答案講評 2月の回答選と解説

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総合|答案講評 中1 2月

今回の課題

今回の答案講評では、以下の課題について取り上げます。

2016年6月、イギリスではEU(欧州連合)離脱の是非を問う国民投票が行われ、離脱が51.9%、残留が48.1%という僅差ではあるものの、当初の予想に反して、民意は離脱を選ぶという結果になった。
イギリスでは伝統的に議会主権の立場をとっているため、この国民投票の結果に法的拘束力はないが、当時の首相であったキャメロンは、決定を受け入れるべきであるという意思を表明した。一方で、議会には国民投票のやり直しを求める署名が殺到した。
背景には離脱派の行っていたキャンペーンの内容の誤りが明らかになったことや、離脱決定後に各国首脳が懸念を表明したことなどを受けて、翻意する有権者が多かったことなども挙げられているが、これはまさに「民主主義のエラー」であると述べる専門家もいる。
国民投票は、有権者の政治的成熟度によっては必ずしもうまく機能しない場合もあるし、単純にYESかNOかで国民を社会的に分断してしまうこともある。そこには感情的な軋(あつ)轢(れき)も生まれやすく、それまで異なる信念を持つ者同士の間で、抑制されていた憎悪が噴出することもある。しかし、このような怖さをはらみながらも、大事なことは当事者である国民が決める、すなわち決定に民意が直接的に反映される、ということは、民主主義の究極的な姿であろう。
今回のイギリスの例は、対岸の火事ではない。また、「それみたことか」として国民投票そのものを否定する材料でもない。あなた自身が政治に参加する、ということを深く考える機会としてとらえてもらいたい。問 上の文章を読んで、大事なことを国民投票で決めるべきかどうかについてのあなた自身の考えを、なぜそう考えるのかも含めて400字以内で書きなさい。

国民投票の是非を問う問題である。設問ではイギリスの国民投票の結果を例として取り上げたが、答案ではイギリスについて論じるのではなく、自らの国の問題として考察してもらいたい。また、「大事なこと」として具体的に何を想定するかもポイントである。その「大事なこと」が何かによって、国民投票への評価も変わってくると考えられるからである。

答案拝見

先生

国民投票において賛否がほぼ半分に割れた場合はどうするのか、という問題を提起しているものがあった。確かに悩ましい問題である。賛否に大きな差がついた場合であっても、もし投票率がそんなに高くなければ、その民意は国民の過半数には達していない、と指摘する向きもあるが、その考え方で行くと、現在の政権与党も有権者全体の過半数の支持を得ているとはとても言えないのだから、民意を反映した政権ではない、ということになってしまう。人気の高い国のリーダーの意見が国民全体の意見ではない、という指摘もあり、これもうなずけるものである。我々があるリーダーを支持するとしても、様々な問題に対して彼・彼女がもつ意見ひとつひとつに、すべて賛同して支持しているわけではないだろう。他国と戦争するかどうか、という例を取り上げて、国民投票で決めるべき、としているものもあった。理由として挙げられていたのが、実際に前線に出るのが国会議員ではない、ということだ。そう。もし将来、日本が戦争のできる国になり、戦争をすることになった場合、前線へ送られるのは、つまり戦闘の当事者は、その時点での若者たちである。

00-15330-3さん

私は大事なことは国民投票で決めるべきであると思う。例えば、賛成・反対と分かれそうなものに憲法9条の改定があると思う。これを国民が選んだ国会議員だけで決めることになると、前からその話題がない場合や衆議院の解散総選挙がない場合だと、民意を反映しにくいだろう。また解散総選挙があっても、大事なことについて自分とは意見が違うものの、政策においては自分と意見が一致した候補者がいた場合、その候補者に投票するべきか困るはずだ。しかし国民投票をすることで、自分の決断が結果に反映されやすいと考える。また、日本は憲法で国民主権を表しており、国民の選んだ少数の国会議員よりも、自分達の一票という民意が直接反映されていると思う。イギリスの例のように誤ったキャンペーンが起きてもおかしくないという点はあるものの、私は国民の民意を表すためには国民投票が大切だと思う。

09-66789-0さん

私は「大事なこと」を国の未来を左右するであろう政策やルールの是非だと仮定して考えた。この「大事なこと」は国民投票で決めるべきだと思う。国は国民一人一人がいることで成り立ち、国民一人一人のための組織でもある。国の未来を考える当事者も国民一人一人だ。国民投票は投票率の低下する国で国民が政治に対する当事者意識を持ち、政治に関心を持つきっかけとなるだろう。国民が選んだ一部の人々で決めることは国民一人一人の考えと合っているとは限らない。「大事なこと」を決める際は、より国民一人一人の考えが反映される直接的な国民投票が必要だと思う。しかし、単純な賛成・反対により社会の分断が起こる可能性もある。これを少しでも防ぐためには、国民が様々な視点から議題について考え、深く理解した上での判断をしなければならない。このように国民一人一人の考えを反映させ、よりよい結論になる国民投票をすべきだ。

87-55259-9さん

私は「憲法改正」など、国の政治の根幹に関わる事については、国民投票を行い決めるべきだと思う。なぜなら、国の政治の根幹を変えてしまったら、国全体の考え方が変わる場合があるからだ。国全体の考え方が変わると実生活にも大きく影響が出る。そのようなことを代表者(議員)に任せてしまうのは、政治と実生活のつながりが薄くなり、政治が他人事になっていく危険性があると思う。政治に未熟な点は教育によって解決できると考えている。ここでいう教育とは、政治的な思想を教える教育ではなく、政策の見方や世界の中での自国の立場を考える方法(ニュースの活用法)などを教えることを指す。今の教育は、思想を教えてはならないことを守ろうとしすぎて、政治の話自体がタブーとなりつつあるように思う。もっと方法を教えたり、生徒同士のディスカッションを促したりすることで政治的成熟度を高められるはずだ。以上のことから、国民投票は行うべきだ。