HOME >  Z会の遺伝子たち

Z会の遺伝子たち:鳥から魚が生まれないように、Z会が生み出すものは、常にZ会である。そして、そこに生きる人もまた、Z会だ。多彩でありながら、同一軸にらせんを描き、機能する遺伝子たち。それぞれをきわめてヒューマンな側面から眺めてみれば、より確かに、鮮やかにZ会そのものが見えてくる

INTERVIEW

オンリーワンの仕掛人 藤原 敏晃

長文を繰り返し読むことで英単語を覚えていく、英単語学習書『速読英単語』の仕掛け人が語る...

面白がりの教材開発者 鈴木 やすか

「百の聴講より、一の実践」と語るとおり、その静かな外見からは想像できないほど、行動的だ...

思い深き添削エキスパート 小林 章子

答案と一緒に小さな手紙が送られてきたとき、見えない会員の姿を自分の心にしっかりと写し取る...

しなやかな視線の添削者 野村 理美

添削者として、質の高い添削を維持することによって守り続ける「Z会スタンダード」。自ら問題を解く...

情熱の生涯ランナー 加藤 久和

Z会とはとことんこだわる人間臭い会社である、と彼は表現する。その言葉はそのまま彼にぴったりと...
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いかにしてベストセラー『速読英単語』は、生まれたか。

最初、品詞別、頻度別といろんな切り口で考えていたのですが、どうもしっくりこないなと。当時、売れていたのが頻度順の単語集で、頻度順は結果的には効率的でも覚えやすさとは無関係だし、他社と同じコンセプトは避けたかった。それで行き着いたのが「文章の中で覚える」という、ある意味オーソドックスな形だったんです。高校時代、いろんな文章の中で同じ単語に何度も遭遇するうちに単語の意味が自分の中にストンと落ちる、みたいな自分自身の経験もあり、それを何とか形にしたいと。自信はなかったけど、こうした学習の仕方は普遍的なもの、つまり「不易」のはずだから一定の支持を受けるだろうという思いもありました。

ヒット商品が生まれる現場。そこにあった気風とは?

当時は実験的なものをどんどん形にできた。制約もなく、何も言われず、思いっきりプロダクト・アウトだったんです。今、しきりにマーケット・インでなければ、と言われますよね。顧客の声を聞くことは大事ですが、どんな教材が、どんな形でほしいかと聞かれても多くの顧客はその正解までは知らない。やはり我々が強い信念を持って提示していくべきだと思っています。

教材編集に表れる「Z会らしさ」とは何か。

入社1年目に出会った原稿は衝撃的でしたね。そこに書かれたことや上司の言うことを理解しようと英文科にいた学生時代よりも多くの英文法書籍を読みました。それでやっと英語の本質的な部分がわかったんです。そうしたZ会らしさがよく反映されているのが予習用の教材『要点』です。例えば学校では(be going to)は(will)とイコールになる。いわゆる形だけを習うんです。しかし、その2つは意味用法がまったく異なるし、また動詞には有意思動詞と無意思動詞があるというようなことを高校1年生相手に訥々と解説するわけです。当時は執筆者が書きたいだけ解答・解説のページを割きましたから、原稿が上がるまで台割もできない。大変でしたが、ブランドとしての誇りがそうさせるというか、それがZ会なんですよ。

今に引き継がれるスピリッツ。

一見、変わったようで「とことんこだわる」という職人気質な部分は引き継がれていて、実際、そうしなければという意識は社員にあると思います。当時を知る者は、語り部として折にふれて伝えていく。だから、Z会の解説は今でも詳しい。書籍にしろ、他社に比べてZ会の解説はとても充実していますよね。

良問とそうでない問題との境界線は?

例えば英語の文法には形と意味とがあって、意味の理解を問う問題は良問だと思います。長文なら文章自体のよさ、意義深さにもこだわりたい。合格後、単語や文法は忘れても文章の内容だけは覚えている、みたいな。数学なら、公式を当てはめるだけのものではなく、複雑な思考回路を要する問題、解法が複数ある問題とか。やはり多くの問題、答案を見てきた上での良問がZ会にはある。さらに誤答を分析して、また次の教材に反映していく。通信教育には答案しかお客様と向き合うものはないし、Z会はそこを何よりも大事にしていると思います。管理職になっても上司から言われますよ。「教材・答案をちゃんと見ているか」、とね。

日頃、心がけていること。今、興味があること。

私自身は、生涯英語学習者であり続けたいと思っています。英字新聞を購読し、英語のウェブ・レッスンも受けている現役の学習者だからこそ、ほしい教材がある程度わかる。そもそも人間は一生勉強し続けるわけで、その視点から中高生くらいの人たちに「なぜ勉強するのか」を語っていきたいという思いもあります。本当の意味でのキャリア教育に今、とても興味がありますね。

Z会を志望した理由とは?

