卒業式の日に、ケンカしていたクラスメイトに言えなかったことがある。妙に意地を張ってしまい、その子に謝らずに、その子と別の中学校に行ってしまったのだ。あの時に、「ごめんね。今までありがとう。」と言えば、このような後悔を引きずらずにすんだだろうと思う。
答案講評 12月の回答選と解説
今回の課題
今回は、次の添削問題について、Z会に届いた答案の紹介と講評をお届けします。
次の短歌を読んで、三〇〇字以内で作文を書きなさい。ただし、作文全体を二段落に分けて、第一段落ではこの短歌で詠まれている状況を想像して書き、第二段落ではこの短歌から読み取れる作者の心情について自分が考えたことを書くこと。
かの時に言ひそびれたる大切の言葉は今も胸にのこれど
石川啄木
答案拝見
H.A.さん
M.A.さん
好きな子に気持ちを言えなかった
小学生の頃好きだった子に気持ちを言えないまま卒業し、中学校ではクラスが別々になり、昔のように気軽に話せない関係になってしまったことがある。……後悔する前に、恐れずに自分の思いを口に出すことが大切だ。
S.T.さん
恩師に感謝を伝えられなかった
中学二年生の時、大好きでとても尊敬している先生が異動することになった。その話は急に知ったため、きちんと先生に感謝の気持ちを伝えることができなかった。あの時、一言でも感謝の気持ちを伝えていたら、こんなに後悔することはなかっただろう。
今回の優秀作品
第一段落でY.O.さんは、この短歌が「好きだった人に思いを伝えられずに別れてしまった」状況を詠んだものだと読み取り、「啄木は時々そのことを思い出してやるせない気持ちになっているのだ」と考えています。第二段落では、好きだった男の子に思いを伝えなかったことへの後悔が述べられています。一緒の中学校に行くと思い、気持ちを伝えることを先延ばしにした結果、好きだという思いを伝えられないまま、別々の学校に通うことになってしまったという経験から得た「自分の心に正直になり、相手に思いを伝えることが必要だ」というY.O.さんの学びには説得力がありますね。
短歌などの作品には、さまざまな味わい方がありますが、作品の読み取りと自分の考えを合わせて書くような作文では、両者が共通項(この作文の場合は〈自分の気持ちを素直に伝えられなかったことへの後悔と辛さ〉)を通してうまくつながっていると、読者にもわかりやすく、うなずける文章になりますよ。
今回の講評はここまで。次回も、みなさんの答案を楽しみに待っています!
※毎月、Z会に届いた答案の中から「キラリと光る作品」を選んで「講評」に掲載します。早めに提出し、「講評」掲載をめざしましょう!
※「講評」は毎月中ごろに公開します。お楽しみに!
〈短歌を詠んだときの作者の思いを想像すること〉、〈作者の思いについて自分が考えたことを説明すること〉の二つが今回の作文を書くポイントでした。今回は、短歌から読み取った作者の思いを自分の経験に上手に引きつけて、自分らしい意見としてまとめることができている作文が多く、みなさんの豊かな感性を素晴らしいと感じました。
詩や短歌の鑑賞文は難しいと思ってしまいがちですが、今回のようにステップを踏んで書けば、自分らしい作文を書くことができます。うまく書けなかった人は、アプローチをよく読んで書き方を復習しておいてくださいね。ここでは、短歌をもとに考えたみなさんの体験をいくつかと、「今回の優秀作品」として、とくによく書けていたY.O.さんの作文を紹介します。