある。幅広く有機分野を学習しているかどうかが問われた。
阪大などでも近年出題されたような立体化学の問題を解いたことがあれば,考えやすかったと思われる。今年の京大の中では,比較的取り組みやすい問題。
・L体,D体の決定を一度学習したことがあれば,問6はできたのではないだろうか。
・問7は,正しく立体表記をする力が試される問題であった。「残り2つ」というヒントも頼りに,空間内でひっくり返したり回転させたりしても重ならないものを考えればよい。
・問8は,ノーヒントだと考えづらいかもしれない。しかし,与えられた語句だけで,制限字数の半分弱はあり,また,問題文から分子の配列が規則的かどうかが関連してくることも予想でき,答案をまとめること自体は意外と難しくなかったと思われる。
・問9について,受験生はとくにオで悩んだと思われる。「基質特異性」というキーワードが浮かんだ人は正解できたと思われるが,教科書でも後の方に学ぶため,なかなかカバーしきれない分野ではある。幅広く有機分野を学習しているかどうかが問われた。
化学問題IV
(a)<有機>核酸の基礎,DNAの損傷
核酸の基本知識が要求され,また煩雑な計算問題もある中問であった。核酸については2015年度にも出題されており,「京大受験生であれば,核酸の基本は知っておいてほしい」というメッセージにもとれる。
・問1は,プリン塩基とピリミジン塩基を回転させ,しっくりと水素結合する位置を見つけ出す問題だった。核酸の学習が手薄となっていた受験生には,かなり難しい問題だったと思われる。
・問2は,アニリンから塩化ベンゼンジアゾニウムを合成する反応を思い出せばよい。
・問3は,「アミド結合を有する」というヒントから予想して解答する問題。
・問4は,5−メチルシトシンについて,問3と同様に考えればよい。ただ,「名称を記せ」とあり,生成した環状化合物の名称を名付けようと考えてしまい,その正体はチミンであることに気づけなかった受験生もいたと思われる。
・問5(i)は,アデニンとチミン(A−T),シトシンとグアニン(C−G)が,それぞれ塩基対を形成するという知識がないと解けない。アデニンの比率が10%であるから,チミンが10%と決まり,残り80%をシトシンとグアニンで半々にして40%ずつとなる。問5(ii)は,複雑な計算をしそうであるが,ベンゾ[a]ピレンとグアニンの物質量比は1:1であり,立式はそれほど難しくない。この問題は,タバコの人体への悪影響の大きさを伝えたい問題だったものと思われる。
(b)<有機>糖の立体構造の表し方
立体構造の見慣れない表し方について考える問題であった。類題を解いたことがあれば,比較的容易な問題ばかりに感じられたはずである。初見でリード文から理解した受験生は,時間もかかり苦戦しただろう。
・問6,問7は,リード文を理解したうえで,「近くにある大きな官能基どうしは,遠くにある場合に比べて立体反発が大きい」という感覚があれば解ける。
・問8(i)は,リード文を理解していれば解答できる。もし問8(i)を解答できなかったとしても,「水溶液中でグルコースが平衡状態になると,β−グルコースの割合の方がα−グルコースの割合より大きくなる」という事実をもし知っていれば,問8(ii)だけでも解答できたかもしれない。
核酸の基本知識が要求され,また煩雑な計算問題もある中問であった。核酸については2015年度にも出題されており,「京大受験生であれば,核酸の基本は知っておいてほしい」というメッセージにもとれる。
・問1は,プリン塩基とピリミジン塩基を回転させ,しっくりと水素結合する位置を見つけ出す問題だった。核酸の学習が手薄となっていた受験生には,かなり難しい問題だったと思われる。
・問2は,アニリンから塩化ベンゼンジアゾニウムを合成する反応を思い出せばよい。
・問3は,「アミド結合を有する」というヒントから予想して解答する問題。
・問4は,5−メチルシトシンについて,問3と同様に考えればよい。ただ,「名称を記せ」とあり,生成した環状化合物の名称を名付けようと考えてしまい,その正体はチミンであることに気づけなかった受験生もいたと思われる。
・問5(i)は,アデニンとチミン(A−T),シトシンとグアニン(C−G)が,それぞれ塩基対を形成するという知識がないと解けない。アデニンの比率が10%であるから,チミンが10%と決まり,残り80%をシトシンとグアニンで半々にして40%ずつとなる。問5(ii)は,複雑な計算をしそうであるが,ベンゾ[a]ピレンとグアニンの物質量比は1:1であり,立式はそれほど難しくない。この問題は,タバコの人体への悪影響の大きさを伝えたい問題だったものと思われる。
(b)<有機>糖の立体構造の表し方
立体構造の見慣れない表し方について考える問題であった。類題を解いたことがあれば,比較的容易な問題ばかりに感じられたはずである。初見でリード文から理解した受験生は,時間もかかり苦戦しただろう。
・問6,問7は,リード文を理解したうえで,「近くにある大きな官能基どうしは,遠くにある場合に比べて立体反発が大きい」という感覚があれば解ける。
・問8(i)は,リード文を理解していれば解答できる。もし問8(i)を解答できなかったとしても,「水溶液中でグルコースが平衡状態になると,β−グルコースの割合の方がα−グルコースの割合より大きくなる」という事実をもし知っていれば,問8(ii)だけでも解答できたかもしれない。
京大化学攻略のためのアドバイス
2017年度の京大化学は,ここ数年の中でも難度の高いセットで,各大問が中問に分かれており分量もかなり多かった。この傾向が来年度以降も続くかは不明だが,目新しい題材や長いリード文からその場で状況を理解させることで,思考力・忍耐力・読解力といった力を試す内容であるという根本的な特徴は今後も変わらないと考えられる。