会社ごとに教材の性格は違いますが、Z会の教材には、問題文と答えの間に大きくて真っ白な余白がある。その余白に私はすごく惹かれたんです。その人の考えが表れる過程の部分を大事にする会社かなと。いろんな会社が「考える力をつける教材」と謳っていますが、力のつけ方が異なって、自分で調べたり、実際にやってみることで答えにたどり着くようにしている。算数でいう途中式を大事に考える力をつけていくのがZ会なんですね。

入社後、最初の仕事。最初の衝撃。

入社・配属から数日という時、「小学1年生の夏休みの本を作ってほしい」と言われました。内容も分量も未定で「自分で考えてごらん」と。Z会が出すなら単なる計算や平仮名の練習ではなく、じっくり考えてもらえる問題集にしたかった。だから〈文章力UP〉をコンセプトに、国語は30日かけて1作品を読む長文読解にして、算数も物語性のある文章題形式に。上司や先輩は私の企画や判断について必ず「なぜそう考えたのか」を尋ね、手取り足とりではなくあえて見守ってくださいました。Z会は社員を育てる時も「実践形式」で「考える力」を大事にしている。教材と同じだったんです。

Z会流、体験教材の作り方。

「百の聴講より、一の実践」といいますが、理科実験や料理などを子どもたちに体験してもらう教材を作る時は、、自分たちが実体験することから始めます。教材の向こうの子どもたちを思い浮かべながら屋上でシャボン玉を作ったり、公園で日時計を作ったり。「わぁ!」と大人も感動するぐらいの企画ならOK。実践して初めて見えるものもあり、アイデアも広がります。調べればネットや本にいくらでも載っているようなことでも、まずは実体験ありき。「一の実践」を楽しむ気質もZ会らしいところかなと思います。

なぜ厚い? 何がある?「解説冊子」

ぼんやりと「ほめてのばしましょう」ではなく、体験途中で失敗した際のフォローや問題でつまずいた時の導き方などが保護者向けに具体的に解説されているから、解説冊子の分量が多いんです。例えば子どもには〈8+2〉よりも〈2+8〉のほうが難しいのですが、算数の解説ではその理由やフォローの仕方が書かれています。体験教材では発達段階や家庭の都合にあわせた取り組み方のアレンジや、保護者も教養が深められる関連コラムなどがあり、このあたりは他社以上に力を入れているところですね。

発想力の源、「面白がり」の精神とは?

入社当初、「1日10アイデア」という課題があって、思いついたことをとにかくメモ帳に書き留めていました。そのうち一人で料理をしていても「これ、面白いかも」「もっとこうするといいかも」と思うように。子どもと向き合う仕事に就いてから、ただ歩くのも楽しくなりましたよ。「冬なのにタンポポが咲いている」とか、「あの雲、恐竜の形だ」とか。気分は4歳児です。子どもは大人が見過ごすようなことにも「面白い!」と言って飛びつくんですよね。そういう、「毎日のなにげない瞬間に面白さを見出す視点」を、子どもたちから教わっています。

噂に聞こえた多趣味。プライベートでは何を?

お米を作ったり、染め物をしたり、日曜大工で食器棚や本棚を作ったり。経験学習がそのまま趣味のような感じです。東南アジアや南米の農村部に一人旅をして、現地の学校を訪ねたりもしています。釣りも好きで、この前は長崎の漁師さんたちに漁に連れて行ってもらいました。梅干しを漬けたり、お味噌を作ったりと、ちょっとお婆ちゃんぽい趣味も多くて。(笑) でもそこで得た経験が、子ども向け体験教材の企画になることも多いんですよ。

一枚の答案から何が見えるのか。何を見るのか。

答案というのは、きちんと見ようとさえすれば、いろんな姿が見えてくるんですね。とくに親子での取り組みを軸とした幼児や低学年用の教材では、答案の後ろに保護者が見える。経験学習の写真からお母さんの手が見えたり。消しゴムの跡に誰かの一言を感じたり。だから、年度末に「こんな言葉が書けるようになりました」「こんなこともできるようになりました」と会員の成長を報告しつつ、「そばで見守ってきた保護者の方のおかげです」と添えると、「親としてほめられるのは初めて。うれしかった」と感謝の手紙をいただくこともあります。子どもの字や絵からも気分や様子が伝わってきますから、答案は正直ですよ。

