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<ことばのチカラで自立しよう>

ことばは対人関係の基盤

わたしは自分の気持ちや意見をことばにして伝える練習「ことばキャンプ」を主宰しています。ことばキャンプは度胸力、論理力、理解力、応答力、語彙力、説得力、プレゼン力の7つのチカラのトレーニングで、相手の気持ちに配慮しながらも自分の気持ちを適切に表現できるチカラを育てることを目ざしています。

このコラムでは、そんなことばキャンプのエッセンスやエピソードをお伝えします。ことばによって考え、人とよりよくかかわっていくチカラを身につけていきましょう。

今回と次回は、ふだん何気なく使っている「ことば」の役割と伸ばし方について考えていきます。

【2016年10月27日】


 
 

コミュニケーションの道具

あなたは、ことばをどのように使っていますか?

朝、子どもに「もう起きなさい。学校に遅れちゃうよ」と声をかけたり、帰ってきた子どもに「おやつ食べる?」「先生からのプリントないの?」ときいたり、友人と「駅前にできたスウィーツのお店、気になるから行ってみようよ」とおしゃべりをしたり・・・。

たいていは、ことばを会話に使っています。それからメールやSNS、電話にしてもことばを使ってやり取りしています。

ことばは、人間のコミュニケーション活動において、人と人とがつながるコミュニケーションの道具として、最も重要な役割を果たしています。

もちろん、ことばだけではなく身振りや態度といった非言語でのコミュニケーションも重要な要素ですが、人と人とはおもにことばを交し合い、双方向のやりとりをしながら人間関係を築いています。

説明や情報共有ばかりでなく、意思を伝達したり、感情を表したりすることで、心や感性をも伝えあっているのです。いわば、ことばは対人関係の基盤といえます。

話しことばだけではなく、手紙・書類などの書きことばや、電話、メールなどさまざまなメディアを介して、わたしたちはことばでやり取りしています。ことばは場所や時間を超えたコミュニケーションを可能にします。


ことばのチカラがないとどうなるの?

では、対人関係のなかでことばを上手に使いこなせないと、どういうことが起こるでしょうか?

ことばがうまくしゃべれない幼児が、友だちが遊んでいるおもちゃが欲しくて、「貸して」を言わずに取り上げてしまうと、ケンカになってしまう。思い余って手が出てしまう。こんなケースは多いものです。ことばで自分の気持ちや状況を表現できていたら、手をあげるようなことにはならず、おもちゃを譲りあったり交渉をしたりして、お友だちと仲良く遊べることでしょう。

大人でも、ことばの使い方で誤解されたり、ことば足らずだったり逆に言い過ぎてしまったりしてトラブルが生じることもあります。対人関係は相手があることですから、相手の状況や心情を理解してことばを選ぶことも必要です。

ことば一つで人間関係にひびが入ってしまった経験をおもちの方も、いらっしゃることでしょう。

気持ちよく人とおつきあいしていくために、ことばのチカラをつけていくことがとても大切なのです。


ことばのチカラの伸ばし方

子どものことばのチカラを伸ばすために、これまで7つのチカラのトレーニングをご紹介してきましたので、もう一度ご覧くださいね。

なかでも、親の聞き方、応答力がとても重要です。

子どもは、大人が話すことばを聞きながら、ことばを習得し使い方を学んでいます。

テレビから、たくさんのことばをシャワーのように振りかけられても、ことばは増えていきません。テレビを一方的に見せているだけでは、子どものことばのチカラは伸ばせないのです。

くどいようですが、双方向のやりとりによって、子どものことばのチカラがついてきます。話しかけたら応じてくれる。聞いてくれるから、子どもはもっと話したくなり、どんどんことばを使ってコミュニケーションするようになります。

子どものことばのチカラを伸ばすための、親の応答のポイントをまとめてみます。

1.評価しないで、そのまま受け取る

「そうなんだ!」「そう思ったのね」と受けとめることです。大人の視点で言ったらツッコミどころ満載でも、まずは受け止めること。最後まで聞くことです。
聞くことについては、「理解力」を参照してください。

2.たわいもない発言もおもしろがって聞く

ここが大事なのですが、実はとても難しいかもしれませんね。子どもは同じことを何度でも繰り返し言うし、忙しい日常生活のなかではそんな余裕はない、というのももっともです。でも、子どもは話したいのです。いつもでなくてかまいませんので、一日のうちの10分、子どもがどんなことに興味をもっているのか、発想や視点をおもしろがって聞くようにすると、子どものことばのチカラが伸びてきます。

3. 子どものなかに意見があることを信じる

子どもであっても一人の人間。自分の意思をもっているのです。子どものなかに意思や意見があると信じること。信じているからこそ、子どもが意見を言うのを待てるのです。

ことばキャンプには、「恥ずかしがりで、自分の気持ちや考えを表現するのが苦手」と言うお子さんがたくさん通っています。

わたしたちは、子どもの考えを促すように声かけをしています。答えが出てこなくても、ゆっくり待ちます。すると、何回か回を重ねるうちに、子どもから自然とことばが出てきます。

待つのは「子どもには考える力がある」ことを確信しているからです。どの子どもも内側に考える力をもっている、伸びようとするチカラがある。大人はそれを引き出すだけなのです。子どものなかに考える力があることを信じて、子どもに考える機会を与えて待ってあげてくださいね。

<お知らせ>
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高取しづか
高取 しづか (たかとり・しづか)

NPO法人JAMネットワーク代表・「ことばキャンプ」主宰
消費者問題・子育て雑誌の記者として活躍後、1998年渡米。アメリカで出会った仲間や日本の友人とJAMネットワークを立ち上げた。「子どもの自立トレーニング」をテーマに新聞・雑誌・本の執筆や、各地で講演活動を行っている。神奈川県の子育て支援の委員をつとめ、子育てや教育の現場で支援にあたっている。また、東京都と神奈川県の児童養護施設で社会貢献活動を行っている。おもな著書に『子どもが本当に待っているお母さんのほめ言葉』(PHP研究所)、「子どもに英語を習わせる親が知っておきたいこと』(アルク)、『実用絵本 ことばキャンプ』1〜5(合同出版)、『イラスト版気持ちの伝え方』(合同出版)、 『コミュニケーション力を育てる 実践ことばキャンプ』(主婦の友社)など多数。近著は『ダメッ!って言わない 子どもへ good アドバイス』 全3巻(合同出版 )。


 

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