京大化学を攻略するために,高校化学の内容を完全に理解したうえで,それを応用する問題に意欲的に取り組んでほしい。また,出題範囲の約半分を占める有機化学は重点的に学習し,幅広い知識とその活用力を養成してほしい。
京大化学を攻略するには、次の3つの要素を満たすことをめざそう。
●要求1● 思考力と忍耐力
京大化学が,他の大学の入試問題と決定的に異なるのは,かなりの思考力が必要な点である。高校で学習する内容をそのまま当てはめるだけの問題も出題はされるが,合否の決め手となるのは,高校範囲の知識を応用させて自分で考えなければならない問題である。このような問題を考える力,またそれに立ち向かおうとする姿勢がない限り,合格を手にすることはできない。
京大化学が,他の大学の入試問題と決定的に異なるのは,かなりの思考力が必要な点である。高校で学習する内容をそのまま当てはめるだけの問題も出題はされるが,合否の決め手となるのは,高校範囲の知識を応用させて自分で考えなければならない問題である。このような問題を考える力,またそれに立ち向かおうとする姿勢がない限り,合格を手にすることはできない。
●要求2● 読解力
京大化学の大きな一角を占めるのが,空欄補充形式の問題である。初見の題材であっても,限られた時間の中で問題文を読みこなし,正確に内容を理解する力が要求される。
京大化学の大きな一角を占めるのが,空欄補充形式の問題である。初見の題材であっても,限られた時間の中で問題文を読みこなし,正確に内容を理解する力が要求される。
●要求3● 有機化学分野の幅広い知識と活用力
京大化学では,出題の約半分を有機化学が占める。高校範囲の内容理解はもちろん必須であるが,●要求1●で述べた思考力が必要な問題も多く出題されるため,幅広い知識と深い理解が必要となる。構造決定問題はとにかく演習をたくさん積んでおきたい。また,天然有機化合物の分野は,基本知識に穴がないよう,早めに対策をしておくこと。
京大化学では,出題の約半分を有機化学が占める。高校範囲の内容理解はもちろん必須であるが,●要求1●で述べた思考力が必要な問題も多く出題されるため,幅広い知識と深い理解が必要となる。構造決定問題はとにかく演習をたくさん積んでおきたい。また,天然有機化合物の分野は,基本知識に穴がないよう,早めに対策をしておくこと。
まずは,高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると,●要求1●を満たすことはできない。Z会の通信教育,Z会の教室,Z会の映像などで,基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めていこう。
高校化学の内容を理解したら,次に●要求1●を満たすために,Z会の通信教育,Z会の本などで,高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため,並行して●要求2●を満たしていくこともできる。また,●要求3●を満たすため,有機化学の補強も重点的に行っておきたい。
空欄補充形式の中には数値計算を要するものもあるので,計算力も必要である。そのため,普段の問題演習では,実際に手を動かして計算し,計算自体にしっかり慣れておこう。また,論述対策として,日頃の学習から,現象や操作,それらの理由を理解し,短い字数でまとめる訓練を積み重ねておこう。
高校化学の内容を理解したら,次に●要求1●を満たすために,Z会の通信教育,Z会の本などで,高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため,並行して●要求2●を満たしていくこともできる。また,●要求3●を満たすため,有機化学の補強も重点的に行っておきたい。
空欄補充形式の中には数値計算を要するものもあるので,計算力も必要である。そのため,普段の問題演習では,実際に手を動かして計算し,計算自体にしっかり慣れておこう。また,論述対策として,日頃の学習から,現象や操作,それらの理由を理解し,短い字数でまとめる訓練を積み重ねておこう。
▼「京大コース」化学担当者からのメッセージ
何度も言うように,今年の京大化学は,難化&分量増でした。「こんなに考えたのに,やっと小問1個!?」と思ってしまう問題が多く,受験生の皆さんはかなり苦労したことでしょう。ただ,その状況は周りの受験生も一緒であり,だからこそ,「解ける問題から解く」という考えで,時間内に自分のもつ最高のパフォーマンスを発揮する戦略がより重要となりました。今後京大を受験する人たちも,日頃の通信教材での演習や模試で,時間を計って解くときには,「解けそうな問題を選ぶ」という訓練を積んでほしいところです。
もちろんそのような戦略が通用するのも,上までで述べたような思考力・忍耐力・読解力・有機化学の幅広い知識などといった,京大化学攻略に必要な力があったうえでのことです。京大を受験する予定の人たちは,これらの力を養成することを意識しながら,日々の努力を積み重ねていきましょう。応援しています!
何度も言うように,今年の京大化学は,難化&分量増でした。「こんなに考えたのに,やっと小問1個!?」と思ってしまう問題が多く,受験生の皆さんはかなり苦労したことでしょう。ただ,その状況は周りの受験生も一緒であり,だからこそ,「解ける問題から解く」という考えで,時間内に自分のもつ最高のパフォーマンスを発揮する戦略がより重要となりました。今後京大を受験する人たちも,日頃の通信教材での演習や模試で,時間を計って解くときには,「解けそうな問題を選ぶ」という訓練を積んでほしいところです。
もちろんそのような戦略が通用するのも,上までで述べたような思考力・忍耐力・読解力・有機化学の幅広い知識などといった,京大化学攻略に必要な力があったうえでのことです。京大を受験する予定の人たちは,これらの力を養成することを意識しながら,日々の努力を積み重ねていきましょう。応援しています!