添削をとおしてやりとりするもの。

通信添削は紙の上のやりとりですが、気持ちのやりとりもあるんです。答案の書き込みや「先生、遅れてごめんね」という小さな手紙を見つけることもあり、添削者はそういう思いも受け取って添削に向かう。先生にがんばる姿を見せたい会員と、それを応援したい添削者と。そこにはいい信頼関係がある。年賀状や年度末にお礼の手紙が多いことからもそれはわかりますよね。

添削者の目。添削者の資質。

添削者は、わかりやすく、あたたかいコメントができるかどうか、がカギになります。ただの一枚の答案ではあるんだけど、家で取り組んでいる姿を思い浮かべられるような先生が理想だと思うんですよね。そういう意味でもZ会には他にも優秀な先生がたくさんいます。ある問題で本来は「茶色でふくふくしている」と言葉で答えるべきところ、鉛筆で絵を描いた答案があり、よく見ると薄く、本当に薄く茶色に塗ってある。「わざわざこの子が鉛筆から色鉛筆に持ち替えたことから、理解していることがわかる。そこを評価しなければ」とおっしゃった先生がいて、なるほどと。まるで会員が目の前にいるかのように話す先生にとても感銘を受けました。

親として、添削者として思うこと。

わが家では三人の子がZ会を受講していて、今つくづくZ会をやらせてよかったなと思っているところです。朱筆に助けられて考える力もつきましたし、何よりも親身な対応に親として感謝するばかり。逆にわが身を振り返り、時間に追われて会員の思いを無視した添削をしていないか、と自問したりします。

「ほめる」添削とは?

Z会では小さいうちはとくに「ほめる」ことを重視しています。一枚の答案をやり遂げるというのは、子どもには結構大変なこと。だから、まずほめる。また、学校ではバツかもしれないけれど、正解への近づき具合によって部分点をつけるなど、考え方の過程を評価してあげるような採点もしています。だから、Z会の添削基準はとても細かいんですね。添削の先生たちもそうした厚い添削基準を読みこなしながら、丁寧に点数をつけていくわけです。いい教材、質の高い添削があって、そうした成功体験を小さい頃から積み上げていけたら、もっと知りたい、勉強したいと思える子どもに育っていくのではないかなと思いますね。

仕事で得たもの。生かされること。

週末に地元のスポーツ少年団の一輪車サークルで指導をしているのですが、そこでもやっぱりほめることから始めます。そして、簡潔に、かつ具体的に伝える。それもZ会で身につけたことですね。赤字を入れるとき、小学校1,2年生の子には3行は長い。2行ぐらいでまとめる。そういう細かな配慮がとても大事で、自己満足の指導じゃダメなんですよね。「伝わる」添削でなければね。

Z会のイメージ。添削者になる前と後。

自らすすんで勉強する通信教育、それがZ会だと思っていました。ただ、問題はかなり難しかった(笑)。でも、やっているうちに手応えがあって、「ああ、勉強してるんだ!」という実感が高校時代にあったのは覚えていますね。真面目でしっかりした会社だというイメージがありましたが、実際にもその通り。でも、堅過ぎない。わりと柔軟な会社なんですよね。

朱筆をどう入れていくか。どう採点するか。

通常、答案が手元に届いて3〜4日で添削して返送するのですが、私は添削に取りかかる前に一通り添削問題を見て、自分なりに解いてみます。やはり一度答案に向かう会員の立場に立ってみると見えてくるものも違いますね。添削では、パソコン上にアップされている添削基準と照らし合わせながら、朱筆を入れていきます。論述問題などは採点の仕方が特に難しいものですが、そこは通信添削のZ会の凄さといいますか、一問ごとに解答例と添削基準がズラーッと、本当に驚くほどある。それでも判断できない例が出てくると更新されて赤字で追加していくから、答案用紙だけでなく、画面も添削基準で真っ赤になってしまうことがあるんです。

いい添削とは? いい指導とは?

模試なら、均一な目で採点すべきですが、日頃の学習では会員に合わせた採点や添削が必要であると思っています。例えば全体的にとてもよくできている答案でそこだけ違っている、という場合には、しっかり留意してもらえるよう厳しくチェックを入れます。逆に全体的にはできていないけれど、なんとかこれだけ書けた、という答案にはそれをきちんと評価してあげる。何のための勉強か、何のための添削か。そこをきちんと抑え、一人ひとりに向き合った指導がZ会たるところではないでしょうか。

添削の醍醐味はどこにあるか。

添削内容に質問がある場合、たまに会員に返した答案が再度戻されてくることがあります。常日頃、会員には「復習することが大事」と伝えていますが、実際に会員が復習した答案を見ることはなかなかないので、答案の添削者朱筆にマーカーが引かれていたり、復習の跡が見られると胸が熱くなったりしますね。そうした答案を初めて目にした時、自分たちの「添削」という仕事が直接会員の学習を助けていることを実感しました。また同時に大きな責任を感じたことを今でもよく覚えています。

