小学生のとき、とてもお世話になった先生が異動してしまった。私は、年上の人と話すことが苦手で、最後まで感謝の気持ちを伝えることができなかった。……これからは、ささいなことでもその場で感謝の気持ちを伝えられるようにしていきたい。
答案講評 12月の回答選と解説
今回の課題
今回は、次の添削問題について、Z会に届いた答案の紹介と講評をお届けします。
次の短歌を読んで、三〇〇字以内で作文を書きなさい。ただし、作文全体を二段落に分けて、第一段落ではこの短歌で詠まれている状況を想像して書き、第二段落ではこの短歌から読み取れる作者の心情について自分が考えたことを書くこと。
かの時に言ひそびれたる大切の言葉は今も胸にのこれど
石川啄木
答案拝見

Y.N.さん
M.K.さん
友人の成功に対して、素直に祝福の言葉を口にできなかった
以前、ピアノ教室の友達に言えなかった言葉がある。コンクールで入賞した彼女に対し、嫉妬心や悔しさから「おめでとう」と伝えられなかったのだ。それに対し友人は、今回のコンクールで入賞した私を祝福してくれた。あの時素直に「すごい。おめでとう。」と言えていれば、心から喜べたであろう。
S.O.さん
大切な人と会う一つ一つの機会を大切にすることが必要だ
私の親しかった親戚のおじさんが今年亡くなった。おじさんは広島に住んでいた為、体調が悪化したときに駆けつけることができず、葬儀に行くこともできなかった。一年に一回くらいしか会わない為、そのときに日頃の感謝の気持ちを伝えておくべきだった。このような後悔をしない為に、大切な人と会う一つ一つの機会を大切にすることが必要だ。
今回の優秀作品


第一段落でS.S.さんは、この短歌が「親友と離れる際に別れの言葉や感謝の言葉などを何一つ言えないまま疎遠になった」状況を詠んだものだと読み取り、啄木は「今でもそのことを後悔しているのだ」と思っています。第二段落では、小学校から中学校へ上がる時、仲の良かった友達に「また会おう。」と言えないまま別れてしまったことへの後悔が述べられています。この経験から得た「伝えたいことは、相手に届く内に素直に言うことが大切だ」というS.S.さんの学びには説得力がありますね。
短歌などの作品には、さまざまな味わい方がありますが、作品の読み取りと自分の考えを合わせて書くような作文では、両者が共通項(この作文の場合は〈自分の気持ちを素直に伝えられなかったことへの後悔〉)を通してうまくつながっていると、読者にもわかりやすく、うなずける文章になりますよ。
今回の講評はここまで。次回も、みなさんの答案を楽しみに待っています!
※毎月、Z会に届いた答案の中から「キラリと光る作品」を選んで「講評」に掲載します。早めに提出し、「講評」掲載をめざしましょう!
※「講評」は毎月中ごろに公開します。お楽しみに!
〈短歌を詠んだときの作者の思いを想像すること〉、〈作者の思いについて自分が考えたことを説明すること〉の二つが今回の作文を書くポイントでした。今回は、短歌から読み取った作者の思いを自分の経験に上手に引きつけて、自分らしい意見としてまとめることができている作文が多く、みなさんの豊かな感性を素晴らしいと感じました。
詩や短歌の鑑賞文は難しいと思ってしまいがちですが、今回のようにステップを踏んで書けば、自分らしい作文を書くことができます。うまく書けなかった人は、アプローチをよく読んで書き方を復習しておいてくださいね。ここでは、短歌をもとに考えたみなさんの体験をいくつかと、「今回の優秀作品」として、とくによく書けていたS.S.さんの作文を紹介します。