運動部と運動部の兼部を可能にして欲しい
山形県 柿ピーさん

「国語の準備室」にようこそ! 今回の宿題は以下の通りです。
【この問のねらい】
★伝えるべき内容のポイントは何かを考えて、表現を工夫してわかりやすく説明するのがこの問いのねらいです。
※本文にある表現を引き写すだけではなく、内容を考えて適切に言い換える表現力が求められます。
【解説】
空欄前の会話から、話題を確認しましょう。
議題は「兼部規定の見直し」であり、その「条件を緩和」することについてです。
ここでの「条件の緩和」とは何を指しているでしょうか。「これまで認められてこなかった」とあることから活動規約を見直してみましょう。
生徒会部活動規約をみると、第8条に「原則として、一人の会員が複数の部に所属すること(兼部)は、禁止する。ただし、体育部と文化部との兼部については、双方の顧問の了解が得られれば可能とする」とあります。
寺田さんの言う見直しの内容は、これまで「双方の顧問の許可」があれば認められてきた「体育部と文化部との兼部」に当てはまらない兼部について、つまり、
・体育部間の兼部 ・文化部間の兼部
こうした兼部について認めてほしい、という「条件の緩和」です。
では、この要望はどのように表現できるでしょうか。単純に二つをならべてみるとこのようになります。
《体育部間の兼部と文化部間の兼部を認めてほしい》
内容的にはこれで問題ありません。なお、規定を見ると体育部と文化部以外に部活動のカテゴリーはないようなので、次のような表現にもすることが可能です。
《体育部と文化部間以外の兼部も認めてほしい》
与えられた字数や、強調したいポイントなどによって、どのような表現をとるべきかを考えましょう。
【解答例】
体育部同士の兼部及び文化部同士の兼部を認めてほしい(25字)
この記述問題を採点するにあたっての基準は以下の通りです。
(1) 25字以内で書かれていること。
(2)文末表現が「という要望」に適切に続くように書かれていること。
(3) 「体育部同士及び文化部同士の兼部」(または「体育部と文化部間以外の兼部」、「すべての部活動間での兼部」)ということが書かれていること。
自分の書いた内容が、これらのポイントを満たしているかどうかを確認してください。それでは、みなさんから送られてきた回答を見てみましょう。
運動部と運動部の兼部を可能にして欲しい
同じ体育部や文化部の兼部禁止という条件の緩和。
冒頭にある「同じ」という言葉の指す内容(「〜同士」「〜間」という意味なのか「似た」「類似の」という意味なのか)や、それが指し示す範囲(「体育部」のみにかかるのか「文化部」にもかかるのか)に曖昧さが感じられます。また、解答時には「という要望です」につながる形にすることが求められているので、文末が句点でまとめられているところも不自然な印象を受けます。的確で、より条件に適した表現を探りましょう。
くすぐまさんの回答:
二つ以上の体育部もしくは文化部の兼部を認めてほしい
KSKさんの回答:
複数の体育部または文化部の兼部を許可してほしい
いずれの回答も、この表現だけをみると、“体育部と文化部の兼部”も含まれているようにとれます。空欄前の「これまで認められてこなかった」という話の流れから考えれば、従来許可されていた体育部と文化部の兼部がここに含まれないことはわかるのですが、できる限り誤解を与えないように、「体育部間(同士)、文化部間(同士)」と表現したいところです。
S.F.さんの回答:
体育部、または文化部のどちらか一方のみを兼部したい
けいちゃんさんの回答:
体育部と体育部、文化部と文化部の兼部をしたい
あめりんさんの回答:
体育部、または文化部内での兼部をしたい
これらの回答に共通しているのは「兼部をしたい」という表現です。つまり、ここに示されているのは自分たちの「欲求」であって、生徒会に対する「要望」(=生徒会にしてほしいこと)ではありません。〈自分の欲求〉と〈相手への要望〉では内容的にはほとんど変わらないので減点対象にはならないかもしれませんが、〈誰に何をしてほしい〉のかを意識してまとめてください。
N.K.さんの回答:
体育部同士、文化部同士の兼部を可能にする
ぶるーとぅす、さんの回答:
体育部を複数、または文化部を複数兼部可とする
要望の内容は満たしており問題ないのですが、「可能にする」「可とする」という表現についてもうひと工夫ほしいところ。誤りというレベルではありませんが、いずれの表現も「要望」する側の発言としてはそぐわず、空欄アに入れるとやや不自然な印象を与えます。より完成した表現を目指してブラシュアップしましょう。
M.O.さんの回答:
体育部どうし、文化部どうしの兼部も認めてほしい
はみめさんの回答:
文化部・運動部同士間の兼部を新たに認めて欲しい
學天則さんの回答:
体育部内、文化部内での兼部を容認してほしい
最後に、ポイントをすべてクリアした回答として申し分ない例をあげました。簡潔でわかりやすく、文脈に沿った表現ですね。
この問題は《自分が伝えたいことを正確に言葉に置き換えること》がポイント。一見できてあたり前のように思いますが、回答を見てわかる通り、なかなか難しいことです。自分では正確に言葉にしたつもりでも、適切に表現できていなかったり、必要なことが漏れていたり、意図していないことが伝わってしまったりするものです。伝える相手の立場を想像して、誤解のないような表現を心がけましょう。
この夏休みに旅行に出かける人もいるかもしれませんが、みなさん、旅支度は得意ですか? 行先や日程など旅程(=設問の要求)に合わせて、何が必要な持ち物(=書くべき要素)なのかを確認し、ムダを省きながら荷物を詰め込んでいく(=回答をまとめる)——こう考えると、制限字数のある記述問題はスーツケースに荷物を詰め込む作業に似ています。みなさんも旅行の達人のように、旅程に応じてしっかりと「パッキング」してください。詰め終えたらもう一度確認を。詰め忘れや不要物はありませんか? 荷物があふれる(=字数オーバー)のはもちろん論外です。
文化部同士(または文化部間)の兼部についての言及が抜けてしまいました。ただし、この表現にならって「文化部と文化部の兼部」を付け足せばよい、というわけではない点にも注意。いまの内容だけで19字分用いているので、制限字数を超えてしまいます。同じ言葉を繰り返すなどの冗長な表現は避けて、簡潔にまとめることを心がけましょう。