Z会の添削者に求められる資質とは何か。

まず、字ですね。会員にとってわかりやすく読みやすく書くように心がけています。次に当たり前のことですが、添削基準に沿った採点やわかりやすい指導ができているか、ですね。また、相手への伝わりやすさという点から、朱筆の量も大事なポイントになります。教えることが好きだったり、教科への思い入れがあったりすると、とかくびっしりと朱筆を入れがちですが、会員が中学生なら中学生が読むということを考えた量、内容になっているかどうか。やっぱり答案の向こうの会員に向けた添削でなければダメ、ということですね。

添削者の楽しみ。そして、喜び。

添削の楽しみは、会員からの答案感想欄です。とくに受験期は「不安でいっぱいです」「今日、願書を出してきました!」など、緊張感が伝わるものも多く、その後、「アドバイスが役立ちました」「合格しました!Z会ありがとう!」とのコメントが添えられていたり。お互いに顔は見えませんが、こんなに一緒に一喜一憂できるなんて、添削者になるまでは思ってもみませんでした。

Z会がこだわっているもの。例えば?

通信教育ということもありますが、やっぱり活字を非常に大事にしていると思います。昔、教材の執筆者に、「数学で計算式はともかく、文章で解説しろという依頼は受けたことがない」、そんなことを言われたこともありましたけど、着眼点や考え方など、根本からしっかり理解して、さらに発展的な知識を吸収して深く勉強してほしいとなれば、解説はかなり重要なんですよね。耳で聞いて理解するよりも、二度、三度と活字で前後を追いながら理解していくところをZ会という会社は大事にしていると思います。

社内に漂う空気。気質。思い。

Z会って人間臭い会社だなぁと思いますよ。家内制手工業みたいな空気を感じます。職人さん気質というか、自分が納得したいから一生懸命になる、というのが非常に大きいと思います。一つの問題、一つの解説にすごく時間をかけているのも、その先に会員が見えているから。あくまでも人間同士のつながりの上に「目標を達成してほしい」「合格してほしい」という思いがあって、「こういう問題のほうが力がつくのではないか」「こういう解説が役立つんじゃないか」と試行錯誤する。すごくシンプルですよね。

Z会らしさ。それはどんなところに表れているか。

以前、採点や指導のガイドラインとなる添削基準を作ったことがありましてね。力量あるスタッフが大勢いましたが、数学の、それも中学1年生用だけはどうしても人に任せたくなかった。だって、中1の数学といったらスタートラインでしょう。ここで苦手意識を持ってほしくなかった。だから、作問と同じくらい添削基準に熱を入れて、これを使う添削の先生たちに出題の狙いや考え方もちゃんと伝えたいと思ったわけです。しかも普通なら「面倒だよ」なんて声も挙がりそうなところ、周囲も指導内容を工夫してくれたり。Z会はみんな同じ方向を向いている会社なんだなと思いましたね。

教材編集の楽しみ。

添削基準を作る際、先着答案というのを何枚か見るんです。こちらは問題にしろ、解説にしろ、こういうことを身につけてもらい、こう考えてほしいという狙いのもとで出題している。その成果、結果を会員からの答案を見ることで初めて実感できるわけです。時間に追われる毎日でしたが、これが本当に楽しみでね。答えや解き方を見て、問題の表現はよかったのかと反省をすることもあり、勉強することもたくさんありました。

声でつながるコンサルの仕事。

教材編集では、実際に使う人の顔は見えないわけですけど、コンサル部門では声で直接つながる実感があるんですよね。相手の輪郭がはっきりしてくると、「この子の悩みの根っこは何だろう」とより身近に考えられますし、根本的な解決にもつなげることができる。それはそれで大変な仕事ではあるけれど、せっかく頼ってきてくれたその気持ちに応えたいと。そして、それは自分だけじゃなくて、スタッフ全員が思っているというのが凄いなぁと思うんですよ。たぶんそれはそこにいるスタッフのほとんどがZ会経験者、つまりZ会のOB・OGだからかもしれないですけれど。

OB・OG会員から見えるもの。

Z会のOB・OGだからといって、毎回きちんと添削答案を提出できていた人たちばかりかというと決してそうではないんですよね。「なかなか出せなかったけれど、教材がよかった」「あの時、指導してくれたことを覚えている」くらいの人が多いんです。それなのに今、がんばっている後輩会員の役に立ちたいと思ってくれているというのは、Z会の本質の部分は活字をとおしてちゃんと伝わっているのかなって感じています。